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インタビューゲームでなぜ人生が変わるのか(番外編4・中原淳&長岡健『ダイアローグ 対話する組織』)

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インタビューゲームでなぜ人生が変わるのか(番外編4・中原淳&長岡健『ダイアローグ 対話する組織』)

インタビューゲームでなぜ人生が変わるのか(番外編4・中原淳&長岡健『ダイアローグ 対話する組織』)

2023/05/13

5/7から書き始めた

インタビューゲームを淡々とやり続けると、

なぜ人生が大きく変わってしまうのかについて

考察しようという記事もこれで7回目になりました。

 

今日は番外編も4回となり、

ついに本篇よりも番外編の方が

多くなってしまいましたね〜。(^^;)

 

5/3の寺子屋デイで初めて

インタビューゲームを体験された方が、

詳しい体験記を書かれていましたので、

明日の投稿でそちらをご紹介することをもって

一区切りとしようと考えています。

 

今日の記事もあくまで補足で、
インタビューゲームでなぜ人生が変わるのか、
本篇3回分とこれまでの投稿を未読の方は、

まずは次の記事からどうぞ。

(その1)ジョハリの窓から

(その2)3つの幻想領域をふまえて

(その3)相互に相手の自由意志を尊重する

(番外編1)内田樹『先生はえらい』

(番外編2)二村ヒトシ『すべモテ』

(番外編3)平田オリザ『わかりあえないことから』

 

 

ところで、いまの世の中、聞く力、質問力、

対話といったコミュニケーション関連の本は

たくさん出版されています。

 

中村教室に置いてあるものだけでも、

並べてみるとこんな感じなんですが・・・

 

もちろん、1冊1冊すべてに個性があり、

どの本もそれなりに学べるところがあります。

 

でも、丁寧に編集されているかどうか、

情報の集約度はどうかなど細かく見ていくと、

自ずと人に勧められるものとそうでないものとに

どうしても分かれてしまうわけで。

 

番外編として書いてきた3つの記事は、

インタビューゲームのルール説明シートに載せた

推薦参考図書からセレクトしたものなので、

もちろん、わたしという人間のフィルターが

かかっていることを前提に

受け止めていただきたいのですが・・・

 

内田樹さんは、フランス現代思想が専門で武道家、

二村ヒトシさんは、AV映画監督で恋愛哲学家、

平田オリザさんは、劇作家で演出家ということで、

三人三様に専門性が異なり、

わたしなりに、一つのフィールドや切り口ばかりに

偏らないように配慮しているつもりです。

 

こんなふうに分野が異なる人が書かれた本を

読み比べてみることによって、

ひとつのテーマを

複数の視座から捉えることができますし、

より立体的に把握する可能性が高まるわけで。

 

 

さて、今日ご紹介する

『ダイアローグ 対話する組織』は、

2009年2月に出版された本で、

本書については、2015年11月という

中村教室を開いたばかりのタイミングで

旧ブログのこちらの記事

ご紹介したことがありました。

 

この本の著者のおひとり中原淳さんは、

本書を執筆された当時は、

東京大学の大学総合教育研究センターにおられ、

現在は立教大学の経営学部教授でご専門は教育学。

「大人の学びを科学する」をキャッチフレーズに、

企業や組織における学習、成長、

コミュニケーションのあり方について

研究されている方。

 

また、もうおひとりの著者・長岡健さんは、

執筆された当時は産業能率大学におられ、

現在は法政大学の経営学部教授で、

ご専門は組織社会学、経営学習論。

コミュニケーション論、学習論の視点から、

多様なステークホールダーが織りなす

関係の諸相を読み解き、

創造的な活動としての「学習」を

再構成していくことを研究されている方。

 

本書は、ビジネスの世界では何が起きているのかを

軸にしながらも、「働く大人たちの学びの場づくり」

というテーマにおけるダイアローグ

つまり、対話力の大事さについて書かれています。

 

ちょうどこの本が出版された2009年の頃は、

ファシリテーションについて学びたい

という講座の依頼をあちこちから戴くようになり、

そうした講座に参加された人々が

寺子屋塾の教室にも集まるようになってきて、

「働く大人たちの学びの場づくり」というテーマを

わたし自身が真剣に

考えざるを得なくなってきた時だったこともあり、

本書の出版は「渡りに船」という感じで

受け止めたことをおもいだします。

 

番外編その2でわたしは

人間のコミュニケーションについて

考えようとするときには、

結局のところ、その前提としている価値観や

世界観、目的などと無関係ではなく、

もちろん、インタビューゲームについても

例外ではないと書きました。

 

つまり、インタビューゲームがたとえ

どんなに優れたツールであったとしても、

そのツールだけあってもダメなんです。

 

この本から、「アンラーン」「サードプレイス」

という重要なキーワードを頂けたことで、

インタビューゲームというプログラムを

学習ツールの基本に据えて

どんな場づくりが可能なのかを考えたとき、

〝対話を通じた学びほぐしのサードプレイス〟という

明確な展望をイメージできたのでした。

 

以下は本書の図版より。

 

 

そして本書は、よくある共著のスタイル、

各章をそれぞれが分担するという形では

書かれていません。

 

つまり、本書が類似するテーマを扱った

他書と比べて際だって優れているように

わたしが感じた大きな理由は、

ダイアローグというタイトルが付された本書を

執筆されるプロセスそのものが、

まさにダイアローグ

中原さん、長岡さんという

異なるフィールドとテーマをお持ちのお二人が、

ていねいな対話を重ねることによって

生み出されたものだからでしょう。

 

本書には「インフォーマルで、パブリックな学び」が

積極的に行われている場を、人材育成をとりまく

環境の中に見出すことは困難です」とあり、

さらには「長期にわたる学習や仕事の経験から

構築されてきた思考形式や行動様式を

解きほぐすための処方箋は存在しません」とも

書かれています。

 

しかし、日本社会の現状がそうであれば

なおのこと、寺子屋塾のような

〝学びほぐしのサードプレイス〟の必要性が、

これからの時代、ますます大きくなっていく

可能性があるんじゃないかと

当時本書を読んだわたしはそのように

おもったものでした。

 

(引用ここから)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

・・・それでは、今日のビジネス環境のどこに、「インフォーマルで、パブリックな学び」は存在するのでしょうか。前節では、自分の成長を他者に語り、それをもとに他者から問いかけを得る中で振り返りを行う、新たな「学び」について考察しました。このような意味での「学び」が、学習者自身の自由意志で取り組み(=インフォーマル)、他者とのかかわりの中で体験(=パブリック)する学習活動に相当すると解釈できるでしょう。


しかし、残念なことに、「インフォーマルで、パブリックな学び」が積極的に行われている場を、人材育成をとりまく環境の中に見出すことは困難です。つまり、自由で心地良い他者との関係の中で進められる「対話」を通じ、仕事を成し遂げていく過程のさまざまな経験を振り返っていく「学びのサードプレイス」が今日の人材育成には欠如しているということです。


先に述べたように、長期にわたる学習や仕事の経験から構築されてきた思考形式や行動様式を解きほぐすための処方箋は存在しません。しかし、自分自身が埋め込まれた状況から一歩抜けだし、自分自身の経験を振り返る「学びのサードプレイス」をつくり出すことが、硬直化した私たちのマインドセットをときほぐしていく新たな一歩となるのではないでしょうか。そして、「学びのサードプレイス」で得るさまざまな経験を手掛かりに、私たち一人ひとりが主体的に考え続けることで、「対話」による新たな学びの姿は、徐々にではあっても、その鮮明さを増していくに違いありません。

 

中原淳・長岡健『ダイアローグ 対話する組織』第4章「対話」による新たな学び(P.207〜208)

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(引用ここまで)

 

また、以下中原さんの書かれているblog記事や

YouTube動画のなかから、

対話や(対話的な)話し合いというテーマに

直結しているもののうちから、

本書の執筆後、比較的最近に公開されたものを

選んでシェアしておきますので、

ぜひアクセスしてみてください。


【blog記事】
対話とは「意見をポットンと落とすこと」!? 2017.3
ロマンチックワード化する「対話」!? 2019.9
ニッポン社会に「対話」がさっぱり普及しないわけ!? 2021.2

対話とは「わたしたちに馴染みのない、めちゃくちゃ特異なコミュニケーション」である!? 2021.3

あなたのワークショップでは「なんでもいいから、対話してください」で対話を促そうとしていませんか? 2022.1

大学生が「対話」をファシリテートする授業 2022.12
「対話」をするなら「最初が肝心」!?  2023.2

あなたにとって「対話」はどのような「イメージ」ですか? 2023.3.

わたしが「対話」をファシリテーションするときに「もっとも大事にしていること」は何か? 2023.3.

 

【YouTube動画】

仲が良くても心理的安全性が低い残念な理由

【中原淳 立教大学経営学部教授】

『話し合いの作法』1/PHP研究所刊

 

“残念な話し合い”5つの病

【中原淳 立教大学経営学部教授】

『話し合いの作法』2/PHP研究所刊

 

 

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