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荘子『内篇』より「胡蝶の夢」(今日の名言・その77)

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荘子『内篇』より「胡蝶の夢」(今日の名言・その77)

荘子『内篇』より「胡蝶の夢」(今日の名言・その77)

2024/03/25

 

昔者、荘周、夢為胡蝶、栩栩然胡蝶也、自喩適志興、不知周也、俄然覚、則蘧蘧然周也、不知、周之夢為胡蝶興、胡蝶之夢為周興、周興胡蝶、則必有分矣、此之謂物化
 
[口語訳文]
 いつだったか、
 わたし荘周は夢で胡蝶になった。
 ひらひらと舞う胡蝶だった。
 心ゆくまで空に遊んで、
 もはや荘周であることなど忘れはてていた。
 ところが、ふと目覚めてみれば、
 まぎれもなく人間荘周である。
 はて荘周が夢で胡蝶となったのであろうか。
 それとも、
 胡蝶が夢で荘周となったのであろうか。 

 
『荘子・内篇』「斉物論篇」より「胡蝶の夢」

 

 

この寺子屋塾ブログでは、

昨日まで老子を取りあげてきたんですが、

今日は「老荘思想」という風に、

老子と同じ道家(道教)として

並列的に語られることの多い荘子です。

 

3/15に投稿した記事で、

東京国立市にある桐朋高校学校の卒業式で読まれた

答辞を紹介したんですが、

その答辞の最後に、

『荘子・内篇』冒頭「逍遙遊」にある、

数千里の翼をもつといわれる古代中国の

伝説の鳥・大鵬の話が登場していましたね。

 

大鵬の話は内篇の冒頭に置かれていて、

「鵬が南の海に渡る時は、

 まず海面を三千里にわたって滑走し、

 羽ばたいてつむじ風を起こして

 上昇すること九万里、

 そして六ヶ月飛び続けてはじめて一呼吸する」

などとあって、

そのスケールの大きさにインパクトがありますから、

数多い荘子の寓話のなかでも

比較的知られている方だと言ってよいでしょう。

 

それでも、大鵬あるいは鵬といって、

すぐ荘子がおもい浮かぶ人は多くはないようで、

一番有名なのはおそらく

冒頭挙げた「胡蝶の夢」の寓話ではないかと。

 

さて、それで

昨日まで3回にわたって記事に書いてきた

老子の深遠な思想の中核を、

四字熟語を使ってひとことで表すなら、

それを〝無為自然〟とすることに

異を唱える人はおそらく多くないとおもいます。

 

それで、老子のこの〝無為自然〟のように、

荘子の思想の中核をひとことで表現するなら、

どんな言葉が適切でしょうか。

 

荘子内篇の最初に置かれている

鵬の話から始まる「逍遙遊」とは、

何物にもとらわれない自由気ままな境地に遊ぶ

という意味の言葉です。

 

わたしたちがなぜ自由に生きられず、

自由を感じられないかと問えば、

「こうしなくてはいけない」

「ああでなければ」という枠をつくり、

「あいつとオレは違う」という比較から

良し悪しの評価が生まれ、

その「違い」が競争や差別、戦いにまで

発展していってしまうわけですね。

 

つまり、この世にあるあらゆる物は

モトをたどればすべて同じ物であって、

それが絶え間ない変化を

繰り返しているだけなのにもかかわらず、

この「違っている」という認識こそが

人間が自由になれないモトなんだと。

 

たとえば、荘子・斉物論篇には

次のような一節があります。

「世の人は、もともと一つであるはずのものを

 可と不可に分け、可である物を可とし、

 不可であるものを不可としている。

 だが、それはちょうど道路が

 人の通行によってできあがるように、

 世間の人々がそういっているからという理由で、

 習慣的にそのやり方を認めているにすぎない」

 

そうした現象面の違いは、

変化によって生じた相対的な区別にすぎなくて、

そもそもその両者に本質的違いなどなく、

結局のところ、すべての物は同じであると。

 

だから、人間がそうした相対的区別を超越し

絶対的自由を実現するために

荘子がとった戦略は、

すべての物は同じであるという認識を持つ

つまり〝万物斉同〟となります。

 

ただ、「万物斉同」とか「絶対的自由」といった、

目に見えない形而上的な話は、

抽象的すぎてわかりにくいので、

それを伝えるために荘周は、

たくさんの寓話を語るわけですね。

 

もちろん、わたしたちの日常的な感覚では、

「蝶」と「人間」は別モノとしかおもえませんし、

「自分は、荘子になった夢を見ている蝶なのか、

蝶になった夢を見ている荘子なのかが

わからなくなってしまいました」という

ちょっと聞いただけでは非常に奇抜に感じられる

この「胡蝶の夢」の寓話は、

「いやいや、蝶も人間もモトをたどれば

同じだったんだよ」と

荘子の思想〝万物斉同〟を

わかりやすく示したものと言ってよいでしょう。

 

また、2015年5月に

NHK-Eテレ『100分de名著』で

荘子が取り上げられたことがありました。

 

旧blog「往来物手習い」に、その年の暮れ

荘子についての記事を書いたことがあるので

次の記事も併せてご覧ください。

受け身こそ究極の主体性

 

 

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 ※(その61)の最後にその60以前の記事一覧を載せています

 

 

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●2021.9.1~2023.12.31記事タイトル一覧は

 こちらの記事(旧ブログ)からどうぞ

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