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TBSドラマ『逃げ恥』名セリフ&名場面集(その99)

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TBSドラマ『逃げ恥』名セリフ&名場面集(その99)

TBSドラマ『逃げ恥』名セリフ&名場面集(その99)

2026/05/19

2/10からこのブログでは、

TBSドラマ『逃げ恥』名セリフ&名場面集を

お届けしているんですが、

回を重ねてこの記事は99回めで、

いよいよあと1回を残すのみとなりました。
 

今日は、第7話の終盤部クライマックスで

40分50秒過ぎたあたりから、

百合のところにいたみくりが、

平匡のマンションに帰ってきて

平匡とふたりでアイスワインを飲みながら

話すところから始まるシーンを。

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〔平匡のマンションにて〕

みくり:ただいま帰りました。

平匡:おかえりなさい!

みくり:平匡さん!

平匡:

みくり:土曜日だし、お酒どうですか?

平匡:……

みくり:〔アイスワインのボトルを見せながら〕百合ちゃんからのお裾分け。

〔ソファに並んで座るみくりと平匡〕

平匡:アイスワイン…

みくり:極寒の地で自然に凍った葡萄だけを使うんだそうです。凝縮された分、糖度が上がるって。

〔二人、小さなグラスでアイスワインを飲みながら〕

平匡:想像よりずっと甘い!

みくり:〔うなずく〕

みくり:〔グラスを置き、身体を平匡の方に向けて〕ちゃんと言ってなかったんで、言おうと思うんですが…

平匡:はい。

みくり:平匡さんに雇ってもらえて、毎日楽しく仕事ができて、ありがとうございます!

平匡:こちらこそ。

みくり:それと…それだけではなく……

平匡:???

みくり:……

平匡:……?

みくり:……

〔第3話のみくり、フラッシュバック〕平匡さんが一番好きですけど。

みくりM:(従業員としてなら簡単に言えた言葉が…どうして…言えなくなるんだろう…)

平匡:……?

みくり:……

〔みくり、平匡に近づいて、肩に頭を乗せる〕

平匡:!!

〔平匡、アイスワインを飲む〕

みくり:……

平匡:……

〔平匡、グラスを置いてみくりを見る〕

みくり:……

〔みくり、平匡を見る〕

〔平匡、みくりの方に身体を向け、みくりの手に自分の手を重ねる〕

〔二人、少しずつ近づいてキスをする〕

〔離れて〕

平匡:……

みくり:……

〔見つめ合う二人〕

〔みくり、平匡の首に抱きつく〕

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

TVドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』第7話より

 

 

COMMENT:このアイスワインの場面、「ただいま」「おかえり」「お酒どうですか?」という日常の会話から始まります。なのに、ここが第7話のクライマックスとして強烈に効いてしまうのは、恋愛テンプレの爆発ではなく、むしろその逆。二人が第1話から積み上げてきた〝ローカル憲法〟(雇用主/従業員、生活の手順、関係の運用ルール)が、ついに恋愛テンプレを静かに回収してしまうからでしょう。熱烈な告白で押し切るのではなく、手続きを踏むように、言える言葉から言っていく。だからこそ、このキスは派手じゃないのに、妙に濃いんですね。
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まず、アイスワインというこの小道具が本当に上手い。百合からのお裾分けという、自分で用意した〝勝負酒〟じゃないところも含めて、押しつけがましさがありません。そのうえでみくりが語る「極寒の地で自然に凍った葡萄だけを使う」「凝縮された分、糖度が上がる」という説明が、ただの豆知識じゃなくて、二人のこれまでの関係にそのまま重なってくる。言葉がすぐ出てこない。すぐに発展しない。凍った時間が長かった。だけど、その凍結が長かったぶんだけ、いざ温度が上がったときの甘さが濃くなる。平匡の「想像よりずっと甘い!」はワインの感想であると同時に、ここまで想像でしかなかった生活の甘さが、口から実感として漏れた瞬間にも聞こえてきます。

 

その甘さの中で、みくりがいよいよ「ちゃんと言ってなかったんで、言おうと思うんですが…」と切り出す。でも、最初に出てくるのは「平匡さんに雇ってもらえて、毎日楽しく仕事ができて、ありがとうございます!」という、労務の精算みたいな言葉。普通の恋愛ドラマだったら真っ先に「好きです」という告白へ向かうところを、『逃げ恥』はまず土台を締める。雇用主/従業員という関係の条文を、きちんと肯定し、感謝として精算する。そのうえで「それと…それだけではなく……」と、次の条文へ更新しようとする。この順番が、たぶん二人にとっては必要なんでしょう。いきなり恋愛へ飛ぶのは、足場が抜けてしまって怖すぎる。だから、まず足場の確認から始める。

 

ところが、ここでみくりは言えなくなっちゃうんですね。第3話のフラッシュバックが入って、「平匡さんが一番好きですけど」という言葉がよみがえる。「従業員としてなら簡単に言えた言葉が、どうして言えなくなるんだろう」と。これ、勇気が出ないとか、照れているとか、そういう可愛い話じゃないんですよね。言った瞬間から、雇用主/従業員という主従関係が変わってしまうから、フラットな立場で相手の返答を引き受けなければならない。つまり、ここでの沈黙、言語化の難しさは、感極まってというより、責任が増えることへの自覚なんだとおもいます。同じ言葉でも、文脈が変わると重さが変わる。従業員の「好き」は、ある程度、安全な比喩として言えた。でも恋愛の「好き」は、対等な立場で相手の人生に手をかけることにもなる。だから喉の奥で止まってしまう。

 

そこでみくりは、言葉の回線をいったん切って、身体の回線へ変更し、平匡の肩に頭を乗せます。ハグよりも軽い。けれど、拒否されたら致命傷。生活の距離のまま、しかし最大限の賭けを打つんですね。たぶんここがこの場面のキモで、告白できないから黙ったまま、ではなく、告白できないなら〝別の言語〟へと移る。沈黙を失敗にしないための、みくりの知恵でもあるし、勇気でもあるんでしょう。

 

だからこの二度目のキスは、衝動の爆発というより、凍っていたものが溶けていくような自然なプロセスとして起きている。まずワインの甘さが共有され、次に感謝が言語化され、次に言えなさが露呈し、最後に身体が肩に触れる。恋愛テンプレとも言える〝衝動の花火〟じゃなく、生活の手順の延長線上で、気づいたときには決定的なところに到達している。アイスワインが「凝縮された甘さ」なら、この場面の二人の甘さも、まさに凝縮の甘さです。遠回りしてきたぶんだけ、甘さが濃くなってしまった、というか。

 

結局この場面で見せているのは、恋の瞬間というより、関係の更新手続きなんだとおもいます。言える言葉から言う。言えない言葉は、別の形で届ける。ローカル憲法の条文を一つずつアップデートしながら、第7話でようやく恋愛テンプレの地点へ到達する。ここまで本当に長かったですね。でも、『逃げ恥』がこうしたクライマックスですら生活の地面から描いていて、じんわりと余韻を残すのは、こういう〝静かな更新〟プロセスを丁寧にドラマにしているからなのではないかと。


そして、(その41)の記事でも触れたように、この後みくりは、痛恨のミス———天国から地獄へと急降下するような大事故を起こしてしまいます。第6話に続いてこの第7話も衝撃のラストシーンが待ち受けているんですが、そのあたりについては、平匡を演じた源さん本人が放映後にオールナイトニッポンで語った言葉を紹介しながら以前に言及しました。次の記事を未読の方はご覧ください。
ガッキーと源さんの結婚を予感していたわけ(その7)



この名セリフ&名場面集で紹介しているセリフは、2020年に放映された『逃げ恥・ムズキュン特別編』を土台に、野木亜紀子さんの『逃げ恥シナリオブック』での記述を参考にしています。TVドラマ『逃げ恥』のシーンを毎日投稿している理由については、この連投記事の初回として書いた(その1)の記事のコメントをお読みください。

ちなみに、4/10に投稿した(その60)の記事と、4/27に投稿した(その77)の記事には、『共同幻想論』の語彙を用いてリフレーミングしながらとても重要なことをコメントしましたし、それまでに投稿した記事のINDEXと、逃げ恥関連の投稿記事リンク集を載せています。未読記事がある方はぜひそちらから参照ください。

ガッキーと源さんが結婚を公表されたのは2021.5.19でしたから、今日でちょうど5周年ですね。おめでとうございます!!
 

さて、長く続いたこの連載記事もいよいよあと1回となりました。ラストを飾るのは、二人が一番ハッピーに見えるあの妄想シーンです。おたのしみに!(^^)/

 

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