TBSドラマ『逃げ恥』名セリフ&名場面集(二巡目・その23)
2026/09/05
8/14からこの寺子屋塾ブログでは、
TVドラマ『逃げ恥』名セリフ&名場面集の
二巡目を投稿しています。
どんな流れ、経緯から二巡目を投稿し始めたか、
その理由やきっかけ等については、
関連している8/13以前の記事等に記したので、
未読の方はご覧ください。
第1話から第11話まで順番に1シーンずつ紹介し、
最終話まで行ったらまた第1話に戻るスタイルで
(その45)まで投稿するつもりです。
基本一巡目100記事で取り上げたシーンへの
コメントをリライトして投稿しているんですが、
さすがにそればかりだと能がないので、
(その10)の記事や(その15)の記事では
シーンそのものを差し替え
新たに書き起こした場面のシナリオに
コメントする記事を書きました。
今日も一巡目(その23)で取り上げたシーンが
あまりに短いシナリオで
書きたいことはほぼ一巡目に書いたので
差し替えて新たに書き起こしたシナリオに
コメントする記事です。
第1話の後半37分50秒過ぎた辺りから始まる
平匡のマンションでのみくりと平匡とのやりとりで、
ドラマ『逃げ恥』のストーリーが
いよいよ本格駆動し始める場面を。
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〔平匡のマンション・リビングにて〕
みくり:〔菓子折りを差し出しながら〕父からです。強引に娘を雇わせておきながら、引っ越すことになり、申し訳ないと。
平匡:……
みくり:1ヶ月半、ありがとうございました。
平匡:……
〔平匡、菓子折りを受け取らない〕
みくり:……?
平匡:座ってもらえますか?
みくり:はい。
〔平匡、ダイニングテーブルの椅子に座る。みくりも向かいに座る〕
平匡:今日の分のお給料です。〔と封筒を差しだす〕
みくり:ありがたく。〔と受け取る〕
平匡:試算してみたんです。
みくり:?
平匡:〔作成した資料を次々とテーブル上に並べながら〕家賃水道光熱費等の生活費を折半した場合の収支、食事を作ってもらった場合と外食との比較、毎週家事代行スタッフを頼んだ時との比較。
平匡:……
みくり:……
平匡:そして、OC法に基づいた、専業主婦の年間無償労働時間は2199時間になりますが、それを年収に換算すると……
みくり:304.1万円!
平匡:それです。そこから時給を算出し、一日7時間労働と考えた時の月給がこちら。そこから生活費を差し引いたときの手取りがこちらで、健康保険や扶養手当を有効利用した場合の試算もしてみました。
平匡:これは、『事実婚』の提案です。
みくり:事実婚?
平匡:戸籍はそのまま、つまり、籍は入れずに住民票だけを移すという方法です。
みくり:……
平匡:もちろん、諸条件は話し合う必要がありますが、試算した結果、事実婚という形で森山さんをここへ住まわせ、給与を支払い、主婦として雇用することは、僕にとっても有意義であるという結論に達しました。
みくり:……!
平匡:もちろん、どうするかは森山さん次第で……
みくり:やります!雇ってください!
平匡:……!
みくり:……!
平匡:〔戸惑いをごまかすように眼鏡を上げて〕……では……
みくり:あっ、荷物!
平匡:えっ、荷物!?
みくり:〔うなずく〕























COMMENT:第1話後半、みくりが菓子折りを差し出し「1ヶ月半、ありがとうございました」と言うところまでは、いったん物語がきれいに終わってしまうような手触りがあります。雇われて働いて、そして引っ越しで契約終了。筋としては、そのままここで閉じても成立する。ところが平匡は、そこで菓子折りを受け取りません。無言のまま、手続きを止める。あれは「感情が動いて言葉が出ない」というより、もっと事務的なスイッチで、別れの挨拶を〝面談〟に切り替える開始宣言みたいに見えます。会話のジャンルを、所作で切り替える。このドラマらしい、静かな強引さです。
「座ってもらえますか?」と場を作り直し、今日の分の給料を渡して、そこから先は「試算してみたんです」と続く。普通の恋愛ドラマなら「一緒にいてほしい」「帰らないで」で関係が動くはずの局面で、平匡は資料を並べる。家賃水道光熱費の折半、外食との比較、家事代行との比較——つまり、恋の告白ではなく稟議書で関係が駆動し始めるわけです。ここ、笑いどころでもあるんですが、同時にこの物語の設計図がむき出しになる瞬間でもあります。感情を言わずに済むように、数字と紙が前に出てくる。言葉で相手を圧迫しないための迂回路として、プレゼンが用意されている感じがするんですよね。
そして平匡は、OC法だの無償労働時間だの、ふつうは社会問題として語られがちな素材を、説教ではなく〝契約条件〟に直結させてしまう。「専業主婦の年間無償労働時間は2199時間」———その話が、テレビの前の正論にとどまらず、「じゃあ、月給はいくらか」という具体の数字になる。ここが巧い。社会批評が、主人公たちの意思決定のエンジンに変換されている。しかも、みくりが「304.1万円」と即答することで、その数字が二人の間の共通言語として成立してしまう。勉強してきた人同士の、変な息の合い方です。
で、結論が「これは『事実婚』の提案です」になる。ここもロマンの代替ではないんですよね。「籍を入れない」ことの思想を語るというより、「住民票だけを移す」という実務に落とす。直前まで、両家の顔合わせだの、古風な親の目だの、外部の監査がちらついていた流れを踏まえると、事実婚は自由な恋の気分ではなく、制度と生活の両方をくぐるための実装案として出てくる。平匡らしいし、同時に、この物語が〝世間〟を避けて走るのではなく、世間に耐える形を選びながら走ろうとしているのが見えます。
そして何より面白いのは、みくりの「やります!雇ってください!」の即答です。ここが、恋の告白としての「はい」ではなく、契約言語としての「はい」になっている。必要とされること、役に立つこと、その承認が、給与と雇用という形式で確定する瞬間。だからこそ、平匡が戸惑って眼鏡を上げ、「では……」と間を置く、その〝クリック音〟みたいな間が効くんでしょう。関係が成立した、というより、関係の仕様が決まった。そんな感じがします。
最後に「荷物!」で現実が動き出すのも、うまい締めです。提案が〝話〟から〝実行〟に切り替わる合図で、ここでようやく『逃げ恥』のストーリーが本格駆動し始める。菓子折りを受け取らないところから始まった小さな逸脱が、気づけば生活の再設計にまでつながっている。恋愛の熱で押し切らず、手続きと翻訳と間合いで前へ進む。そういう作品なんだな、と改めて思わされる場面でした。

この名セリフ&名場面集で紹介しているシナリオは、野木亜紀子さんの『逃げ恥シナリオブック』を参考にしながら、2020年に放映された『逃げ恥・ムズキュン特別編』を書き起こしました。こんな風にTVドラマ『逃げ恥』のシーンを毎日投稿することになった最初の動機については、一巡目の初回として書いた(その1)の記事のコメントをお読みください。5/20に投稿した1巡目の最終回(その100)には、すべての記事内容を総括するコメント、全100回のINDEXつきリストと関連リンク集を載せています。
・TBSドラマ『逃げ恥』名セリフ&名場面集(その100・最終回)
また、当塾ではすべて関連し合っているという考え方を大切にしていますので、さらに詳しく知りたいという物好きなお方(笑)は、タグ「逃げ恥」を付している過去記事のみならず、他の記事を適宜アクセスください。アクセス数が最も多いカテゴリーは、今日の名言シリーズ(現在その130まで投稿)です。基本教材の学習内容については、らくだメソッド関連を、当塾で大切にしているエッセンスを短いコトバで端的に知りたい方は、つぶやき考現学をご覧下さい。最近は、易経、論語、仏典などをひもといている古典研究関連カテゴリの記事もアクセスが増えています。
昨日の記事で第11話(最終回)まで2周したので、記事の最後に(その1)から(その22)までのINDEXもつけました。明日は一巡目(その24)の記事でとりあげた第2話のシーンへのコメントをリライトして投稿する予定です。
【1周目】
第1話 みくりM:誰かに……。誰かに、選んで欲しい。ここに居ていいんだって、認めて欲しい。
・TBSドラマ『逃げ恥』名セリフ&名場面集(その2)
第2話 両家顔合わせの帰り道、大岡川の北中橋を渡るみくりと平匡。「逃げたっていいじゃないですか。」
・TBSドラマ『逃げ恥』名セリフ&名場面集(その3)
第3話 山梨県大善寺薬師堂の中にいるみくりと平匡 みくり「平匡さんが一番好きですけど。」
・TBSドラマ『逃げ恥』名セリフ&名場面集(その4)
第4話 居酒屋で百合、梅原、堀内が呑んでいるシーン 梅原「で、あるんすか?後悔した恋!」
・TBSドラマ『逃げ恥』名セリフ&名場面集(その5)
第5話 平匡「恋人とはなろうとしてなるものなんでしょうか?」みくり「恋人のおいしいところだけが欲しいんです」
・TBSドラマ『逃げ恥』名セリフ&名場面集(その6)
第6話 温泉旅行帰り列車内のみくり&平匡「あとひと駅」「永遠に着かなければいいのに」
・TBSドラマ『逃げ恥』名セリフ&名場面集(その7)
第7話 百合:仕事ってさ〜 人と人との関わりだから。どんな仕事も、相手への感謝とリスペクト
・TBSドラマ『逃げ恥』名セリフ&名場面集(その8)
第8話 館山・森山家の寝室にて 母「運命の相手にするの。意志がなきゃ続かないのは仕事も家庭も同じじゃないかな」
・TBSドラマ『逃げ恥』名セリフ&名場面集(その9)
第9話 BAR山にて百合「ある人にね。デートに誘われた。バツイチ子持ちだけどね」
第10話 平匡:みくりさん、きちんと入籍して、結婚しましょう。
第11話 カフェで百合と杏奈「自分に呪いをかけないで。そんな恐ろしい呪いからはさっさと逃げてしまいなさい」
【2周目】
第1話 森山家に向かうバス車内のみくりと平匡「あ、大丈夫です。ぼくは、プロの独身なんで」
・TBSドラマ『逃げ恥』名セリフ&名場面集(その13)
第2話 みくりM:隣の部屋で平匡さんが寝ている。緊張するような、しないような。
・TBSドラマ『逃げ恥』名セリフ&名場面集(その14)
第3話 ぶどうの丘でみんなが叫ぶシーン 平匡「浸透力、ハンパな〜い!」一同「???」
・TBSドラマ『逃げ恥』名セリフ&名場面集(その15)
第4話 風見:週一でいいんで、みくりさんをシェアさせてください。
・TBSドラマ『逃げ恥』名セリフ&名場面集(その16)
第5話 マンションの前の階段でみくりと平匡 「今は目の前のヤマタノオロチのことだけを考えましょう」
・TBSドラマ『逃げ恥』名セリフ&名場面集(その17)
第6話 BAR山にて百合と沼田「仕事の半分は仕方ないでできている」「残りの半分は?」「帰りたい」
・TBSドラマ『逃げ恥』名セリフ&名場面集(その18)
第7話 朝食中のみくりと平匡「燃え広がったらどうするつもりなんだ?あなた、放火犯ですかっ?」
・TBSドラマ『逃げ恥』名セリフ&名場面集(その19)
第8話 館山・森山家の庭にて月を見上げるみくり「人生のハンドルを握るのは自分自身」
・TBSドラマ『逃げ恥』名セリフ&名場面集(その20)
第9話 みくりM:(えらいことを聞いたような…)「つつましい 女だったら よかったの?」
・TBSドラマ『逃げ恥』名セリフ&名場面集(その21)
第10話 風見のマンション玄関先で百合がフリーズ「はあっ!びっっっくりした〜っ」
・TBSドラマ『逃げ恥』名セリフ&名場面集(その22)
第11話 風呂に一人籠もっているみくりに語りかける平匡「生きてるのって、面倒くさいんです」
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●2021.9.1~2024.12.31記事タイトル一覧は
こちらの記事(旧ブログ)からどうぞ
2025年に投稿した365記事はすべて
今日の音楽シリーズで12/31に全リストを掲載
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9/26(土) 10:30~18:30 寺子屋Notion
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14:00~ 易経準中級講座 第16回

