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TBSドラマ『逃げ恥』名セリフ&名場面集(二巡目・その22)

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TBSドラマ『逃げ恥』名セリフ&名場面集(二巡目・その22)

TBSドラマ『逃げ恥』名セリフ&名場面集(二巡目・その22)

2026/09/04

8/14からこの寺子屋塾ブログでは、

TVドラマ『逃げ恥』名セリフ&名場面集の
二巡目を投稿しています。
 

どんな流れ、経緯から二巡目を投稿し始めたか、

その理由やきっかけ等については、

(その1)(その2)の記事

関連している8/13以前の記事等に記したので、

未読の方はご覧ください。

第1話から第11話まで順番に1シーンずつ紹介し、
最終話まで行ったらまた第1話に戻るスタイルで
(その45)まで投稿するつもりです。


基本一巡目100記事で取り上げたシーンへの

コメントをリライトして投稿しているんですが、
さすがにそればかりだと能がないので、
(その10)の記事(その15)の記事では
シーンそのものを差し替え
新たに書き起こした場面のシナリオに

コメントする記事を書きました。

 

今日は一巡目(その22)で取り上げたシーンへの
リライト記事なんですが、

第11話後半部の後半36分50秒過ぎた辺りから

平匡のマンションでの

みくりと平匡のやりとりを。

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〔平匡のマンション・洗面所(夜)にて〕

みくり:〔風呂の中に一人で籠もっている〕

平匡:〔風呂のドアをノックする〕

みくり:〔浴槽内でうずくまっていたみくりが顔を上げる〕

平匡:お仕事中すいません。話してもいいですか?

みくり:……。

平匡:面倒を避けて避けて、極限まで避け続けたら、歩くのも、食べるのも面倒になって、息をするのも、面倒になって、限りなく、死に近づくんではないでしょうか?

〔しばし、間〕

みくり:〔風呂のドアの方を見て〕はい?

平匡:〔風呂のドアの外に座る〕生きていくのって、面倒くさいんです。

みくり:……。

平匡:それは、一人でも二人でも同じで、それぞれ別の面倒くささがあって、どっちにしても面倒くさいんだったら、一緒にいるのも手じゃないでしょうか。

みくり:……。

平匡:話し合ったり、無理な時は、時間をおいたり、騙し騙しでも、何とかやっていけないでしょうか。やってやれないことはないんじゃないでしょうか。

みくり:……。

平匡:みくりさんは、自分のことを普通じゃないと言ったけど、ぼくからしたら、今更です。

みくり:

平匡:とっくに知ってました。大したことじゃありません。

みくり:……。

平匡:世間の常識からすれば、ぼくたちは、最初から普通じゃなかった。今更ですよ!

みくり:……。

平匡:〔立ち上がって〕青空市、たのしみにしてます。おやすみなさい!

〔平匡、洗面所から出てゆく。みくり、泣く〕

みくりM:(うまくいかないとき、待っててくれる人。信じてくれる人。見失っちゃいけない)

みくりM:〔涙を拭いて〕(立て直そう。ひとつひとつ。立て直そう。ゆっくりでも)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

TVドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』第11話より

 

 

COMMENT:この場面は、一巡目(その77)の記事で取りあげたシーンの続きにあり、そこには吉本隆明さんの『共同幻想論』の考え方を土台にしながら、とても大事なことを書きました。以下の記事でも、『共同幻想論』の内容に触れるので、一巡目(その60)の記事(その77)の記事を未読の方はそちらを先にご覧ください。

まず、風呂のドアが閉まっている、という状況設定がまず巧いですよね。いま二人のあいだで閉まっているのはドアだけじゃなく、みくりの心のシャッターそのものでもあるので。そこで平匡は、真正面からこじ開けに行きません。ノックして、「お仕事中すいません。話してもいいですか?」と許可を取る。これってただの低姿勢でなく、関係を共同幻想上の夫婦役割ありきで押し通さないための手つきなんだとおもいます。だから、話していいかを確認する。ここからもう、平匡はちゃんと運用モードに入っています。

 

そして次に来るのが、「面倒を避けて避けて極限まで避け続けたら…息をするのも面倒になって、限りなく死に近づくんではないでしょうか?」という極端な比喩。平匡の言葉って、普段は安全運転なのに、ここは大げさに振り切ってますね。たぶん、ドア越しで表情も温度も伝わりにくい状況では、〝普通の正論〟だと沈黙に吸われてしまいかねないから。敢えて極論を持ち出して沈黙を揺らす。その結果、みくりが「はい?」と顔を上げる。脚本上の〝応答を引き出す装置〟として、この飛躍が置かれたのでしょう。

 

その上で平匡は、「生きていくのって、面倒くさいんです」と、急に等身大へ戻る。面倒をゼロにする話じゃない。一人でも二人でも面倒さに大差はなく、種類が違うだけ。だったら一緒にいるのも手じゃないか。ここって、愛の告白というより、生活の提案ですよね。話し合ったり、無理なときは時間を置いたり、騙し騙しでも何とかやっていけないか。理想の着地を目指すのでなく、現実的な再起動の方法を言っている。つまり平匡は、関係を〝幸せ〟という共同幻想で包んで先送りするのでなく、面倒を前提として、それでも動かす方法を列挙する。地味だけど強いのは、こういうところだとおもいます。
 

で、決定打が「普通じゃない」への応答です。みくりが「自分は普通じゃない」と言ったとき、普通のドラマなら「そんなことないよ」と慰めるか、「君は君だよ」と肯定するか、どちらかに行きがちです。でも平匡は違うんですね。「ぼくからしたら今更です」「とっくに知ってました。大したことじゃありません」「世間の常識からすれば、ぼくたちは最初から普通じゃなかった。今更ですよ!」と。これ、優しい言葉の形をしているけれど、実は共同幻想が侵蝕してくるのを無効化しようと防御しているんですね。普通/普通じゃないという採点表そのものを、二人の関係に持ち込ませない。共同幻想が対幻想を支配しようとする入口を、ここで塞いでいる。

 

そして最後、「青空市、たのしみにしてます。おやすみなさい!」と、平匡は立ち上がって去っていく。ここも大事で、説得し切ろうとしない。勝ち取ろうとしない。ドアを叩いて、言うべきことを言って、あとは待つ。ちなみに、「おやすみなさい」を言う前に風呂のドアに掌を当てている仕草は、顔を合わすこともできずに一方的に話すだけだったから、本当はみくりに触れたいんだという気持ちを表したつもりだったと、『逃げ恥』Blu-Ray BOXのオーディオコメンタリーで、源さんが話していました。

みくりMの「うまくいかないとき、待っててくれる人。信じてくれる人。見失っちゃいけない」は、平匡の〝待つ技術〟が届いた証拠なんだとおもいます。立て直そう、ひとつひとつ、ゆっくりでも。ここにあるのはハッピーエンドの宣言じゃなく、〝運用の再開〟です。『逃げ恥』って、結局ずっとこの姿勢を描いてきたんですよね。普通になろうとするのでなく、普通の外側で、言葉と距離と時間を使って、二人で生き方を組み直し運用していく。その最も静かな名場面が、この閉じた風呂ドアの前にある気がしました。



この名セリフ&名場面集で紹介しているシナリオは、野木亜紀子さんの『逃げ恥シナリオブック』を参考にしながら、2020年に放映された『逃げ恥・ムズキュン特別編』を書き起こしました。こんな風にTVドラマ『逃げ恥』のシーンを毎日投稿することになった最初の動機については、一巡目の初回として書いた(その1)の記事のコメントをお読みください。5/20に投稿した1巡目の最終回(その100)には、すべての記事内容を総括するコメント、全100回のINDEXつきリストと関連リンク集を載せています。
TBSドラマ『逃げ恥』名セリフ&名場面集(その100・最終回)

また、当塾ではすべて関連し合っているという考え方を大切にしていますので、さらに詳しく知りたいという物好きなお方(笑)は、タグ「逃げ恥」を付している過去記事のみならず、他の記事を適宜アクセスください。アクセス数が最も多いカテゴリーは、今日の名言シリーズ(現在その130まで投稿)ですしまた、寺子屋塾のエッセンスをなるべく短いコトバで端的に知りたい方は、つぶやき考現学をご覧下さい。最近は、易経、論語、仏典などをひもといている古典研究関連カテゴリの記事もアクセスが増えてきています。

第11話(最終回)まで来たので明日はまた第1話に戻り、一巡目(その23)の記事でとりあげたシーンへのコメントをリライトして投稿する予定です。

 

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