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TBSドラマ『逃げ恥』名セリフ&名場面集(その68)

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TBSドラマ『逃げ恥』名セリフ&名場面集(その68)

TBSドラマ『逃げ恥』名セリフ&名場面集(その68)

2026/04/18

2/10からこのブログでは、

TBSドラマ『逃げ恥』名セリフ&名場面集を

お届けしているんですが、

1話につき1シーンずつ

順番に追いかける形で紹介していて、

この記事で68回めとなりました。

 

一昨日投稿した記事で六巡目が終了し

昨日から七巡目がスタートしているんですが、

今日は第2話タイトルバックの直前で

序盤6分過ぎたところ

津崎家と森山家、両家初顔合わせ会場での

みくりと平匡のやりとりを。

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〔ホテルのロビーにて〕
平匡:ちがや?
みくり:わたしの兄の名前です。小1の時、まだぎりぎり20代だった百合ちゃんに向かって「おばさんは一生結婚できないと思う」そう言い放った兄です。
平匡:……
みくり:それより呼び方!
平匡:盲点でした。
みくり:練習しましょ。これからは名前で!「みくり」。
平匡:みく…………さん付けでもいいですか?
みくり:了解ですっ。
平匡:みくりさん。
みくり:平匡さん。
平匡&みくり:……〔しばし、間〕
みくり:何か、照れますねっ。
平匡:〔眼鏡を上げ直しながら〕気のせいです。
みくり:……ですね。平匡さん。
平匡:みくりさん。
みくり:〔手を振りながら〕平匡さ~ん。
平匡:みくりさ~ん。
津崎知佳:何しちょる?
〔平匡の両親・津崎宗八、知佳がいつの間にかすぐそばに〕

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

TVドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』第2話より

COMMENT:第2話の序盤、両家の顔合わせという〝社会の場〟なのに、みくりと平匡が急に小学生みたいな遊びを始める。「みくりさん」「平匡さん」「……」「照れますねっ」。一見すると、ただのラブコメ的な〝照れ〟の時間です。でも、この場面が妙に記憶に残るのは、イチャつきの皮をかぶったまま、二人がかなり硬い確認作業をしているからなんじゃないかとおもいます。要するに「これから二人は、どんな距離でやり取りするのか」を、その場で互いに手探りせざるをえない状況に追い込まれてしまい、そのぎこちなさに笑えるんですね。


発端は「ちがや?」という、平匡の不用意な固有名詞へのアクセスでした。「ちがや」はみくりの兄の名前で、しかも百合ちゃんへの暴言の記憶までセットで付帯している。両家初顔合わせの場に投げるにはあまりに生々しすぎて、話が広がれば場が凍りかねない。その瞬間に平匡が「……」となるのも、ツッコミ待ちというより「踏み込みすぎたかも」という後悔を処理する時間のようにも見えます。そこでみくりは「それより呼び方!」と切り替える。過去の痛い話を深掘りせず、だからといって無かったことにもせず、二人で扱える共同作業へ移る。場を壊さず収束させるだけでなく、未来に向かうために「呼称」が選ばれている感じがしました。


みくりの言葉「これからは名前で!『みくり』」は、ロマンチックな要求にも見えるけれど、規格変更の提案と言ったところでしょう。呼び方は、相手へのラベル付けというより距離の取り方なので。苗字でなく名前で呼ぶというのは「あなたはこの距離まで入ってきていい」と相手に権限を渡すことでもあるし、「わたしはこの距離であなたに入っていく」と自分が宣言することでもある。だからこのやり取りは、相手の呼び名を決めているようでいて、関係のアクセス権限を相互に設定する話と言っていいとおもいます。


そこに平匡が「みく……さん付けでもいいですか?」と返すのが、いかにも平匡らしいですね。彼は「盲点でした」と言いながらも、更新そのものには同意しているわけで、距離を縮めること自体を拒否しているわけではありません。ただ、急な更新によって自分に誤作動が起きることに恐怖心を感じたのか、段階的に更新するための折衷案として「名前+さん」を提案します。

 

これって、恋愛的には煮え切らない態度にも見えるけれど、関わり方の設計として見るなら誠実さでもあるんですよね。今、何をどこまで許可したのかを、ちゃんと確認してから次に進む。曖昧なまま突っ込まない、より安全な運用を提案したつもりでしょう。そこでみくりも自分の気持ちを押し切らず、「了解ですっ」と受け止める。相手の設定を尊重した上で回線はつなぐ。二人の間に今のところの〝仕様〟がひとまず定まったような感触がありました。


「みくりさん」「平匡さん」そして「……〔しばし、間〕」。ここで生まれた〝沈黙〟からは、更新後の手触りに身体が追いついていないようにも見えます。みくりの「照れますねっ」に対し平匡が「気のせいです」と返す硬さも、けっして冷たさからではなく、自分の感情を確定ログとして残さないための防御反応かもしれません。照れを照れと認めた瞬間に、そこから先が制御不能になるのが怖いのでしょう。だから〝気のせい〟にして、確定しない。確定させないことで、まだ後戻りできる余地を残す。平匡はたぶん、親密さそのものより、親密さが暴走して自分の手を離れることを怖がっている。


その後の「平匡さ~ん/みくりさ~ん」は、二人だけの小さな現実(独自ルール)の試運転ぶりに、ドラマを観ているわたしたちには笑えます。だからこそ、突如現れる母親からの「何しちょる?」が効くんですね。両家顔合わせという場は、そもそも社会の場。二人だけで行っているつもりだった仕様の更新が、突然社会の視線にさらされるサプライズ。親の前、家族の前、という外からの目がある場所で、二人は私的ルールの試運転をやっているという。そうした無防備さがコメディになりつつ、同時に、これから二人が越えていく壁の予告にもなっているわけですね。


とにかくこの場面が上手いのは、呼び方の練習という「どうでもいい遊び」の形を取りながら、関係性の設計と運用、さらに外部割り込みまでを、1分に満たない短いやり取りで全部やってしまうところでしょう。甘さと硬さ、照れと手続きが同居したまま、恋愛の「胸キュン」と関係の「更新」を同時平行的にやってしまうという二重構造は、『逃げ恥』でよく見かけるシーンではあります。だから見ている側も、笑っていいのか、見守っていいのか、ほんの一瞬迷うわけですが、ここではそうした迷いの時間も含めて、〝沈黙〟が何よりも効いているように感じました。



この名セリフ&名場面集で紹介しているセリフは、2020年に放映された『逃げ恥・ムズキュン特別編』を土台に、野木亜紀子さんの『逃げ恥シナリオブック』での記述を参考にしています。なぜTVドラマ『逃げ恥』のシーンを毎日投稿しているのか、その理由については、この連投記事の初回として書いた(その1)の記事のコメントをお読みください。

ちなみに、4/10に投稿した(その60)の記事には、それまでに投稿した全記事のINDEXと、逃げ恥関連の投稿記事リンク集を載せました。未読記事がある方は是非そちらから参照を。

 

明日の記事は第3話のシーンをお届けします。
ではまた!(^^)/

 

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