TBSドラマ『逃げ恥』名セリフ&名場面集(その67)
2026/04/17
2/10からこのブログでは、
TBSドラマ『逃げ恥』名セリフ&名場面集を
お届けしているんですが、
1話につき1シーンずつ
順番に追いかける形で紹介していて、
この記事で67回めとなりました。
昨日投稿した記事で六巡目が終了したので、
今日からまた第1話に戻るんですが、
第1話の中盤部28分40秒過ぎ、
平匡の会社スリーアイシステムでの
平匡と沼田の会話を。
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〔スリーアイシステム・オフィスにて〕
平匡:〔PCのプログラム画面を見たまま手が止まっている〕
沼田:〔ぬっと後ろから平匡を覗き込んで〕これ、いらないんじゃない?
平匡:いえ。ここは、こことつながるので。
沼田:ボケてるようで、しっかりしてんな。
平匡:ボケてません!
沼田:20分に一度、何かに思いを馳せるように手が止まっている。
平匡:......
沼田:たまたま見てただけだから。偶然たまたま…
平匡:......
沼田:この素晴らしき人生の先輩に話してみないか?
平匡:話すことなんて何も……
沼田:俺はインフラエンジニアだ。サーバーに異変がないか、監視するのと同様に、津崎君の少しの異変も見過ごせない。これはもう職業病だ。このままじゃ、俺は心配のあまり、24時間態勢で津崎君のことを舐めるように見つめ続けるかもしれな……
平匡:〔沼田の話を遮るように〕ぼくではなく…知人の話ですが…
沼田:うんっ。
平匡:〔沼田を見ながら声を潜めて〕ならいっそ、結婚しませんか。
沼田:......〔驚いて絶句!]
平匡:あ、沼田さんに言ってません!
沼田:〔微笑みながら〕わかってるよ~
平匡:「ならいっそ、結婚しませんか」という言葉には、どんな意味があると思いますか?
沼田:......プロポーズのようにも聞こえるが、「ならいっそ」というフレーズには、「ホントはそうでもないんだけどぉ~仕方なくぅ~」といったような、Bマイナーなニュアンスが、とれるね。
平匡:今のは誰のマネですか?
沼田:俺の心のなかのアバズレ。
平匡:いや、そういうタイプじゃないんだよな~
沼田:……〔微笑む〕
平匡:知人の話ですっ!
















※TVドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』第1話(2016年の本放送時)より
COMMENT:このシーンは、第1話の前半、スリーアイシステムのオフィスで、平匡の手がふっと止まる時間が何度も映ります。プログラム画面は開いたまま、作業が進んでいるようでいて進んでいない。周囲はいつも通りの職場のざわめきなのに、本人の中だけ別の処理が走っている感じがするんですよね。そこへ沼田が、いかにも沼田らしく距離を詰めてくる。「これ、いらないんじゃない?」とプログラム・コードの話から入りつつ、いつの間にか平匡の異変監視へと話題が移っていく。からかっているようで、実はちゃんと観察している。職業病だと言いつつ、心配を正当化している。でも、そうした沼田なりのコミュニケーション・スタイルも、平匡にとっては助け舟になっているのかもしれません。
そして平匡は、「ぼくではなく…知人の話ですが…」と沼田の言葉を遮るように言います。この逃げ方は、単なる照れ隠しに見えて、平匡らしい実務的なやり方ですね。自分の話として言語化すれば、当事者としての感情が先走ってしまいかねない。だから、「知人」という仮の容器に入れて表現することで、冷静に他者に向けて提示できるようになるわけで。こうすることで、恋の告白というより状況報告の書式に近くなる。平匡は、胸の内をそのまま表出せずに、客観的に話せる形へ整えて差し出しているんですね。
その最たるものが、「ならいっそ、結婚しませんか」という言葉。プロポーズのようにも聞こえて、ここで大事なのは、「結婚」より前に付いている「ならいっそ」でしょう。ここには、ロマン一直線というよりも暫定対処の匂いがします。つまり、正面から「好きです」とは言えない。でも、このままでは状況が詰んでしまうのは分かっているから、〝最適解っぽいもの〟として結婚という手段を口にする姿勢。気持ちが言葉にならないのに、言葉が先に手順として出てしまう———こういう平匡のロジックが、感情を運んでしまっているわけです。
だから、沼田の返しが効いてくる。「プロポーズのようにも聞こえるが、『ならいっそ』にはBマイナーなニュアンスがとれるね。」という分析。なんと、心理学や道徳でなく〝音楽〟なんですよね。メジャーじゃない。明るい決意じゃないと。「ホントはそうでもないんだけどぉ〜仕方なくぅ〜」という、言い訳混じりの暗さがある。でも、ただ暗いだけでもない。Bマイナーって、湿っぽさの中にちゃんと色気が残る。恋愛のセリフを〝響き〟として読むこの高度さに、沼田という人物の器の大きさを感じます。真顔で相談を受けつつ、冗談めいた軽口で空気をほどき、しかも言葉の中に潜んだ調性まで拾い上げるところに、ドラマ『逃げ恥』の独自性があるような気がします。。
つまりこの場面は、プロポーズの名言というより、人には表だって口外しにくい本音が、「暫定対処」という形式を借りることで、ようやく口から出てくる瞬間として置かれている。そしてそれを、沼田がBマイナーだと名づけることで、平匡自身にとっても「自分の言葉がどういう響きを持ってしまったか」を初めて外側から聞かされる体験にもなったわけで。恋は必ずしも熱量だけで進むのでなく、言葉のトーンや言い訳の混ざり方まで含めて進んでいく———このような地味でありつつ精密な描き方が、職場の何気ない会話の中にコミカルに紛れ込んでいるところが、なんとも『逃げ恥』らしいなとおもいました。

この名セリフ&名場面集で紹介しているセリフは、2020年に放映された『逃げ恥・ムズキュン特別編』を土台に、野木亜紀子さんの『逃げ恥シナリオブック』での記述を参考にしています。なぜTVドラマ『逃げ恥』のシーンを毎日投稿している理由については、この連投記事の初回として書いた(その1)の記事のコメントをお読みください。
ちなみに、4/10に投稿した(その60)の記事には、それまでに投稿した全記事のINDEXと、逃げ恥関連の投稿記事リンク集を載せました。未読記事がある方は是非そちらから参照を。
明日の記事は第2話からお届けします。
ではまた!(^^)/
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