落合陽一『マタギドライヴとは』(その6)土地に根ざし、機械とともに生きる
2026/11/03
10/21から寺子屋塾ブログでは、
メディアアーティスト・落合陽一さんの
著書や動画を紹介しながら記事を書いています。
今日は、昨日11/2投稿した記事の続きで、
マタギドライヴ文字起こし記事の6回目を。
本書は9/23に上梓されたばかりで、
落合さんの一番新しい著書です。
『マタギドライヴ 計算機自然の辺縁における脱人間知性的文明論』
この記事から初めてアクセスされた方など、
以下の記事に未読分がある方は、
本日分のテキストを読まれる前に確認ください。
・『猫でもわかる生成AI ~落合陽一に100のプロンプトを入力してみた~』を読んでみて
・落合陽一「超AI時代の世界、日本、そして人間」(その1)
・AIに何を任せ、自分は何を学ぶのか ~落合陽一さんのお話と寺子屋塾のセルフラーニング~
・落合陽一『マタギドライヴとは』(その1)知能が無料になる世界と、新しい自然
・落合陽一『マタギドライヴとは』(その2)作るから選ぶへ——身体と感覚の復権
・落合陽一『マタギドライヴとは』(その3)問題解決から価値発見へ——探索する生き方
・落合陽一『マタギドライヴとは』(その4)AIで能力を広げ、現実世界で嗅覚を磨く
・落合陽一『マタギドライヴとは』(その5)中年の生き方と、祭りから生まれる意味
10/29からは、彼がこの本について語っている
PIVOTチャンネルにアップされた
YouTube動画2本を文字起こしして、
テキストを5回にわたりご紹介してきました。
【徹底解説:マタギドライヴ(落合陽一)】自然とは何か?/知能はほぼゼロ価値に/能力の再分配/AIには難しいこと/ラブ上等的な世界/仕事の変化/人を集める技術、ものを作る技術/問題解決より価値発見
2026.9.20アップロード
【AI時代を中年はどう生きるか:落合陽一】雑多な行動力/AI適応している人は2割/生産性200倍/デジタル中毒の罠/AIと資本主義/専制主義の次は革命/祭りの復権/ギャンブルと宗教の拡大/猿と人間
2026.9.21アップロード
本日(その6)として投稿する文字起こしテキストは
昨日投稿記事の続きで、
2本目の動画の22分43秒から最後までです。
(文字起こし・ここから)
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マタギとノマドは、何が違うのか
佐々木:マタギとノマドは、違うんですか?
落合:ノマド、遊牧民も、この本の中では結構、キーワードとして出てくるんですけど。昔、ナム・ジュン・パイクが「定在する遊牧民」という言葉を使っていて。人間が持っていた芸術は、ソフトウェアの芸術だった、と。メディアアーティスト、ビデオアーティストのナムジュン・パイクが書いていた。
絵や彫刻のような、持ち運べない芸術ではなくて、ダンスや歌、詩など、頭に入れて持ち運べる芸術が、人間の古典的な芸術で。壁画を描いたり、彫刻を作ったりするような、持ち運べない芸術は、定住してから始まったんだ、という説ですね。もちろん、狩猟採集民や、移動する人たちも、土器などをちゃんと作るんですけど。ただ、移動するときには割っちゃったりするんですよ。普通にバーンと。

「次に、また作るからいいか」と。それを繰り返している。じゃあ、我々は今、どうなっているかと言ったら、ソフトウェアの芸術が出てきたから、定在しているけど、遊牧民のような人たちが増えていく。それを「ステーショナリー・ノマド」と言ったんですけど。今のノマドというのは、この「定在する遊牧民」に近いと、僕は思っていて。
ソフトウェアで仕事をしているから、どこでも働けます、とか。そういう感じじゃないですか。実体のないものをよく扱っているので、どこに行ってもテレカンで入れるし、持ち運べるものだけで仕事ができます、という考え方は、あると思うんですけど。それは、マタギ的な、農耕と狩猟採集の関係とは、また、ちょっと違うと思っているんですね。
佐々木:概念が違うんですか?
落合:概念が、ちょっと違う気がするな。
佐々木:マタギは、別に定住しているわけですもんね。
落合:定住しています。
佐々木:その中で、いろいろ試すわけですもんね。そして、自分の所属する場所や、コミュニティのようなものもありますよね。
落合:場所、コミュニティ、宗教、テロワール、土地がありますね。
宗教、推し活、ナショナリズム
佐々木:今、宗教という話が出ましたけど、宗教は、やはり、もっと盛り上がるんですかね。
落合:宗教は盛り上がりますね。
佐々木:まさしく、意味の最たるものじゃないですか。
落合:ほぼほぼ、宗教化すると思いますけどね。
佐々木:みんな、何らかの宗教に。無意識なり、信仰なり。朝井リョウさんが『イン・ザ・メガチャーチ』で描いたように。
落合:『イン・ザ・メガチャーチ』なり。
佐々木:そこに意味を求めるわけですね。
落合:祭りによって、意味を与えられるので。
佐々木:推し活ビジネスも、もっと来ますね。
落合:全然、余裕ですよ。予測市場と同じぐらい来ますよ。
佐々木:それも来るわけか。
落合:YouTuberなんて、全員推しみたいなものですからね。
佐々木:これは、時代の必然として起きているんですね。
落合:必然ですね。狩猟採集性と似ていますね。
佐々木:ナショナリズムは、どうなるんですかね。
落合:ナショナリズムは難しいですね。ナショナリズムを政治の帰結して捉えるのなら、推し活のひとつとして捉えられるかもしれないですけど。何をどう捉えるかによって、多分、違うと思うんですけど。ナショナリズムの復権は、なくはないでしょうね。
佐々木:どちらも来るか。ナショナリズムも、ある種の宗教ではありますよね。
落合:はい。宗教性が高いので。
佐々木:それで、また、テロのようなことも。
落合:テロも、全然。テロは、よく起きる。
佐々木:いろいろな意味で、社会の安定性は下がりそうですね。
落合:安定性は下がります。道具の即効化と言ったように、人間が特殊な技能を得るために、1つのところにとどまって何かをやる時間が、ものすごく短くなるので。行動したら、できちゃうから。
佐々木:人の運動量が増える、ということですか?
落合:運動量は増えると思います。
佐々木:移動も増えるんですかね。
落合:移動は分からないですけど、知的な運動量や、何らかのアクションを取ることが簡単になっちゃうので。知能が遍在化するとは、そういうことですもんね。
猿の毛づくろいと人間のおしゃべり
佐々木:家庭は、どうなんですかね。
落合:家庭か。難しいな。どうなるんでしょうね。家庭については、『マタギドライヴ』では、あまり考えたことがなかったんだけど。人がどう時間を過ごすかは、常に多様になってしまうので。多様化はすると思いますけどね。
佐々木:でも、1人だと寂しいじゃないですか。
落合:でも、世の中には無限に道具がありますよ。
佐々木:しかも、推し活もありますしね。
落合:最後に、この話をしようかと思っていたんですが。近ごろ僕は、ずっと猿を見ていて。猿の毛づくろいが、人間のおしゃべりだと、よく言う先生がいるんですけど。「あれは、おしゃべりしているのと一緒なんだ」と。そう考えたときに、じゃあ、俺たちは今、何とおしゃべりをしているかと言ったら、機械とおしゃべりをしているんですよ。

佐々木:そればかりですよね。
落合:人間と人間がおしゃべりしていたなら、まだよかったんですけど。あれが機械とおしゃべりするようになったので、僕らは、もう、本能的なところまで機械と合体してしまっているし。言語を発明して、おしゃべりという形でやってきたことを、人間以外の記号の中に埋め込んでしまったので。
佐々木:特に、仕事場や、引退したあとのご老人なども、機械とずっと対話していたり、ゲームをしたり、YouTubeを見たり。そういう人が多いですよね。
落合:機械と対話していますね。毛づくろいは、機械との間で完結しているので。
佐々木:しかも、それで、別に不幸せなわけでもないですもんね。機械と話すことを「自然」と受け止める
落合:機械を自然と見るか、自然と見ないかで、これは変わるわけですね。それを自然と見れば、「別に幸せじゃない?」とか。
佐々木:そっか、そっか。
落合:今は過渡期だから、我々は、機械と話しているのを不自然だと思っているけど、機械と話すことは自然だと思います。
佐々木:デジタルネイチャーですもんね。
落合:はい。
佐々木:人間は、機械と話しながら、それが普通になりながら、死んでいくんだ。
落合:そう。記号論は、自然に回収されたので。
佐々木:そこにロボットも絡んできて、ロボットが1人で暮らしているっていうのが、普通にあり得る世界になりつつありますね。でも、その意味でも、やっぱり健康が大事ですね。
落合:健康は大事です。
佐々木:機械と話していても、健康ならいいですけど、痛みが出たり、病気になったりした瞬間に、いきなりフィジカルな世界になって。そこは、人間がいないと助けてもらえないじゃないですか。
落合:確かに。それも大切なんですけど。最近、僕は、体に不調があったら、一瞬でAIが気づいてくれるので。日々の体調を、AIと一緒に見ていく
佐々木:どうやったら気づいてくれるんですか? 何か、つけているんですか?
落合:もちろん、Apple Watchはつけているし、そのデータは、いつも見ているじゃないですか。「最近、眠りが浅いですね。体重もちょっと減っているので、働きすぎだと思います。カレンダーを見ると……」とか言われて、「ああ、はい」と。例えば、体にちょっとおできができると、「それは帯状疱疹の疑いがあるから、今すぐ皮膚科に行け」と言われて。行ったら、本当に帯状疱疹だったんですよ。
佐々木:へぇ〜
落合:毎日、AIに観測されているので、割と健康で。
佐々木:なぜ、おできまで分かるんですか? AIが、カメラで撮っているんですか?
落合:いや、僕が普通に、「あばら骨の辺りが、ちょっとかゆい気がするんだよね」と。「どんな感じですか?」と聞かれて、答えると、「生活のパターンを見ると、こうなので、病院に行きましょう」と言われて。「抗ウイルス薬を72時間以内に服用してください」と言われて、病院に行ったら、お医者さんに「はい」と言われて。
佐々木:AIを活用しておけば、そこも予防できる、ということですね。健康リスクも。
落合:本当にそうですね。
佐々木:でも、誰でも、いつかは何か起きるじゃないですか。
落合:毎朝、AIに「今日は、どうかね」と。「今日も忙しそうな1日ですね。毎日ですけどね。でも、体重は、こんな感じでいいんじゃないですか。BMIも悪くないです」みたいなことを、毎朝、僕はなぜか風呂場の中でAIに言われます。
佐々木:そういうものもあるんですね。それは、いいですね。機械と、そうやって戯れることで。
落合:機械と戯れることで、昔の人が朝日を浴びて、「今日も健康だ」と言っていたように、デジタルネイチャーの側が、「こいつは今日も健康である」と、ちゃんと教えてくれる。

コンピューターに寄り添って生き、寄り添って死ぬ
佐々木:今、落合さんが最先端でやっていることも、あと2、3年したら標準装備されて、普通の人でもできるようになるわけですよね。
落合:普通です、はい。
佐々木:そうなったら、そうなるのか。
落合:そう生きない人も、いっぱいいそうですけどね。そんなことは、分かり切ったことじゃないですか。コンピューターを使って、自分の管理ができるようになったら、今まで困ってきたことも、そんなに困らなくなるのに、とか思うけど。みんな、そこまでコンピューターに任せたくない、という旧世代の人たちは、大変そうだな、と。
佐々木:コンピューターと寄り添って生きて、寄り添って死んでいくと。
落合:寄り添って生き、寄り添って死ぬ。
佐々木:そして、死んだあともデータが残れば、「死の終焉」でしたっけ、そちらに近づいていくと。
落合:最近、自分のLLMを学習させて、やっと6月ぐらいかな、いい感じのものができたんですよ。結構、時間がかかった。100日ぐらい、トレーニングさせていたんですけど。本当に、落合っぽいことをしゃべるので。「プロンプトチューニングとは、やっぱり一線を画しているな」と思って。
佐々木:そういうことですね。
土地と一体化して生の実感を取り戻す
佐々木:分かりました。これからの世界が見えてきて、やっぱりマタギドライヴは大事ですね。
落合:『マタギドライヴ』は、大切だと思います。
佐々木:実際に、本当に狩猟をするのも、いいんですかね。
落合:狩猟も、はやっていると思います。
佐々木:やる人が増えていますよね。
落合:はい。もう、そうでないと、生の実感を感じられないのか。もしくは、1つのテロワールや土地と一体化して考える、ということを捉えないと、この現代社会の構造に適応できないのか、知りませんけど。
佐々木:分かりました。今日は、生きるヒントを、いろいろいただいたということで。落合さんのお話も聞きながら、中年の危機もね。
落合:もう、中年の危機になっている人は、全員『マタギドライヴ』を買えばいいんですよ(笑)。40代以上の人が全員、買えば大丈夫。
佐々木:結構、分厚いので、読むのは大変そうです。
落合:520ページですよ。
佐々木:520ページ!
落合:「何なんだ、この本!」と思って。
佐々木:これからの、生きるバイブルになると。
落合:だと、いいんだけどね。
佐々木:ということで、今日、興味を持たれた方は、買っていただければと思います。落合さん、今日は、ありがとうございました。
落合:ありがとうございました。
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(文字起こし・ここまで)
締め括りとなる、今日紹介した箇所では、
マタギとノマドの違いから、宗教や推し活、
人と機械の関係、健康管理、そして
デジタルネイチャーと生きる未来へと続きました。
冒頭で紹介されていたビデオアーティスト
ナム・ジュン・パイクさんについては、
いま落合さんがされているような仕事を
半世紀以上前の1960年代に開始した
メディアアーティストの草分け的人物。
「今日の音楽シリーズ」を投稿していた2025年、
パイクさんの誕生日7/20に
紹介する記事を投稿しました。
・ナム・ジュン・パイク「ロボット家族」(今日の音楽・その201)
これで2本とも動画の文字起こしが
すべて終了したので、
明日はわたしのコメントを書く予定です。(^^)/


