寺子屋塾

TBSドラマ『逃げ恥』名セリフ&名場面集(二巡目・その11)

お問い合わせはこちら

TBSドラマ『逃げ恥』名セリフ&名場面集(二巡目・その11)

TBSドラマ『逃げ恥』名セリフ&名場面集(二巡目・その11)

2026/08/24

8/14からこの寺子屋塾ブログでは、

TVドラマ『逃げ恥』名セリフ&名場面集の
二巡目を投稿しています。

一巡目のリライト記事ばかりだと

能がないので、昨日(その10)の記事では
差し替えて新たに書き起こしたシーンについて

コメントしました。

 

今日は最終回第11話の中盤で

30分50秒過ぎたあたりから、

放送直後からとても反響の大きかった

百合と杏奈のカフェでのやりとりを。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

〔カフェ(Gingers Beach)にて〕

五十嵐杏奈:50にもなって、若い男に色目を使うなんて、虚しくなりませんか?

土屋百合:訂正箇所が多すぎて、どこから赤を入れたらいいものか。

杏奈:正確には49歳。でも周りから見れば同じです。

百合:……

杏奈:アンチエイジングにお金を出す女はいるけど、老いを進んで買う女はいない。

百合:……あなたは随分、自分の若さに価値を見出しているのね。

杏奈:お姉さんの半分の歳なので。

百合:わたしが空しさを感じることがあるとすれば、あなたと同じように感じている女性が、この国にはたくさんいるということ。

杏奈:

百合:今あなたが価値がないと切り捨てたものは、この先あなたが向かって行く未来でもあるのよ。

杏奈:……

百合:自分が馬鹿にしていたものに自分がなる、それって、辛いんじゃないかな?

杏奈:……

百合:わたしたちのまわりにはね、たくさんの呪いがあるの。あなたが感じているのもその1つ。

杏奈:……

百合:自分に呪いをかけないで。そんな恐ろしい呪いからは、さっさと逃げてしまいなさい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

TVドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』第11話より

 

 

COMMENT:放送直後から反響の大きかった、カフェ(Gingers Beach)にて百合と杏奈が向かい合う場面です。このシーンについては一巡目の記事でわたしの書きたかったことをほぼ書けたように感じているので、内容は若干被ってしまうかもしれませんが、今日の記事では、言葉と同じくらいの重量で置かれている沈黙「……」のほうに着目してコメントしてみようかと。

 

杏奈は「50にもなって」「老いを進んで買う女はいない」と、年齢をめぐる価値基準をまるごと持ち込んできます。でも、百合はそこで、正面から言い負かそうとしてません。「訂正箇所が多すぎて、どこから赤を入れたらいいものか」という返し、痛快な皮肉に見えながら、実は〝論破〟というゲーム自体を降りているんですね。あなたの言い分を一つずつ潰すより、その採点表ごと見直した方が早い、と。

 

そして百合は、その校正作業を一気にやろうとしていません。杏奈が言い返すたびに「……」が挟まっています。ここが脚本の面白いところで、沈黙が〝気まずさ〟でなく、相手の価値基準が自分の中でほどけていくための処理時間として描かれているんですね。言い返されて崩れるのでなく、言葉が届くまでの間に、じわっと自壊していく。百合は杏奈を追い詰めてはいないし、勝ちにも行ってないので。沈黙を怖がらず、沈黙にちゃんと仕事をさせている。

 

だから、「わたしが空しさを感じることがあるとすれば、あなたと同じように感じている女性が、この国にはたくさんいるということ」という一文が、お説教にならずに入ってくる。ここで百合は、杏奈を悪者に固定していません。あなたの言葉は、あなた一人だけの性格でなく、あなたにもたらされた空気の産物だ、と言っている。けれど同時に、その空気を吸い続けた先に何が待っているかという現実もちゃんと示している。「今あなたが価値がないと切り捨てたものは、この先あなたが向かって行く未来でもある」と、この言葉が効くのは、正しさの刃で切るからじゃない。沈黙を含んだ〝余白〟があるから、杏奈の中で未来が一瞬だけ具体化してしまうんですね。

 

そして百合は最後に、「私たちのまわりにはね、たくさんの呪いがあるの」と言う。ここでも重要なのは、〝呪い〟を外部の敵として描いていないところ。呪いは、社会の中にあると同時に、自分の内側にも住みついてしまう。『世界は贈与で出来ている』の著者・近内悠太さんが、「呪いとは、その人から思考と行動の自由を奪う言葉のこと」と定義されているんですが、「自分に呪いをかけないで」という百合の言葉は、努力して勝てではなく、まずその採点表から降りてしまえ、という提案になっているんですね。呪いはかけるのも「言葉」だけど、解くのもまた「言葉」なので。

 

だからこの場面は、最終回のこのタイミングに置かれることで一層引き立つのでしょう。『逃げ恥』が第1話から繰り返し描いてきたのは、仕事、恋愛、結婚の〝正解〟でなく、正解らしきものに追い立てられてしまう〝心の動き〟だったので。最後に百合は、ドラマのタイトルをもう一度、生活の言葉に引き戻してみせます。「そんな恐ろしい呪いからは、さっさと逃げてしまいなさい」。逃げることは恥のように感じたとしても、呪いから距離を取るための、立派な技術であり、生活の知恵として役に立つ。そう言い切ってくれるから、沈黙の多いこの会話は、ただの名言集でなく、ドラマ全体の〝出口〟として観た人の内側に残り続けるのではないでしょうか。



この名セリフ&名場面集で紹介しているセリフは、2020年に放映された『逃げ恥・ムズキュン特別編』を土台に、野木亜紀子さんの『逃げ恥シナリオブック』での記述を参考にしています。こんな風にTVドラマ『逃げ恥』のシーンを毎日投稿することになった最初の動機については、一巡目の初回として書いた(その1)の記事のコメントをお読みください。5/20に投稿した1巡目の最終回(その100)には、すべての記事内容を総括するコメント、全100回のINDEXつきリストと関連リンク集を載せました。
TBSドラマ『逃げ恥』名セリフ&名場面集(その100・最終回)

また、当塾ではすべて関連し合っているという考え方を大切にしていますので、さらに詳しく知りたいという物好きなお方(笑)は、タグ「逃げ恥」を付している過去記事のみならず、他の記事を適宜アクセスください。アクセス数が最も多いカテゴリーは、今日の名言シリーズ(現在その130まで投稿)ですし、また、寺子屋塾のエッセンスをなるべく短いコトバで端的に知りたい方は、つぶやき考現学をご覧下さい。最近は、易経、論語、仏典などをひもといている古典研究関連カテゴリの記事もアクセスが増えてきています。

この連載記事は、『逃げ恥』第1話から第11話まで順番にひとつずつ紹介し、一巡したらまた第1話に戻るというスタイルで投稿していくので、明日はまた第1話からとなります。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

●2021.9.1~2024.12.31記事タイトル一覧は

 こちらの記事(旧ブログ)からどうぞ

 2025年に投稿した365記事はすべて

 今日の音楽シリーズで12/31に全リストを掲載

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
☆寺子屋塾に関連するイベントのご案内

 9/6(日) 13:30~16:30
  『レゾナント・コミュニケーション』読書会 #2

 9/26(土) 10:30~18:30 寺子屋Notion
 9/27(日) 10:30~ 易経入門講座〔第3期〕
      14:00~ 易経準中級講座 第16回 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

◎らくだメソッド無料体験学習(1週間)

 詳細についてはこちらの記事をどうぞ!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

当店でご利用いただける電子決済のご案内

下記よりお選びいただけます。