落合陽一『マタギドライヴとは』(その4)AIで能力を広げ、現実世界で嗅覚を磨く
2026/11/01
昨日投稿した記事の続きで、
マタギドライヴ文字起こし記事の4回目を。
10/21から寺子屋塾ブログでは、
メディアアーティスト・落合陽一さんの
著書や動画を紹介しながら記事を書いています。
上の画像は、落合陽一さんが
9/23に上梓されたばかりの一番新しい著書
『マタギドライヴ 計算機自然の辺縁における脱人間知性的文明論』
10/29からは、彼がこの本について語っている
PIVOTチャンネルに2026.9.20にアップされた
次のYouTube動画を文字起こしして、
テキストを3回に分けてご紹介してきました。
【徹底解説:マタギドライヴ(落合陽一)】自然とは何か?/知能はほぼゼロ価値に/能力の再分配/AIには難しいこと/ラブ上等的な世界/仕事の変化/人を集める技術、ものを作る技術/問題解決より価値発見
この記事から初めてアクセスされた方など、
以下の記事に未読分がある方は、
本日分の文字起こしテキストを読まれる前に
確認されることをお奨めします。
・『猫でもわかる生成AI ~落合陽一に100のプロンプトを入力してみた~』を読んでみて
・落合陽一「超AI時代の世界、日本、そして人間」(その1)
・AIに何を任せ、自分は何を学ぶのか ~落合陽一さんのお話と寺子屋塾のセルフラーニング~
・落合陽一『マタギドライヴとは』(その1)知能が無料になる世界と、新しい自然
・落合陽一『マタギドライヴとは』(その2)作るから選ぶへ——身体と感覚の復権
・落合陽一『マタギドライヴとは』(その3)問題解決から価値発見へ——探索する生き方
本日投稿する文字起こしテキストは、
1本目動画の続きにあたる
2026.9.21にアップされた2本目動画の
冒頭から12分07秒あたりまで、
インタビュアーは佐々木紀彦さんです。
【AI時代を中年はどう生きるか:落合陽一】雑多な行動力/AI適応している人は2割/生産性200倍/デジタル中毒の罠/AIと資本主義/専制主義の次は革命/祭りの復権/ギャンブルと宗教の拡大/猿と人間
(文字起こし・ここから)
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雑多な経験から価値あるものを取り出す
佐々木:雑多なものを多く自分に取り込み、雑多に行動して、いろいろなものを経験していく。そういう行動力、雑多な行動力のようなものが大事になってくるんですか?
落合:雑多な味を味わえるか。あとは、その雑多な味の中から、よく「蒸留」と言いますけど、価値のあるものを引っ張ってこられるか、ということじゃないですか。
佐々木:そういうことか。同じような人とばかり集まったり、同じような場所ばかり行ったりしていたら、そこは弱まりますよね。
落合:そうですね。
佐々木:冒険し続ける、ということですか?
落合:冒険し続ける、ということですね。探索、探究行動を取り続けないと、意味がなくなってしまう。でも、そこまで意味を求め続ける人類も、希少だと思うんですけど。
佐々木:マタギは、いろいろなところを、ずっと歩いているんですか?
落合:そう。マタギは山をずっと歩いていますね。
佐々木:それで、雑多な感覚を得て。
落合:あと、山と一体化していくというのもあると思いますけど。
佐々木:そっか、そっか。
落合:新しい自然と一体化してきて、その中で起こる些細な変化を見逃さない、ということだと思うんですけど。
佐々木:そこの嗅覚、感覚的なものは、AIでも絶対に代替できない、ということですよね?
落合:AIは予測できるので、代替できるんですけど。新しい価値を発見してから、代替されるまでの速度の分しか、常に世の中には価値がない。みんなが「次にバズるネタは?」とAIに聞いて、バズらせている社会では、バズるようになってからバズらなくなるまでの、このカーブが、ものすごく急なので。「そんなことをしても、あまり意味がない」みたいな。
佐々木:じゃあ、何が起きるか分からない、カオス的な状況に、常に行ったほうがいいんですか?
落合:人によっては、ですね。もちろん、マタギ性がある世界と、マタギ性がない世界がある。プラットフォームがあって、安定生産されていて、その中で機械の言うとおりに働くのも、楽しいですよね。
佐々木:それも好みによって、ということですね。
落合:好みによって、はい。
自動化された世界の中でどう暮らすのか
佐々木:それは、機械に働かされるようになるわけですよね。
落合:そうですね。例えば、勝手にコンピューターで金融商品の売買ができる装置があって、それをずっと回しているだけの人生になれ、と言われたら。「お金がもらえるなら、回しているだけでもいいな」と思うんだけど、その「お金がもらえるなら」と思う人は、お金を使うことより、お金を増やすことのほうに興味があるので、そんなに使わないじゃないですか。
そうなってくると、生きながらにして、自動化の中でただ暮らす、みたいな世界になっているので。そこには、あまり意味を求めにくいですよね。
佐々木:自動化の中で、単にパーツとして動くような人のほうが、多数派というか、大半になっちゃいますよね。
落合:大半にはなりますね、多分。
佐々木:それで、前から話に出ている、ベーシックインカム的な世界で。
落合:そう。ベーシックインカム的な世界で暮らしていく。VC or BCの世界。
佐々木:その世界は、幸せなんですかね。それすらも考えなくなる、ということか。
落合:幸せかどうか、少なくとも考えなくなっていく層は出てきますね。
佐々木:何割ぐらいですか?
落合:分からないですけど、感覚では8割。
佐々木:8割か。
落合:今のAI社会に、ちゃんと適応した人は、感覚では2割ぐらいじゃないですかね。
佐々木:どうなっていたら、適応できているんですか?
昨日より今日の自分にできることが増えている
落合:これは、そうだな。「毎日、自分の能力が、環境によってめっちゃ増えていっている」と思えていますか、皆さん、ということ。
佐々木:さっき落合さんと話していたら、「最近、健康になっている。それはAIのおかげ」と言っていましたけど、そういうことですよね。
落合:はい。毎日、健康になっているし、毎日、何かを発見することが楽しい。1日1日が、いつもより充実していて、かつ、できる技術的な能力が日々、線形に上がっている。「昨日より、今の自分のほうが、やれることが多いので楽しい」と、毎日、みんながなっているか、という。
佐々木:落合さんは、そうなっているんですね。
落合:はい。
佐々木:そんなふうになっている人は、ほとんどいないんじゃないですか。
落合:そうなんですよ。
佐々木:私も全然、そんな感じはない。
落合:もうね、毎日、すごく感じるんですけど。朝起きると、「昨日の俺より、ちょっとだけ、できることが増えている」「今日は、これをやってみよう」と、毎朝、思うし。「明日には、これができるようになるだろうな」と。高度経済成長の頃とか、「明日は今よりよくなる」と思っている国は、元気じゃないですか。当たり前のことなんですけど。でも今、人々を見ていると、「明日は今よりよくなる」と毎日、思えている人と、思えていない人がいるんですよ、コミュニティの中で。これは大きな差ですよね。
佐々木:2割もいないでしょう。
落合:2割もいないかな。
佐々木:0.01ぐらいかもしれないですよ。
落合:本当ですか。まあ、そういう感じの差があります、多分。自然化して、AIが勝手に進歩していく環境で、その進歩をキャッチアップしている人は、「毎日、できることが増えたり、知れることが増えたりして、楽しい」という。
佐々木:そういうふうになります?
落合:僕は、毎日なっているからね。
動画生成から立体物を作るためのデータへ
佐々木:例えば、最近、何がありました? 「これができて楽しいな」「新しくできるようになったな」ということ。
落合:最近、新しくできるようになったのは、ローカル生成の動画AIが、めっちゃ元気になって。本当に指示出しをしなくても、毎日、新しい動画を作ってくれるんですよ。これさえあれば、3Dを起こすときに必要な合成データを、2次元で大量に作れるので、「これは、データ不足の問題が結構、解決するぞ」と。楽しいから、家でGPUを回しまくっていたら、GPUが火を噴いて、大変なことになったんですけど。そんな感じで、1週間に1個、1日に1個ぐらいのペースで、できることが増えますね。
佐々木:なぜ、そんなに動画を作らなければいけないんですか?
落合:動画を配信するのではなくて、立体物を作るための動画を作りたいわけですよ。今、立体物の画像を認識するには、動画像から学習された3次元データが必要なんですけど。コンピューターの中から特定の動画像が出てくるようになったら、現実世界で画像を撮らなくていいじゃないですか。そうすると、今までつながっていなかった、2次元平面から3次元の立体を、ちゃんとイメージできるようになって、もうちょっとよくなる。僕だって、3Dプリンターで作りたいものを、写真を撮るだけで作れるじゃない。
佐々木:落合さんは、例えば5年前に比べると、生産性はどれぐらい上がっているんですか?
落合:いい質問ですね。この前ここに来たときには40倍と言ったんですけど。プログラマーとしての僕は、恐らく200倍ぐらいです。
佐々木:200倍ぐらい。
能力の増強をどこで実感するのか
佐々木:今、「プログラマーとしての自分は」と言ったじゃないですか。プログラマー以外の人も、AIによる能力の増強を、そんなに感じるのかなと思って。
落合:でも、パワポ職人とかは、すごく感じているんじゃないですか?
佐々木:すぐにできるようにはなりますけどね。
落合:でも、パワポ職人は、別にいらなくなる、という話なんですけど。パワポを求めている人が、自分で作るだけなので。誰かに委託しなくなる。
佐々木:逆に、パワポも似たようなものばかりになって、みんな飽きてきているじゃないですか。
落合:でも、逆に言うと、みんな最初から似たようなものでよかったんだよ、というところと。
佐々木:確かにね。
落合:何か、懐かしい、人間らしいパワポを読みたいと思うこともあるじゃないですか。
佐々木:プログラマー以外で、そこまでの能力の増強を感じる人はいるのかな、と。
落合:データを扱っている人は、多分、能力の増強を感じるんじゃないですかね。
佐々木:コンピューター中心に生きているかどうか、ということですね。
落合:コンピューター中心に生きているかどうかですね。
佐々木:人間の側をコンピューターに寄せてきた、この50年だったから。スマホという形で、みんな使っているわけですけど、それによって、能力の増強というほどは感じなくないですか?
落合:そうですか。この前、家の外にいて、地震があった2分後ぐらいに、家の全部のカメラから家の中を見られるようにするシステムを一瞬で構築できたときに、「俺は昔より、明らかに優秀なプログラマーになった」と思って。
佐々木:それは、成長しましたね。
落合:はい。あと、部屋が暑い、ということがあって。そのとき、僕は家の外にいて、猫が心配だったので。家中にあるコンピューターの[温度データの]加重平均を取って、「大体、どの部屋が何度」というのを出したら、温度計とぴったり合った。それが、わずか5分ぐらいで作れるのは、すごいなと思ったので。
あと、展覧会などもやっているじゃないですか。今も、ちょっとやっていたんですけど。展覧会で、「来場者は何人ぐらいかな」という予測曲線を出すのが、シュッとできる。例えば、この会場にいる人が、コンピューターの前を通過すると、カメラに映るじゃないですか。それで、今日、何人ぐらいになるかを、予想でぴったり当てられるとかね。
道具を使って何かのデータを予測することや、それを仕事にしていることは、人類の仕事の中でも、結構、多いと思うんですけど。それに対して、絶大な機械の力が手に入ったら、割といろいろなことができるじゃないですか。
デジタルと物理、その両方にいること
佐々木:しかも落合さんは、プログラマーでもあり、ものづくりもするし、アートも、お茶も。
落合:研究者もしているのでね。ものも作る。
佐々木:必ずしも、デジタル空間だけにいるわけではないですもんね。その両方をやることの大事さも、あるんですか?
落合:物理空間のものをやっていないと、多分、結構、厳しい気がしますね。物理空間のものをやっていれば、データ空間から来るものを受け入れられる。受け入れるというか、それが強力な道具になっているので。
佐々木:そこのバランス、両方にいることが大事なんですね。
落合:両方にいるのは大切ですよね。データだけだと、やっぱり結構、病むような気がするな。
佐々木:AIに使われちゃっている人、スマホなどの中毒になっている人は、さっきのプラットフォームの中で、デジタル空間ばかりにいるから。そうなると、マタギ的な嗅覚が衰えてきますよね。
落合:衰えますね。でも、衰えるというか、そこでマタギドライヴを考えると、平均的に得られるコストに対して、ちょっと飛び出したものが、ならされるまでの速度がものすごく速いので。常に、くだらないアフィリエイト記事を書いている人みたいになっちゃう、ということです。
佐々木:そういうことですね。
落合:ちょっとよく分からない動画とか、あるじゃないですか。ちょっと気持ちいいだけの、擬音がグチャッとしてるだけの動画を、ただ作っている。一応、収益性があるから、それでいいと考えるのは、別に悪くはないんだけど。そこに、果たして何らかの意味はあったのか、という、意味付与の仕事からすると、ちょっと弱いな、ということは多いじゃない?
佐々木:物理空間や自然空間で、結構、多くの時間を過ごして、そこで嗅覚を磨くのは、いいことなんですね。
落合:まあ、いいんじゃないですかね。
マタギドライヴと資本主義の関係
佐々木:シリコンバレーなどは、やっぱりいいんですか? プログラミングをやりつつ、自然がいっぱいあって。
落合:シリコンバレーも、周りには自然がいっぱいありますね。ただ、そろそろ、いわゆる資本主義型のシリコンバレー社会に、嫌気が差している人も多いんじゃないですかね。
佐々木:もう、いっぱいいますよね。この、マタギドライヴ中心の社会は、資本主義とは、どういう相性なんですか?
落合:まだまだ、資本主義が突き抜けて、ならされていく工程の1つだと思うんですよ。今は完全に、過渡期だと思っていて。資本主義は、明らかに虚構じゃないですか。「会社は株主のものだ」というのは、ただのコンセンサスなので、明らかに虚構なわけで。ビットコインも、明らかに虚構だし、王権神授説だって、明らかに虚構ですよね。
どの虚構を信じる人が何割いるか、という問題で、この世界は、多分、決まっていると思うんだけど。ただ、いわゆるマルキシスト、共産主義者が言うように、世界を急激に、ドラスティックに変化させるのは、かなり厳しいと思うので。でも、コンセンサスが取れなくなっていくことは、結構、あるなと思っていて。なので、血気盛んな国だと、結構、多くの転覆や社会不安は増えると思いますけどね。
佐々木:コンセンサスが取れないという意味で言うと、いろいろなところで、やっぱり民主主義は専制主義に後退するんですか?企業も今、専制的なところが増えていますけど。
落合:非常に専制主義的ですね。(12分07秒あたりまで)
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(文字起こし・ここまで)
落合さんの言われる〝マタギ性〟というのが
具体的にどういうことを指しているのかが
だいぶ明らかになってきましたね。
雑多な体験を積み重ねる中から、
価値のあるものを発見できること、
日々冒険し続け、探究行動を取り続けることで
新しい自然と一体化してきて、
その中で起こる些細な変化を見逃さないような
感性が育ってくるのでしょう。
結局、AIがどれだけ進化しても、
そうした人間の嗅覚、感覚的なものまでを
代替するのは難しいような気がします。
あと、デジタル空間と物理空間と
両方をやることの大事さというところも、
印象にのこりました。
2本目の動画の文字起こしテキストの続きは
また明日に!(^^)/


