「〝教えない〟性教育」考(その20)
2023/11/25
11/6より教えない性教育をテーマに
記事を書き始め、本日分が20回目となりました。
(その5)からは、
〝教えない性教育〟を実践しようとする際に
わたしが推薦するに値すると考える
参考図書などの情報素材を紹介しています。
未読記事がある方は、この記事の末尾に付けた
過去記事や参考記事のリストを
適宜参照の上で以下の記事をご覧ください。
感染症専門医の岩田健太郎さんが書かれた
『感染症医が教える性の話』を紹介し
岩田さんと同じ西洋医学の医師で
解剖学、発生学が専門の
三木成夫さんの『内臓とこころ』を紹介しました。
引用した箇所の後に書いたことなんですが、
結局、人間という生物を外側から観察すると、
植物由来の「内臓系」と
動物由来の「体壁系」の2つの系統があり、
その二者のハイブリッド的存在であると
言ってよいでしょう。
そして、この内臓系と体壁系のうち
どちらがより重要であるのかを、
進化論的に考えてゆくとするなら、
動物よりも植物の方がより昔から存在し、
環境の突発的な変化により、
自分の力で自分の生命を維持するための養分を
得ることができなくなった植物が
それを外部から得るために動く必要が生じ、
手足や筋肉、感覚器官、神経、脳といった
体壁系を発達させていったと見做すと、
内臓系の方が主で体壁系が従という
関係が見えてきます。
そして、その内臓系の役割を中心に据えて
内臓感覚、内臓波動というところから、
人間の身体を見ていくとするなら、
イノチを維持するための「食」
イノチを繋いでいくための「性」という
2つの系統があるコトが見えてくるわけですね。
この、三木成夫さんが唱えたことは
人間の性ということ、性教育というテーマを
考えようとするときには、本当に大切な観点なので、
今日の記事ではそのことをもう一度
復習しておきたいとおもいました。
昨日の記事など、このblogで引用した箇所は
『内臓とこころ』第Ⅱ章だけですから、
それだけを読まれてもこの書物の全体像を掴むのは
難しいかもしれませんので。
この『内臓とこころ』は
一人で読もうとするとなかなか骨の折れる本なので
ぜひこの本を入手されて手元に置き、
この本をテキストにした勉強会なり
読書会なりに参加されるとよいでしょうし、
じっくりゆっくり読み進めながら
内容の理解にチャレンジしていただけたらと。
それで、2020年7月にリリースされたblog記事で、
この書物の全体像をつかむヒントになるような
内容のものを発見したので、
前後編に分けて記されたとても長い記事なんですが
まずはそれをご紹介!
・解剖学者・三木成夫の「内臓とこころ」に読む、思考偏重な時代を乗り越えるための道標(前編)〜内臓感覚とリズム、季節を感じる心、そして自然(じねん)〜
・解剖学者・三木成夫の「内臓とこころ」に読む、思考偏重な時代を乗り越えるための道標(後編)〜内臓感覚とリズム、季節を感じる心、そして自然(じねん)〜
この記事を書かれた方が
前編の後半で指摘されているんですが
・現代は、外部から止めどなく流れてくる情報や物理的環境に刺激反応し、体壁系(動物器官)の反応に振り回されてしまいやすい状況の中で、どうしても頭で考えて処理しようとする「思考偏重」の社会になってしまっている
・生命の根幹の営みを支えている内臓(植物器官)の声はその背後に隠されてないがしろにされてしまってきた結果、精神疾患やストレスをはじめ様々な症状が社会の様々なところで現れてきている
・天体運行や生命のリズムを最も純粋なかたちで感受していたはらわた(内臓)が、頭や思考から切り離されてきてしまったことは、生命や生態系との大きなつながりの感覚を失わせ、気候変動の根っこにある人間界に閉じた経済・社会システムを加速させてきてしまった
・自然や地球環境を客観的に対象化しようとする(第三人称としてのエコ)のではなく、関係性の中で内から観察・存在し、相互作用し続ける動的な関わり方、社会やビジネスのつくり方、新たな自然科学の歩みが必要になっている
というのは、まさにその通りかと。
これまでの記事でも
繰り返し書いてきたことですが、
性教育という試みがある種のねじれを生じてしまった
一番のモトをたどっていくと、
頭で考えて処理しようとする
「思考偏重」の社会になってしまっていることが
挙げられるようにおもうんですね。
関係性の中で内から観察・存在し、
相互作用し続ける動的な関わり方というのは、
わたしがまさに寺子屋塾で
実践していることでもあるので。
三木成夫さんという方がどのように
このような考え方にたどり着かれたのかを
知るヒントになりますので、
つぎのページも
可能な範囲でアクセスしてみてください。
とりわけ、上記サイトのなかでも、
後藤仁敏さんによる
「三木成夫の生涯と業績」は、私見ですが、
三木さんのこうした見解、思想、哲学が
どのような経緯、どのような出会いによって
もたらされたかを深く理解する上で
必読の資料だとおもいます。
この続きはまた明日に!
【これまでの記事一覧】
・「〝教えない〟性教育」考(その11)
・「〝教えない〟性教育」考(その12)
・「〝教えない〟性教育」考(その13)
・「〝教えない〟性教育」考(その15)
・「〝教えない〟性教育」考(その16)
・「〝教えない〟性教育」考(その17)
・「〝教えない〟性教育」考(その18)
・「〝教えない〟性教育」考(その19)
【参考記事(外部リンク)】
【関連する寺子屋塾blog過去記事】
・9/24都内某所にOPENする「坂本図書」構想や新刊本のこと