TBSドラマ『逃げ恥』名セリフ&名場面集(二巡目・その39)
2026/09/21
8/14からこの寺子屋塾ブログでは、
TVドラマ『逃げ恥』名セリフ&名場面集の
二巡目を投稿しています。
どんな流れ、経緯から二巡目を投稿し始めたか、
その理由やきっかけ等については、
関連している8/13以前の記事等に記したので、
未読の方はご覧ください。
第1話から第11話まで順番に1シーンずつ紹介し、
最終話まで行ったらまた第1話に戻るスタイルで
(その45)まで投稿するつもりです。
基本一巡目100記事で取り上げたシーンへの
コメントをリライトして投稿しているんですが、
さすがにそればかりだと能がないので、
(その10)、(その15)、(その23)、
(その29)の記事では、
一巡目で取り上げたシーンそのものを差し替え
新たに書き起こした場面のシナリオに
コメントする記事を書きました。
9/16から四周目に入っていて、
今日は一巡目(その39)で取り上げたシーンへの
リライト記事なんですが、
第6話の中盤22分40秒ほど過ぎたあたりから、
温泉旅館で仲居と平匡、みくりのやりとりを
コメディアスに描写したシーンを。
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〔温泉旅館の客室にて、ノック音がして〕
旅館の仲居:失礼します。
森山みくり&津崎平匡:!
仲居:先ほどの部屋に、お忘れ物が~
みくり:〔入口の方へ近づいていき〕どうぞ〜!
〔前の客室シーンのインサート。マムシドリンクが床をスライディングしてチェストの下へ〕
平匡:〔激しく息を呑み〕……!!
仲居:失礼します。〔と言って部屋に入ってくる〕
平匡:……
みくり:ありがとうございます。
仲居:失礼します。〔と言って、みくりに会釈しながらも素通りして平匡のところへ〕
平匡:……
仲居:チェストの下に落ちてました。
〔マムシドリンク、手ぬぐいに包んで見えなくしてある〕
平匡:ああ…
仲居:失礼します。〔と、部屋を出て行く〕
平匡:〔感動して〕……
みくり:?
平匡:……なんて素晴らしい仲居さんなんだ!
みくり:忘れ物を届けるくらい当然じゃ・・・
平匡:いや、あの方は、仕事プラスアルファの気遣いができる素晴らしい仲居さんです。
みくり:……。なんですか、それ?
平匡:みくりさんには関係ありません!
みくり:!
〔平匡、いそいそと自分のバッグにしまおうとする〕
みくり:〔ふ〜ん、という表情で〕せっかく来たんだし、お風呂一緒に入りますか?
〔平匡、包みを取り落とし、手ぬぐいから転げ落ちるドリンクをみくり、拾おうと〕
みくり:!
平匡:あぁっ!見ないで!〔と叫びながら、手ぬぐいから転げ落ちたドリンクに飛びつく〕
みくり:?



















COMMENT:この場面、マムシドリンクをめぐるドタバタだけ追いかけても十分に笑えるんですが、よく見ると、第6話後半に起きる二人のすれ違いが、ちょっとした小ネタをめぐるやりとりの中に、予告編的に先取りされているんですよ。
前の部屋に忘れ物があったと仲居が訪ねてくる。みくりが受け取ろうとするのに、仲居は会釈しながら素通りして、まっすぐ平匡のもとへ向かう。しかも、チェストの下から回収したマムシドリンクを、むき出し状態でなく手ぬぐいに包んで差し出す。品物は返す。しかし、それが何であるかは同伴者に見せない。平匡には意味ありげな表情をチラッと見せても、同伴者にわかるようなあからさまな説明はしない。見てしまったけれど、見なかったことにして返す。この「見せない」というひと手間に、平匡は猛烈に感動します。
「なんて素晴らしい仲居さんなんだ!」「仕事プラスアルファの気遣いができる素晴らしい仲居さんです」という評価はたしかに正しい。平匡は、仕事を型どおりにこなすだけでなく、その向こう側にいる相手の立場まで考えられる人の細かい気遣いを、きちんと見抜いている。第1話から、みくりの家事労働を正当に評価し、指示も対価も明確にしてきた平匡らしい反応といえます。
とはいえ、この場面には意地の悪い皮肉も仕込まれている。なぜなら、平匡は仲居の「プラスアルファ」には一瞬で気づくのに、目の前のみくりがそれまで差し出し続けてきた「プラスアルファ」に気づいていないので。みくりは家事という仕事に加えて、ハグを提案し、恋人という関係を提案し、旅行先でも二人の距離を近づけようとしています。でも、そのどれもが契約書に明記されていない、感情面でのプラスアルファのアクションのはず。
ところが平匡は、仲居の気遣いに深く感動して言葉を尽くす一方、みくりからの「なんですか、それ?」という問いに、「みくりさんには関係ありません!」と素っ気なく境界線を引いてしまう。第三者の気遣いは読み取れるのに、一番近くにいる人の働きかけは読み取れない———このねじれが、のちにみくりが感じる「いつもいつもわたしばかりが提案している」という疲れにつながっていくのでしょう。
そして、この関係のねじれを、ドラマは説明でなく、マムシドリンクの動きで見せていきます。床を滑り、チェストの下へ潜り込み、旅館の仲居によって回収され、手ぬぐいに包まれ、平匡の手に戻る。さらに、みくりの「お風呂、一緒に入りますか?」というひとことで取り落とされ、包みから転げ出し、最後は平匡が「あぁっ!見ないで!」と叫んで身体ごと飛びつく。笑
隠れる、包まれる、こぼれ出る、追いかける。このマムシドリンクの移動が、そのまま平匡の内面の動きになっているわけですね。第1話から平匡は、生活上の問題を言葉と契約と合理性で整理してきました。でも、身体や欲望までは契約どおりに管理できない。事前に用意しておいたはずの〝対策〟が、かえって自分の期待や動揺までをハッキリと可視化してしまう。漫画ならモノローグやコマの間で表すところを、ドラマでは小道具とカット割りと源さんの全身運動(笑)に置き換えている。静かな平匡が突然、畳の上へ飛び込むから、余計に可笑しい。
一方のみくりも、「関係ありません」と遮断されても、そのまま引き下がりません。「せっかく来たんだし、お風呂、一緒に入りますか?」と、関係を一段深めてしまうような質問を投げ返します。天然なみくりらしい突拍子もない言動ですが、結果的に風呂敷包みの正体を追及する代わりに、二人の関係そのものを揺さぶりをかけることに。けれど返ってきたのは、「見ないで!」という平匡の叫び。みくりが見ようとしたのはマムシドリンクですが、平匡はいったい何を見られたくなかったのでしょうか。
仲居は、見えてしまったものを見えないように包む。みくりは、包まれているものを見ようとする。平匡は、見られそうになると全力で隠す。この三者三様の「見る/見せない」のリレーが、コメディとして展開されている。大笑いできる場面なのに、その奥では、みくりのプラスアルファがまた一つ受け取られないまま残ってしまう。笑いで包んで返された小さなすれ違いが、この先、手ぬぐいの隙間から転げ出すように表面化してくる。第6話のこの先、後半で展開される事件の予告としても、実によくできた場面だとおもいました。

この名セリフ&名場面集で紹介しているシナリオは、野木亜紀子さんの『逃げ恥シナリオブック』を参考にしながら、2020年に放映された『逃げ恥・ムズキュン特別編』を書き起こしました。こんな風にTVドラマ『逃げ恥』のシーンを毎日投稿することになった最初の動機については、一巡目の初回として書いた(その1)の記事のコメントをお読みください。5/20に投稿した1巡目の最終回(その100)には、すべての記事内容を総括するコメント、全100回のINDEXつきリストと関連リンク集を載せています。
・TBSドラマ『逃げ恥』名セリフ&名場面集(その100・最終回)
また、当塾ではすべて関連し合っているという考え方を大切にしていますので、さらに詳しく知りたいという物好きなお方(笑)は、タグ「逃げ恥」を付している過去記事のみならず、他の記事を適宜アクセスください。当塾で開塾時から基本教材と位置づけてきたらくだメソッドの学習内容については、らくだメソッド関連を、大切にしているエッセンスを短いコトバで端的に知りたい方は、つぶやき考現学をどうぞ。アクセス数が最も多いカテゴリーは、今日の名言シリーズ(現在その130まで投稿)です。最近は、易経、論語、仏典などをひもといている古典研究関連カテゴリの記事もアクセスが増えています。
明日は一巡目(その40)の記事でとりあげた第7話のシーンへのコメントをリライトして投稿する予定です。
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