TBSドラマ『逃げ恥』名セリフ&名場面集(二巡目・その7)
2026/08/20
昨日投稿した記事の続きで、
TBSドラマ『逃げ恥』名セリフ&名場面集
二巡目の7回目です。
本日紹介するシーンは
一巡目で投稿したこちらの記事のリライトですが、
第7話後半部の39分30秒を過ぎた辺りから、
百合のマンションでの
みくりと百合との会話です。
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〔百合のマンションにて〕
土屋百合:手はかかるけど、二人ともイイ子だな~って思っちゃった。そう思えてよかった。仕事ってさ~ 人と人との関わりだから。
森山みくり:関わり?
百合:結局そうなっちゃうんだよね。否が応でも。
みくり:わたしがしたい仕事って、そういうことかもしれない。大企業に勤めたいとかじゃなくて、狭い世界でもいいから、人とのつながりで成り立つ何か。
百合:ボランティア?
みくり:ううん、お金はほしい。お金って生活だし。でも稼げさえすればよいっていうビジネスライクなことよりも、好意を持って繋がっていたいなーっていう。
百合:それは大事!どんな仕事も、相手への感謝とリスペクト。





COMMENT:この百合のマンションの会話、一見すると「仕事観の雑談」なんですが、第1話〜第7話までの流れの中に置くと、みくりにとってはかなり重要な〝言い換え〟が起きている場面ではないかとおもいました。
ポイントは、みくりがさらっと言う「ううん、お金はほしい。お金って生活だし」です。ここ、普通なら「現実的でいい子」みたいな感想で終わりがちなんだけど、わたしはむしろ、みくりが仕事を〈二重価値〉で捉え直した瞬間のように感じました。つまり、仕事は生活のための対価(お金)でもあるし、同時に、人との関わりの質(好意・つながり・感謝)でもあるんだと。つまり、どちらか一方じゃなくて、両方を捨てていません。ここでみくりは、綺麗事に逃げず、でもビジネスライクに割り切りもしない、という位置に立とうとしているので。
これって第6話までのみくりの悩み———「わたしばっかり」「一方的な要求」「疲れた」———とも、ちゃんとつながっている気がします。みくりは、関係を壊さないために言葉で整え、手順を作って境界線を引いてきた。でも、それを続けていくと、いつのまにか自分の中に〝会計〟が立ち上がってしまう。つまり、与えた分、返ってきた分、わたしのほうが多い気がする分という、損得勘定の帳簿が勝手につき始める。すると、優しさが優しさのままでは置いておけなくなるんですよね。受け取ったはずのものまで、「だからわたしは返さなきゃ」みたいな債務の顔をし始めてしまう。
そこへ百合が投げるのが、「どんな仕事も、相手への感謝とリスペクト」という一言。これ、ただの〝いい話〟じゃないとおもいます。むしろ、会計の暴走を止めるための技術に近い。会計って本来、対等さを保つためのもののはずなのに、ひとたび動き出すと「俺ばっかり/わたしばっかり」に吸い込まれ、関係そのものを腐らせる力になってしまう。だからこそ百合は、会計より先に置くべきものがある。それが感謝とリスペクトなんだ、と言っているように聞こえるので。
みくりの「稼げさえすればよいっていうビジネスライクなことよりも、好意を持って繋がっていたいなーっていう」も、まさにそこですよね。ビジネスライクに割り切えろうとするなら、帳簿上はきれいに合うかもしれない。でもそれだと、みくりが求めている仕事の手触りにはなりません。逆に、好意だけで繋がろうとすると、今度は見返りの会計が始まって疲れてしまう。だからみくりは、「お金はほしい」と言いながら、「好意もほしい」と言う。そうした両立を、ここで初めて自分の言葉にしている。
そして、この会話が効いているのは、仕事の話をしながら、実はそのまま恋愛の話にもなっているところです。恋愛でも仕事でも、結局は人と人との関わりで、感謝とリスペクトがないと会計が暴走してしまう。逆に言えば、感謝とリスペクトがあると、会計が〝対等さ〟のために働きやすくなる。つまり、ここで百合がみくりに渡しているのは、「頑張りすぎた自分を責める前に、関係を支える土台を置き直そう」という別の地図なんじゃないかとおもいました。

この名セリフ&名場面集で紹介しているセリフは、2020年に放映された『逃げ恥・ムズキュン特別編』を土台に、野木亜紀子さんの『逃げ恥シナリオブック』での記述を参考にしています。こんな風にTVドラマ『逃げ恥』のシーンを毎日投稿することになった最初の動機については、一巡目の初回として書いた(その1)の記事のコメントをお読みください。5/20に投稿した1巡目の最終回(その100)には、記事内容を総括するコメント、全100回のINDEXつきリストと関連リンク集を載せました。
・TBSドラマ『逃げ恥』名セリフ&名場面集(その100・最終回)
また、当塾ではすべて関連し合っているという考え方を大切にしていますので、さらに詳しく知りたいという物好きなお方(笑)は、タグ「逃げ恥」を付している過去記事のみならず、他の記事を適宜アクセスください。アクセス数が最も多いカテゴリーは、今日の名言シリーズ(現在その130まで投稿)ですし、また、寺子屋塾のエッセンスをなるべく短いコトバで端的に知りたい方は、つぶやき考現学をご覧下さい。最近は、易経、論語、仏典などをひもといている古典研究関連カテゴリの記事もアクセスが増えてきています。
この連載記事は、『逃げ恥』第1話から第11話まで順番に紹介して一巡したらまた第1話に戻るというスタイルで投稿していくので、明日は第8話からとなります。
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