寺子屋塾

落合陽一『マタギドライヴとは』(その2)作るから選ぶへ——身体と感覚の復権

お問い合わせはこちら

落合陽一『マタギドライヴとは』(その2)作るから選ぶへ——身体と感覚の復権

落合陽一『マタギドライヴとは』(その2)作るから選ぶへ——身体と感覚の復権

2026/10/30

昨日投稿した記事の続きを。


10/21からメディアアーティスト・落合陽一さんの

著書や動画を紹介しながら

記事を書いてきました。

 

昨日10/29からは、落合さんの一番新しい著書で、

9/23に上梓されたばかりの

『マタギドライヴ 計算機自然の辺縁における脱人間知性的文明論』
について語られている動画を

文字起こししています。

 

ただ、事前情報なしに

昨日の記事をいきなり読まれても

「マタギドライヴとは何か」というテーマに

理解が及ばない可能性が高いので、

未読記事がある方は

本日分の記事を読まれる前に

以下を確認されることをお奨めします。

 

・『猫でもわかる生成AI ~落合陽一に100のプロンプトを入力してみた~』を読んでみて
・落合陽一「超AI時代の世界、日本、そして人間」(その1)

・落合陽一「超AI時代の世界、日本、そして人間」(その2)

・落合陽一「超AI時代の世界、日本、そして人間」(その3)

・落合陽一「超AI時代の世界、日本、そして人間」(その4)

・落合陽一「超AI時代の世界、日本、そして人間」(その5)

・AIに何を任せ、自分は何を学ぶのか ~落合陽一さんのお話と寺子屋塾のセルフラーニング~

・落合陽一さんの著書、動画の紹介

・落合陽一『マタギドライヴとは』(その1)知能が無料になる世界と、新しい自然

 

 

昨日から文字起こしを開始した動画は

2026.9.20にPIVOTのチャンネルで

アップロードされた以下のもの。

 

【徹底解説:マタギドライヴ(落合陽一)】自然とは何か?/知能はほぼゼロ価値に/能力の再分配/AIには難しいこと/ラブ上等的な世界/仕事の変化/人を集める技術、ものを作る技術/問題解決より価値発見

 

今日は、文字起こしテキストの2回目で

上の動画12分00秒から22分52秒あたりまでを、

インタビュアーはおなじみ佐々木紀彦さん。

 

(文字起こし・ここから)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

道具を使って作る時代から自律生成されたものを選ぶ時代へ

佐々木:マタギ的な人、マタギドライヴの行動は、例えば、日常生活や仕事場で言うと、どういう行動ですか?


落合:これはですね、昔は、産業革命以後、もしくは、つい最近までは……。2026年中に、あらゆるものはAIで書けるようになると言っていて、書けるようになっている気がしますけど。これぐらいパラダイムが変わってくると、何が変化するか。人間は道具を使って、自然を加工したり、制作したりすることで、人工物を生み出してきた。それを、かれこれ300万年ぐらい前からやっているわけですよ。

 

石器を作り、作ったものを使って。ただ、今はパラダイムが変わって、人間が機械と共同して作るところから、自律生成されたものを人が選ぶ、あるいはディレクションする、ということに変わってきてしまって。道具そのものが人間の側にないので、観察したり、選択したり、意味を付与したりするのが、人間の立ち位置になっている。

 

これは変な感じなんですけど、多分、もう元には戻っていかないので。人間は、「これは意味があることなのかな」と考えて、意味を付与したりする。それは、人によって全然違う宗教体系だと思うんですけど。人によっては、「インフルエンサーが言っていたから」という意味付与かもしれないし、「美術史の中で美しいから」かもしれない。

 

道具の性能がある程度、一律化したら、もうブランドで選ぶしかなくなっちゃうじゃないですか。ブランドで選ぶことも、何らかの意味や選択によって選んでいたりするので。そういうふうに道具を使うほうに変わっていく。会社の中で、例えば「パワポの資料を作って」と言っても、誰に頼んでも一緒なんですよ、多分。


佐々木:うん、うん。


落合:だけど、観察や意味付与ができる人に頼むのならいいけど、そうではない人に頼む意味は、多分、なくなっちゃうじゃないですか。そういったことを究極的に考えてみると、「ものづくりというか、道具の使い方が変わってきたんだな、知的社会において」というのが一番重要で。


環境側から制作物が立ち現れてくるので、人間は、観察したり、文脈化したり、解釈したりする仕事ばかりやっている。制作は人間から環境側に分散してしまうので、これを「中年の危機」だと思っている人もいると思いますけど。


佐々木:そうすると、哲学や人文科学など、そういうものばかりになっていくんですか?


落合:哲学や人文科学という意味付与が好きな人はね。


佐々木:それも、ちょっと古いフレームかもしれない。


落合:そうではなかったら、『ラブ上等』が好きなんじゃないですか。


佐々木:『ラブ上等』か。より感覚的なものになるんですか?

 

 

AIには難しい身体や直感のはたらき

落合:これは結構、ポイントだと思うんですけど、感覚的なもののほうが、人間は時間をかけて作ってきたわけですよね。例えば、「モラベックのパラドックス」というものがあるんですけど。これ、よく言うんですが、ハンス・モラベックが1988年かな、本に書いているんですけど。

 

人間が今、難しいと思っている、記号操作だとか。つまり、コンピューターで検索したり、最適化したり、記号処理をしたり、言語を生成したり、哲学をやったりすることです。ああいうことは、有史以来数えても、デカルトから数えても、600年ぐらいしかやっていなくて。ほかのことは、30億年ぐらいかけてやってきたじゃないですか。食べ物を食べるとか、直感でいいか悪いかが分かるとか。
 

だって、鳩ポッポだってご飯を食べているんですよ。我々がご飯を食べるほうが難しいというか、長い時間をかけているので。コンピューターは、いつまでたってもご飯を食べないし、直感でものを選ぶことも、結構まだ難しい。もちろん、入力すれば、選んだようには見える。でも、人間が獲得してきた、依然として難しい身体能力や、触覚・器用さや、直感で何かヒュッといくようなものを扱うことは、結構、難しいですよね。これは、進化としてそうなので。


身体を進化させてきて、今、この記号操作に至った我々は、記号操作のほうが人間の本質だと思うようになって、「ホモ・サピエンス」とかいうことになっちゃったんじゃないですか。でも、どこも賢くない。道具のほうが賢くなった。じゃあ、我々は何だったんだっけ、と言ったら、「ああ、それはそうだね。身体や宴会や祭りをやっていた人間性に戻っちゃったね」というところが、多分、結構、重要なポイントかなと思う。


佐々木:今、『ラブ上等』という話が出てきましたけど、より本能むき出しになって、恋愛したり、けんかしたりする。ちょっと原始化するようなものですか?


落合:そういう島も元気だと思うんですけど。でも、意味付与ばかりやっている島も元気だと思いますよ。アートをやったりとか。


佐々木:確かにね。アーティスト的なものもあったり、本能的なものもあったり。スポーツもあったり、


落合:スポーツもあったり、恋愛もあったり、学問を批評している人たちもいたり、和歌をやっていたり。あと、SNS上でバッジを付け直して遊んでいる人もいるかもしれないじゃないですか。「お金持ちです」というバッジを付けたり、「株をやっています」というバッジを付けたり。実にくだらないバッジを付けまくって、意味がないことをし続ける…ですけど、本質的には、どれも意味がないから。そういう社会構造になったときに、人間の側で、そのバッジを付ける意味は、ほぼなくなってしまうので。


佐々木:政治なども、そうでしょうしね。


落合:はい。政治も、バッジを付けるのは大人気ですね。


佐々木:そうしたら、平安時代みたいな感じですか?


落合:そうですね、多分。


佐々木:それは、そんなに悪くないというか。


落合:悪くはないですね。悪くないと思う人にとっては。


佐々木:そういう中で、『マタギドライヴ』としてのメッセージとしては、「もっと直感や哲学、本能を生かしていきなさいよ」ということなんですか?

 

 

作り手と受け手の境界が、曖昧になる

落合:単純化すれば、めちゃくちゃ簡単で。よく、この話をするんですが。デジタル発酵してきたものがあって、デジタル蒸留されたものもあって、計算機自然になっていく。人間は環境とどう生きるか、あるいは、ともに味わうといった、人間同士の関係性を生成するところに時間を使う、ということがあります。

 

そのうえで、今、何が壊れてきたかと言ったら、この「考える文明」のほうが壊れてきたので。近代が感覚から撤退して、思考をどう取り出してくるか。それを誰が考えて、誰が所有して、誰が責任を取るのか。そういう話は、主体と客体を分けるじゃないですか。この主体と客体を分けること自体が、そもそも、あまり成立し得なくなってきたので。

 

食べる側も、出す側も、同じ卓を囲んでいるという考え方で、「味わう」を中心にしたら、主体と客体は分離されないですよね。料理人が料理を出すときに、料理人も味わっているし、作る人も、味わうことによって共有するじゃないですか。作っている人も自分で鑑賞しているし、逆に言うと、鑑賞している人も一緒に作っている。その状態になったら、主体と客体は変わらなくなっちゃう。例えば、AITuberがいるじゃないですか。VTuberのAI版。

 

佐々木:はい。

 

落合:AITuberに入力しているのは誰かと言ったら、お客さんですよね。作り手は、お客さんと一緒に、AITuberがどう変化するかを見ているんですよね。ちょっと味付けはすると思いますけど、機械の能力のほうから言えば、ラーメンにこしょうを振りかけているぐらいのものなんですよ。でも、ラーメンを作っているのは誰かと言ったら、聞いている人ですよね。

 

今までだったら、クリエイターが全部、頑張ってやったものを、お客さんが受け取るから、主体と客体の間に明確な差があった。それが、主体と客体の間に、ほとんど差がない時代になったときに、じゃあ、何が残るのかと言ったら、「テイストが残るよね」という話じゃないですか。

 


文脈を失わない「蒸留」とは何か

落合:そこで、「じゃあ、どんなテイストを残せばいいのか」というのは、もう1つ、結構、重要だと思うんですけど。僕はよく、「テロワールを失わない蒸留とは何なのか」という話をしていて。抽象化したときに、その土地や文脈性を失わないように意味を抽出しないと、コンテンツに意味がなくなっちゃうというか。

 

ものすごく楽にコンテンツが作れたり、楽に工学ができたり、楽に発明が生まれたりする時代に、その発明が生まれたとか、テクノロジーが損益分岐点を超えたとか、そういう一時性だけではない、固有の何か。人によっては、それをブランドに求め、人によっては歴史に求め、人によっては作り手や土壌に求め、人によっては過激さに求める。

 

「殴り合いをするコンテンツがいっぱいできたから、それでいい」と思う人もいるし。だって、ロボット同士が対戦している100メートル走とかを見ていると、人によっては「早え〜」と思っている人もいれば、技術の粋について、うんちくを語りながら見ている人もいるじゃないですか。

 

そういったものが、自動で作られるようになってきたときに、我々のほうをどう見るのかを考えないとね、というのが、メッセージとして重要なところで。それが身体経験なのか、文体なのか、気候なのか。そういうテロワールは、ちゃんと考えないとね、ということが大切です。ユーザーが作っているかと言われたら、ユーザーも作っているし、醸し手も作っているし、利き酒師もいる、みたいな感じで。


あらゆるものが、人間の手の中では動かなくなってきた世界で、制作物や発明、文化として共有されているものを、どう考えるのか。
そういうことを考えないとね、と。そうやってさまよって、7年ぐらいたって、「ああ、でも、これは発酵だな」「発酵と蒸留のメタファーだな」とか。そういうことを、いっぱい考え尽くした本でございます。


 

AIにデータを与える人がお金を払って使う構造

佐々木:例えば、仕事はどう変わるんですか?よく言われる、「ホワイトカラーは、あまりいらなくなる」とか。それは、本当にそうなるんですか?

 

落合:はい。これで重要なのは、やっぱり、どこまでの、どこの虚構を、みんなが信じられるかだと思っていて。例えば、お客さんからのデータで強化学習して、それをお客さんに提供し直すことによって、お金を払ってもらっている。そういうことを、「変だな」と思うことはありませんか?

 

もっと分かりやすく言うと、AIを使って何かをやっているけど、そのAIのデータをトレーニングしているのは誰ですか、と言ったら、業者でもあるし、正解データを常に与え続けている我々でもある。

 

佐々木:確かに、我々がいろいろ拠出していますもんね。

 

落合:はい。そうしたときに、一番高いお金を払って使わせてもらっているのは変な話で。我々のデータを、相手が使わせてもらっているわけじゃないですか。ということは、中央にAIを置いたとき、主体と客体は、本当は分かれていないはずなんですよ。しかも、そのトレーニングが自動化されているところだったら、「計算機資源を持っているからできるのか」という話で、それは資本があればできる、と。


でも、この「資本があればできる」ということも、オープンなモデルが出てくると、この圧力って、コストが下がっていくから、実は、もう資本の問題でもなくなっていくんですよね。そうしたときに、便利なものは環境側にあって、僕らが合意形成して、「一応、向こうから情報やサービスをもらっている気がするから、お金を払いますよ」と言うかといったら、この虚構を信じられる人は、そんなに多くはないだろうなと思うんですよね、最近。

 

佐々木:うん、うん。

 

 

会社で働く理由も、問い直される

落合:例えば、会社の中で、社長がAIを使って会社を回しているだけで、APIを回しているだけだったら、社員はその会社で働きたいかと言ったら、別に働きたくなくないですかね。

 

佐々木:つまらないですよね。

 

落合:つまらないよね。でも、AI会社で、社員1人のユニコーンみたいなものが増えているじゃないですか。社員1人のAIユニコーン企業に、労働力として加入した人は、「それなら、同じことを自分でやればいいかな」と思ったりするわけですよね。そうすると、一番起こってくるのは、そういった虚構が崩れてくることなので。自分で出ていったり、自分でやっちゃったり。

 

逆に、新たな虚構として信じてもらうこともあるし、もうちょっと宗教性が強くなったり。人によって反応はさまざまだと思うんですけど。でも、そんなふうに、抜本的に道具と人の関係が変わると、結構、大きいところまで変わっちゃうでしょう、というのが……

 

佐々木:どんな日常になっていくんでしょうね。(22分52秒あたりまで)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(文字起こし・ここまで)

 

今日紹介した箇所では、
道具の使い方の変化から、身体性や直感、

ものを作る人と受け取る人の関係変化についてが

話題になっていましたね。

 

動画内で紹介されている画像も

盛りだくさんな内容なので、

ゆっくり確認ください。

 

これで2/3まで終了しました。

この続きはまた明日に!(^^)/

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

●2021.9.1~2024.12.31記事タイトル一覧は

 こちらの記事(旧ブログ)からどうぞ

 2025年に投稿した365記事はすべて

 今日の音楽シリーズで12/31に全リストを掲載

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
☆寺子屋塾に関連するイベントのご案内

 11/1(日) 13:30~17:30 寺子屋デイ2026②
 11/8(日) 13:30~16:30
  『レゾナント・コミュニケーション』読書会 #3

 11/22(日) 10:30~ 易経入門講座
      14:00~ 易経準中級講座 第18回

 11/23(月・祝) 10:30~18:30 寺子屋Notion
      未来デザイン考程ワンデイセミナー

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

◎らくだメソッド無料体験学習(1週間)

 詳細についてはこちらの記事をどうぞ!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

当店でご利用いただける電子決済のご案内

下記よりお選びいただけます。