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パスツール「微生物は何もしない」(今日の名言・その42)

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パスツール「微生物は何もしない」(今日の名言・その42)

パスツール「微生物は何もしない」(今日の名言・その42)

2022/11/01

 

 ベシャンは正しかった。

 微生物は何もしない。
 宿主の状態がすべてだ。


※ルイ・パスツール(1822~1895・フランスの生化学者、細菌学者)が臨終のときに言い残したと伝えられていることば

 

 

月曜はいつも「今日の名言シリーズ」を

投稿しているんですが、

昨日は月の末日定例で

1か月間のふりかえりと記事タイトル一覧を

投稿したこともあり、

今日は火曜定例の生活デザイン・ヘルスの話題を

月曜定例の「今日の名言」スタイルで

投稿することにしました。

 

取りあげたのは、ロベルト・コッホと共に

「近代細菌学の開祖」とされる

ルイ・パスツール臨終のことばです。

 

彼は「微生物が病気を引き起こす」という考え方を

提唱しましたが、自らの死に臨んで、

自分の発表した仮説の誤りを

ようやく認める気持ちになったのでしょう。

 

でも、この言葉は彼のあまりに偉大な業績に

かき消されてしまい、

今日では、知る人はほとんどいません。

 

偉人として讃えられているパスツールですが、

その人となりを詳しく調べていくと、

国会議員の選挙に二度立候補した政治的な人間で、

とても狭く偏った政治思想の持ち主だったようです。

 

結局、彼は選挙には二度とも落選し

国会議員にはなれなかったたものの、

労働者をまともな人間とは見ておらず、

労働者階級が権利を主張するから

社会が混乱していると考えていたとのこと。

 

つまり、パスツールは労働者と細菌を同一視し、

全ての病気は細菌が起こしているのであるから、

細菌とは撲滅すべきものであり、

細菌を絶滅させれば人類は病気から解放されると

本気で信じていたらしく、

彼が作り上げた細菌学の基本的な考え方も

こうした政治思想が組み込まれていたわけです。

 

そしてそれ以降、彼の弟子たちを通じて、

「細菌=病原菌=人間の敵」という認識が

広まっていったんですが、

結局のところが弟子たちは、

パスツールが作り上げた理論体系を

純粋に科学的なものと信じてしまい、

そこにパスツール自身の政治思想や個人心情という

バイアスのもとに組み立てられていたことを見抜けず、

しかもこれが、西洋医学における

基本的な考え方になっていきました。
 

また、1988年になってようやく、

それまで封印されていた

パスツール自身の研究ノートが公開され、

発酵の研究では、師アントワーヌ・ベシャンの研究を

盗用してあたかも自分が発見したかのように

偽っていたことを始め、剽窃、虚言、詐欺の数々を

重ねていたことがわかり驚くばかりです。

この話は、2000年に訳書が出版された
『パストゥール―実験ノートと未公開の研究』

詳しく書かれているようですが、

こういう裏話の載っている本が広まると

いろいろ都合悪くなる人が少なくないようで

今では手に入りません。

 

一方で生物学の世界では、

腸管内や皮膚に常在菌が発見されるなど、

微生物と人間は持ちつ持たれつの関係で

助け合っていることがわかってきて、

20世紀初頭に大きく路線変更しました。

 

そして、今では人間だけでなく、

細菌と細菌以外の生物が共生関係にあることも

明らかになってきています。

 

わたしのような素人には、生物学と医学は、

近いところにあるように見えるんですが、

学問の世界はわたしにはよくわからない

難しい事情があるのか、あるいは

専門化が進みすぎて縦割りの関係にあるためか、

こうした生物学の知見をふまえ

医学に活かそうと考える医師たちは

現実にはごく少数のようで、

昨今の新型コロナウィルス騒動でも、

「ウィルスを殺すことが善だ」という考えが

まだまだ根強く生き残っていることが露呈しました。

 

『傷はぜったい消毒するな』の著者・夏井睦さんは、

これを「パスツールの亡霊」と言われていましたが、

パスツールの亡霊が消えてなくなる日が

いつかはやってくるのでしょうか。

 

夏井睦『傷はぜったい消毒するな』第6章を

 参考にしました
 

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