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理想と現実のギャップって本当に問題なんですか?

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理想と現実のギャップって本当に問題なんですか?

理想と現実のギャップって本当に問題なんですか?

2022/03/24

昨日の記事では、「そもそも問題って何?」という

つぶやき考現学をご紹介したところ、ある方から

「会社時代には、問題はあるべき姿との乖離、

という理解をしていました」

というコメントを頂戴しました。

 

わたしも進学塾で専任講師をしていた

30代の前半ぐらいまでは、

そのように考えていたとおもいます。

 

でも、昨日の記事で記したとおり、

その当時と比較して、いまのわたしは、

問題というものの捉え方自体が

かなり大きく変わってしまったお陰で、

悩み苦しむことはほとんど無くなってしまいました。

 

もちろん、かれこれ30年も前の話ですから、

変わって当然のことではあるし、

その要因はいろいろ考えられるんですが、

一番大きかったのは、

寺子屋塾を起業する直前に

未来デザイン考程を学べたことです。

 

それで、その未来デザイン考程には、

他の問題解決ツールにはあまり見られない

際だった特徴がいくつかあるんですが、

今日は、わたし自身も未来デザイン考程の

重要ポイントの一つと認識している、

問題についての捉え方について

すこし掘り下げて書いてみようかと。

 

「現実とあるべき姿の乖離が問題である」という

表現自体は、決して間違っている訳ではありませんし、

記述がちょっと大雑把なだけなので。

 

たとえば、ひとくちに問題といっても、

そのサイズというのも大小さまざま。

大きな問題もあれば、小さな問題もあり、

小さな問題にアプローチする場合であれば、

この定義で十分ということもあるでしょうから。

 

でも、会社をどう経営するかであったり、

一人の人間の人生設計というような、

大きなテーマについて考えようとするときには、

もうすこし解像度を上げるというか、

精度の高い分析や、時間的な経過も意識した上で、

しっかり手順を踏んで判断していくことが必要です。

 

まず何よりも、現実というのは、

目の前に展開しているリアルな実在物であるのに対し、

あるべき姿は、人間の頭の中にあるイメージにすぎず、

実在物ではありません。

 

また、リアルな現実は

時間の経過とともに当然変化していくわけですが、

頭の中にあるイメージはまた、

リアルな現実とは異なる時間軸をもっていると

意識しながら扱う必要があるでしょう。

 

少し前に、

「『個人幻想』『対幻想』『共同幻想』は次元が違う」

という話をこちらの記事に書いたんですが、

「現実」と「理想」というのも、同じように

この二つは次元が異なる概念といえるわけで。

 

厳密に言うと、永遠にその両者の乖離は埋まらないし、

理想が高ければ高いほど、ギャップも大きくなって

その埋まらない差に苦しむことになってしまいます。

 

試しに、「現実と理想のギャップ」でググってみると、

どうしたら問題解決できるかという記事が

たくさんヒットするんですが、

たとえば、こちらの記事には、

 

成功する人たちは、

理想と現実のギャップに直面した時、

「理想」を諦めるのではなく、

「現実」を変える努力をするのです。

「現実」を変えるには、逆境に負けず

努力し続けるしかありません。

それができた人たちだけが

「理想」にたどり着くのです。

 

という、もっともらしい文章が書かれていて、

おもわずそう信じてしまいそうになりますね。

 

でも、「成功」「逆境に負けない」「努力」といった

誰もが反対できないような美しい言葉に惑わされず、

そのまま鵜呑みにしないで

「いや待てよ、本当にそうかな?」と立ち止まり、

「現実と理想は次元が異なる」ことさえ考慮できれば、

書かれている内容が一面的な捉え方で、

けっしてそれがどんな場合においても

必ずしも真実とは言えない内容であることは、

容易に見抜けるんじゃないでしょうか。

 

 

さて、未来デザイン考程において、

問題をどう捉えているかというと、以下の通りです。

 

問題とは、現状の一部であり、考えられ得る

最善の将来像の実現を阻んでいる現象である。

 

つまり、現状は現状として把握した上で、

将来像は将来像として別箇に予測するという、

次元の異なる情報として扱いながら、

「現状」と「将来像」とのギャップではなく、

「現状で考えられ得る最善の将来像」と

「成り行き的将来像」とのギャップを意識した上で、

変えられうる現状の一部を問題と捉え、

大まかな方向性を定め、有効な具体的方策を探る

情報処理ステップ(これを考程と呼んでいます)を

踏むわけです。

 

いかがでしょう?

 

「現実とあるべき姿の乖離が問題である」という

考え方とどこが違うかわかりますか?

 

この文を読まれただけでピンと来る方は、

こちらの記事でも触れた「知的生産」というテーマで

きっと、自ら考えたり実践されたりした経験が

おありの方で、たぶん多くの方にとっては、

あまりピンと来ない内容ではないかと。

 

残念ながら、この辺りの話は、

実際に現場で体験を重ねた人でないと

なかなか伝わりにくいんですね。

 

こうした記事を書いているわたし自身も、

今にしておもえば、自分で起業する前に

未来デザイン考程を学んでおいて

本当によかったと考えていますが、

これがだれもがすぐに出会えるものではないような、

非常にオリジナリティの高いプログラムであって、

心の底から「なるほど!」と納得し、

その大きな価値を実感できるようになったのは、

起業後10年ぐらい経過してからでしたから。(^^;)

 

・・ということで、日頃から広く情報を捉えるように

心がけているつもりのわたしではあっても、

日頃から教材研究を

専門的にしているわけではありませんし、

単に了見が狭いということだけかもしれませんが、

未来デザイン考程の考え方と類似する発想や

親和性の高い問題解決プログラムに、

出会うことはなかなかありません。

 

1ヶ月ほど前に、エドガー・シャイン博士の

プロセス・コンサルテーションという考え方を

こちらの記事で紹介したことがあったんですが、

今日はそれとは違う、別の参考記事を

2つほどご紹介しましょう。

 

いつまで経っても埋まらない理想と現実の差

 

こちらは、木田圭一さんという

神戸でボイストレーニングをされている方の

blog記事なんですが、前記したような

「現実と理想は次元が異なる」といった考え方に近く、

「理想はどこまでいっても理想であって、

自分自身の到達点ではない」

「理想はモチベーションを保つために持っておき、

それになれるかどうかは置いておく。

そうすれば苦しまずに、継続して、楽しみながら

レベルアップしていける」という言い回しなど、

とても参考になります。

 

また、立教大学経営学部・中原淳教授のblog記事で、

1月に投稿されていた

課題解決で「どハマリ」する3つの失敗パターンとは何か?:課題とってつけ王子にご用心!

という記事には、

ひとはすぐに「現状」と「目標」の間を

埋めようとするけれど、

現実にそれを実行しようとすると易しくなく、

3つの失敗パターンを、矢印の数のたとえを用いて

とてもわかりやすく書かれています。

 

 

以上まとめると、

ひとは夢とか理想を想い描くことを

どうしても重要視しがちであるけれども、

たいていの場合、その夢や理想が

その人にとって真に妥当な内容であるかという

検証抜きにアプローチし始めてしまうことも手伝って、

現実を理想に近づけようとするアプローチは

たいてい、頭の中で想い描くようには進まず、

失敗に終わりがちです。

 

よって、夢や理想、目標を想い描くアプローチ

つまり、何かを身につけるために頑張るよりは、

夢や理想、目標をもつことはあっても、

それにはあまりとらわれず、

結果として何かが身につくことを

具体的に日々淡々と実行し、

自分にできることを一つずつ増やして行くことの方が

得策であり、現実的なのではないでしょうか。

 


※冒頭の図版は、この記事中でご紹介した

ボイストレーナー・木田圭一さんのblog記事

いつまで経っても埋まらない理想と現実の差より

拝借しました。<(_ _)>

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