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不出戸知天下、不闚牖見天道(『老子道徳経』第47章)

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不出戸知天下、不闚牖見天道(『老子道徳経』第47章)

不出戸知天下、不闚牖見天道(『老子道徳経』第47章)

2024/03/22

この寺子屋塾ブログの

古典研究カテゴリの記事では、

論語、易経、仏教をテーマとした記事が

これまでほとんどを占めていたんですが、

今日は『老子』を取りあげてみようとおもいます。

 

「戸を出でずして天下を知り」と始まる

第47章をご紹介。

 

(引用ここから)

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[白文]
不出戸知天下,不闚牖見天道。其出弥遠,其知弥少。是以聖人,不行而知,不見而名,不為而成。


[訓読文]
戸を出でずして天下を知り、牖より闚わずして天道を見る。その出ずることいよいよ遠ければ、その知ることいよいよ少なし。ここを以って聖人は行かずして知り、見ずして名かにし、為さずして成す。
 

[カナ付き訓読文]
戸(こ)を出(い)でずして天下(てんか)を知(し)り、牖(まど)を闚(うかが)わずして天道(てんどう)を見(み)る。其(そ)の出(い)ずること弥(いよ)いよ遠(とお)ければ、其(そ)の知(し)ること弥(いよ)いよ少(すく)なし。是(ここ)を以(も)って聖人(せいじん)は、行(い)かずして知(し)り、見(み)ずして名(あきら)かにし、為(な)さずして成(な)す。 

 

[ひらがな素読文]
こをいずしててんかをしり、まどをうかがわずしててんどうをみる。そのいずることいよいよとおければ、そのしることいよいよすくなし。ここをもってせいじんは、いかずしてしり、みずしてあきらかにし、なさずしてなす。
 

[口語訳文1(逐語訳)]
玄関から出ずに世界の事を知り、窓から外を観ないで自然の摂理を知る。遠くへ出かければ出かける程に解る事は少なくなって行く。だから「道」を知った聖人は何処へも行かずに全てを知り、何も見ずに全てを理解し、何もせずに全てを成し遂げる。

聖人といわれている人は外に出なくても世の中のことが分かり、窓から外を窺わなくても自然の動きが良く分かるのです。やみくもにどんどん外に出て行っても本質的なことはほとんど理解出来ません。人は出歩かないでも世の中のことが良く分かり、見なくても物事の本質が良く理解でき、無為の状態ですべてのことを成し遂げることが出来るのです。
 
[口語訳文(従来訳)]
室(へや)から出なくても世のなかのことは分かり、
窓から覗かなくても天の理法は居ながらにして知られる。
遠くに出かければ出かけるほど、
本当のことは分からなくなるのだ。
だから無為の聖人は、
出あるかなくても本当のことが分かり、
目でみなくても名前がつけられ、
作為を弄しなくても成果があがるのだ。

福永光司註解『老子(下)』より

 

[井上のコメント]

20代、30代の頃のわたしは、

マクロビオティックの創始者・桜沢如一が、

自分の主宰する集まりを

一時期〝老子の学校〟と呼んでいたことなどから

道教に関心があって、

老子、荘子をよく読んでいました。

 

それでも、10年ほど前から論語に対する見方が

少しずつ変わってきていて、

論語499章を1年半ほどかけて、

1日1章ずつ自力で読み解いてみる体験を経て

孔子の思想が、老荘思想をすべて

内包してしまうほどの幅広さと奥深さを

もつことを実感できるようになり、

それまでのわたしの孔子や儒教に対する考え方が

大きく変化してしまったのです。

 

その辺りの経緯などは

次の論語1日1章解読ふりかえり記事に書いたので、

未読の方は参照ください。

論語499章1日1章解読ふりかえり(その1)

論語499章1日1章解読ふりかえり(その2)

論語499章1日1章解読ふりかえり(その3)

 

したがって、いまのわたしが、

「中国の古典で読むべき書をたった1冊だけ選ぶなら

どれを選びますか?」と問われたときは、

迷わず「論語」と答えるんですが、
だからといって、老子や荘子の世界にまったく

関心がなくなってしまったわけではありません。

 

たとえば、今年のお正月明けに配信され、

文字起こしして講義録を作成している

響月ケシーさんの動画「現実創造の掟」でも、

老子を「重要性の引き下げの達人」と

紹介されていたことを覚えていますか?

響月ケシー『現実創造の掟 ④潜在意識の操作編 〜幸運とは自然なことである〜』

 

ケシーさんが6本の動画で語られていた内容を

わたしがこれまで歩んできた人生と

重なる部分があまりに多くて

答え合わせのように確認しながら聞けたことは

わたし自身も正直驚きましたが、

その要因のひとつには、

20代の頃に易経を読み始めたことや

早くから老荘思想に触れていたことが

あったようにおもうからです。

 

昨日3/21はバッハの誕生日だったので、

久しぶりに音楽の話題を投稿したんですが

ビートルズも老子には注目していたようで、

ジョージ・ハリスンが作曲した「The Inner Light」の動画を貼り付けておきます。

 

The inner light - The Beatles (LYRICS/LETRA)

Without going out of my door
I can know all things on earth
With out looking out of my window
I could know the ways of heaven

The farther one travels
The less one knows
The less one really knows

Without going out of your door
You can know all things of earth
With out looking out of your window
You could know the ways of heaven

The farther one travels
The less one knows
The less one really knows

Arrive without travelling
See all without looking
Do all without doing

 

この英訳詞はほぼ

第47章の内容そのものですね〜

 

ビートルズはしばしばインドに行っていて、

特にジョージ・ハリスンはインド音楽に

傾倒していたようです。

 

また、3/19投稿した記事

コメントに書いたことなんですが、

人間には、自主性を発揮しすすんで物事に

取り組もうとする姿勢や、
課題を自ら発見し解決できる能力が

もともと備わっているという見方も、

外側を見なくても、内側を見ていれば

すべて分かると書かれているこの章の中味に

つながっていますね。

 

明日は、老子を読んでみようとおもった

きっかけのひとつとなった、

梅棹忠夫さんの本について書く予定です。

 

※冒頭の写真左側は真崎守『老子』

 右側は桜沢如一の直弟子だった

 李成根さんによる「謎言葉の書『老子』」

 

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