寺子屋塾

佚斎樗山『新釈 猫の妙術 武道哲学が教える「人生の達人」への道』

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佚斎樗山『新釈 猫の妙術 武道哲学が教える「人生の達人」への道』

佚斎樗山『新釈 猫の妙術 武道哲学が教える「人生の達人」への道』

2024/01/07

昨日1/6に投稿した記事から、

年末から年始にかけて4回に分けて書いた

「2023年のふりかえり年間読書ベスト24」で

紹介した24冊の本の中うち、

このblogの記事でこれまで

あまり取りあげてこなかった本について

内容を紹介することを始めています。

 

昨日は1/3に投稿した(その3)の記事でとりあげた、

今村仁司編訳『現代語訳 清沢満之語録』から

「一念」と題された文章を紹介しました。

 

今日は1/4に投稿した(その4)の記事でとりあげた

佚斎樗山(高橋有・訳&解説)『新釈 猫の妙術

武道哲学が教える「人生の達人」への道』を。

 

ふりかえりのコメントには、

17世紀江戸中期に書かれた剣術の指南書で、

ネズミ取りの妙技奥義を身につけた古猫が、

他の猫に教えを説く設定自体が

とてもコミカルでオモシロく楽しく読めます。

原文の主旨を損なわないように配慮された上で、

現代のわたしたちにも分かりやすい言葉に翻訳され、

後半部分は50ページにわたる

詳しい解説が載っているのも有難いです。

と書きました。

 

物語は、ある侍の家に凶暴な大ネズミが

現れるところから始まります。


侍は3匹のネズミ捕りの名人(名猫?)たちに

大ネズミの退治を頼むんですが、

名猫たちは次々に敗れてしまうんですね。

 

そして、最後に現れる古猫がすんなりと

ネズミを退治するというストーリーなんですが、
第1章は「猫、大鼠の退治に臨む」とあります。

 

「古猫、「勝負」と「上達」を語る」と題された

第2章では、3匹の名猫たちはその古猫に

ネズミを退治する極意を尋ね、

古猫は夫々の猫の未熟な点を指摘していきます。


たとえば

「技」に絶対の自信を持っていた黒猫には、

「技と道理は一体」

「見せかけの技を磨いても意味はない」と指摘。

 

そのあとの虎猫、灰猫とのやりとりも

とても興味深いのですが、

煎じつめてポイントだけ示すと、

技には念(大脳思考)から出るものと

感(内臓感覚)から出るものがあるので、

考えず、しようとせず、

ただ心の「感」に従って動くのだ、

まあ、いつもこのblogで書いているような

テーマの話ではあるんですが。。

 

最終章の第3章では、勝軒という

猫の言葉がわかる剣術者が

宴の帰り道、猫たちを飼い主のもとに送り届け、

最後に古猫に剣術の奥義を請うのですが、

そのやりとりがホント面白く、

ぜひ本書を入手して読んで頂きたいので

結語にあたる

その最後に近いほんの一部だけを

次に引用してご紹介することにしました。

 

(引用ここから)

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(古猫)「かの聖人・孔子はこう言ったそうじゃ。 『匹夫も志を奪うべからず』。たとえば、どんな巨大な軍があったとしても、その指揮権は奪うことができる。軍とその指揮権は別のものだからじゃ。しかし、人間は違う。たった一人の人間であっても、その意志を奪うことはできぬ。心は何があろうとその人間のものだからじゃ。じゃが、その自分の心も、迷えばかえって自分を苦しめる。自分のものだからこそ、自分の心は自分で解き放たねばならぬのじゃ」

 

(勝軒)「うむ」


「わしが言えるのは、このくらいのものじゃろう。あとは、自分の心を省みてそこに答えを見つけるしかない」


「自分の心を省みれば、必ず答えはあるのだろうか?」


「無論じゃ。誰の心の内にも必ず道理はあるからな。わしも、結局のところは、言葉をもって説くことしかできぬ。自らの心の内の道理を見るのは、おぬし自身なのじゃ」


「なるほど、道理とは結局己で感じるしかないもの。拙者にもなんとなくわかってき申した」


「これは言葉による教えをないがしろにしろというのではないぞ。どんな優れた師にもそれを指し示す言葉は用意できないということなのじゃ」


「では、師の教えにはどのような意味があるのでござろうか?」


「教えとは畢竟、相手が自分で見ようとしない場所を指摘することじゃ。しかし、そこで何が見えるのかを師から伝えることはできぬ。教えることは容易く、それを聞くことも容易い。難しいのは、その言葉を導き手として己の心に隠されたものを確かに見つけ、我がものとすること。禅ではこれを悟りの境地としているそうじゃ。悟りとは、妄想の夢が覚めることだという。ならば、心の内道理の姿を見つけることもまた、妄想の夢から覚めることなのかもしれん」 

 

ここまで言うと、古猫は腕の中からするりと下りた。

 

佚斎樗山『新釈 猫の妙術 武道哲学が教える「人生の達人」への道』第3章 勝軒、「世界」を我がものにす より

 

〝教えない教育〟の極意が

ここで語られているんですね〜

 

心服しました!

 

 

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