TBSドラマ『逃げ恥』名セリフ&名場面集(二巡目・その5)
2026/08/18
昨日投稿した記事の続きで、
TBSドラマ『逃げ恥』名セリフ&名場面集
二巡目の5回目です。
本日紹介するシーンは
一巡目で投稿したこちらの記事のリライトですが、
第5話の冒頭すぐ1分50秒過ぎたあたりから始まる、
みくりと平匡の次のやりとりを。
第4話最後のシーンで、みくりが平匡に
「わたしの恋人になって貰えませんか」と
衝撃の発言をした後の場面なんですが。
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〔平匡のマンション・リビングにて〕
津崎平匡:恋人とは、なろうとしてなるものなんでしょうか?
森山みくり:やってやれないことはないと思います。
平匡:みくりさんの恋人の定義とは?
みくり:一緒に、ご飯を食べたり…
平匡:食べてますし、暮らしてます。
みくり:…何処かへ遊びに行ったり…
平匡:友達と行けばいいじゃないですか。
みくり:……
平匡:恋人なんて、特にいなくても困らないし、無理をしてまで作る必要はないと思います。
みくり:あ…スキンシップはどうでしょう?
平匡:!
みくり:嬉しい時にハグをしたり、疲れた時に甘えたり、よしよしと頭を撫でてもらったり、そういう癒しあいの関係が恋人なのでは?
平匡:……
みくり:ありますよね、あー疲れたーハグされたいなーって思うとき…
平匡:〔首を傾げ……〕
みくり:〔思わず平匡と同じ方向に首を傾げ……〕
平匡:〔さらに深く首を傾げ……〕
みくり:〔同じように首を深く傾げ……〕
平匡:〔平匡が首を戻したらみくりも同じように戻して……〕たとえば、そうなったとして…
みくり:はい。
平匡:それを職場と言えるのでしょうか?
みくり:!
平匡:……
みくり:もちろん、仕事は仕事としてきちんと区別します。甘えもなしです。あくまでも業務時間外に、恋人タイムを設けるということです。
平匡:ハグをして、癒やし合う……
みくり:はい、それ以上は望みません!
平匡:……そんなに癒されたいなら、こんな形式的なものじゃなくて、本当の恋人を作ればいいじゃないですか。
みくり:!
平匡:……
みくり:わたしは……恋人のおいしいところだけが欲しいんですっ!
平匡:!
みくり:……
平匡:〔視線を落とし、小さくため息をつく〕
みくり:!
平匡:〔困り果てて、眉間にしわを寄せ、なにか言おうとする〕
みくり:〔平匡が話そうとするのを遮って〕あっ、いいです!
平匡:!
みくり:いま、急いで結論を出さなくても……
平匡:……
みくり:すみませんでした、こんな時間まで。













COMMENT:この第4話冒頭のやりとりは、セリフだけ追うと「恋人の定義とは?」という理屈の応酬なんですが、ドラマとしての一番の面白さは、その理屈の外側で起きていたんじゃないかと感じました。二人が首を傾げ合うあの反復です。そこだけ、会話の内容が一瞬どうでもよくなるくらい、身体の方が先に二人の距離を語っていているように感じたので。
みくりが「一緒にご飯を食べたり…」と言うと、平匡は「食べてますし、暮らしてます」と切り返す。「何処かへ遊びに行ったり…」に対しては、「友達と行けばいいじゃないですか」と。正論は強いですね。さすがのみくりも、言葉の土俵では勝てないと悟ったのか、論理のカードが尽きたというか一瞬黙るんですが、いきなりスキンシップの話に飛ぶんですね。「嬉しい時にハグをしたり、疲れた時に甘えたり…」と。すると平匡が首を傾げる。あの〝傾げ〟が、たぶんこの場面の主役です。
みくりから「ハグされたいなーって思うとき…ありますよね?」と言われても、平匡はまったくピンと来なくて首を傾げる。そこまでは分かります。でもみくりが、同じ方向に傾げる。さらに平匡が深く傾げると、みくりも深く傾げる。平匡が戻すと、みくりも戻す。これ、会話としては何も進んでいません。むしろ話は止まってる。でも、二人の間には妙な〝同期〟が生まれてしまっている。恋人の条件を探す話をしているのに、条件以前のところで身体が先に「同じリズム」を刻んでしまっている———ここがムズキュンの核なんじゃないかと。

面白いのは、この〝同期〟が、愛情表現として意図的に行われていないところ。すぐおもいだしたのは、(その12)の記事で紹介した第1話の終盤、平匡とみくりがバスでみくりの実家に向かうシーン。そこでも「同居にあたって、夜の生活の方は?」とみくりから問われ、「大丈夫です。ぼくはプロの独身だから」と話す平匡のガッツポーズを、みくりが真似るところがあったので。しかもそのシーンについては、台本になくガッキーのアドリブだったんですね。みくりは相手に合わせようとしているわけでもなく、平匡もみくりを真似させようとしているわけでもない。ただ「分からない」という同じ場所に立った二人が、何故か同じように首を傾げてしまう。言葉ではぶつかり合っているのに、身体は同じ動きをしている。
ここに、『逃げ恥』がずっと描いてきた「契約でつながっている関係なのに、なぜか似ていく二人」の不思議があります。しかもこの場面では直後に平匡は、「たとえば、そうなったとして…それを職場と言えるのでしょうか?」と、急に現実へ戻って境界線の話を始めます。身体が同期しているのに、頭は慌てて線を引き直す。「職場」を守らないと怖い。恋人タイムを設けると言われても、ハグをして癒やし合うと言われても、それは職場の外に置けるのか?平匡の問いは、恋愛の是非というより〝枠組み〟の防衛なんですよね。だからこそ、首かしげの同期が余計に効く。線を引こうとするほど、すでに線の内側に入ってしまっている感じがするから。
考えてみれば、恋人って「なろうとしてなる」ものかどうか以前に、気づいたら同じタイミングで笑ってしまったり、同じ方向を見てしまったり、同じ癖がうつったりするところから始まるのかもしれません。首を傾げる角度まで揃ってしまう、あの一瞬。あれは〝恋人の定義〟を探す会話の途中に紛れ込んだ、定義以前の出来事です。だからこの場面は、理屈っぽい議論のコントであるように見せかけながら、「言葉で恋人になろうとする二人が、言葉の外側で先に恋人っぽくなってしまう」ことを、演出でこっそり見せてしまった名場面なんじゃないかと、そんなふうに感じました。

この名セリフ&名場面集で紹介しているセリフは、2020年に放映された『逃げ恥・ムズキュン特別編』を土台に、野木亜紀子さんの『逃げ恥シナリオブック』での記述を参考にしています。こんな風にTVドラマ『逃げ恥』のシーンを毎日投稿することになった最初の動機については、一巡目の初回として書いた(その1)の記事のコメントをお読みください。5/20に投稿した1巡目の最終回(その100)には、記事内容を総括するコメント、全100回のINDEXつきリストと関連リンク集を載せました。
・TBSドラマ『逃げ恥』名セリフ&名場面集(その100・最終回)
また、当塾ではすべて関連し合っているという考え方を大切にしていますので、さらに詳しく知りたいという物好きなお方(笑)は、タグ「逃げ恥」を付している過去記事のみならず、他の記事を適宜アクセスください。アクセス数が最も多いカテゴリーは、今日の名言シリーズ(現在その130まで投稿)で、寺子屋塾のエッセンスをなるべく短いコトバで端的に知りたい方は、つぶやき考現学をご覧下さい。最近は、易経、論語、仏典などをひもといている古典研究関連カテゴリの記事もアクセスが増えてきています。
この連載記事は、『逃げ恥』第1話から第11話まで順番に紹介して一巡したらまた第1話に戻るというスタイルで投稿していくので、明日は第6話からとなります。
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●2021.9.1~2024.12.31記事タイトル一覧は
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8/23(日) 10:30~ 易経入門講座〔第3期〕
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