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TBSドラマ『逃げ恥』名セリフ&名場面集(その72)

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TBSドラマ『逃げ恥』名セリフ&名場面集(その72)

TBSドラマ『逃げ恥』名セリフ&名場面集(その72)

2026/04/22

2/10からこのブログでは、

TBSドラマ『逃げ恥』名セリフ&名場面集を

お届けしているんですが、

1話につき1シーンずつ

順番に追いかける形で紹介していて、

この記事で72回めとなりました。
 

4/17の投稿記事から七巡目が始まっていて、

今日は第6話の中盤

23分30秒すぎたあたりから
(その39)の記事で紹介したシーンの続きで、

温泉旅館の露店風呂付き客室に案内された

みくりと平匡のやりとりを。

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〔伊豆修善寺・温泉旅館の客室にて〕

みくり:せっかく来たんだし、お風呂一緒に入りますか?

平匡:〔まむしドリンクを取り落とし、手ぬぐいから転げ落ちる〕

みくり:???〔落ちたものを拾おうと近づいていく〕

平匡:あーっ見ないで!! 〔落ちたドリンクにジャンプして抱きかかえる〕

みくり:

平匡:〔まむしドリンクを風呂敷に包みながら〕それから…お風呂に一緒に入るとか、そういう冗談を軽々しく言わないでください。

みくり:

平匡:ぼくたちはただの雇用関係で、あと、火曜日にハグをするだけの関係でしょ。今もただの社員旅行ですし、それ以上でもそれ以下でもないっ!

みくり:……

平匡:〔風呂敷に包んだまむしドリンクをカバンに入れながら〕まったくもう…みくりさんは、すぐに、突拍子のないことを言い出す。ホントにもう…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

TVドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』第6話より

 

 

COMMENT:この場面、旅館の露天風呂つき客室に案内された直後という、恋愛ドラマ的には「さあイベントが始まりますよ」感が最高潮のところですよね。普通なら湯気とか距離の近さとか照れとか、そういう方向に転がっていくはず。ところが『逃げ恥』は、そこからまったく別の方向にスッ転んでいく。笑 舞台装置が完璧に整えば整うほど、二人の間に訪れるのは〝恋愛の進展〟でなく、むしろ境界線の再設定、しかも平匡にとってはかなり必死な状況!というところが、何より笑えるんですね。  


みくりの「せっかく来たんだし、お風呂一緒に入りますか?」って、字面だけ見れば完全に誘惑のセリフです。でも第1話からの流れで聞くと、みくりが色気の勝負に出た、という感じでもない。むしろ「この旅行って、どこまで許されるんだろう?」と、距離の確認をしているようにも見えます。みくりはこれまで、「結婚しましょう」「恋人になりましょう」「ハグをしましょう」と、関係の節目をいつも自分から提案する立場で差し出してきた人でした。もちろんそれは告白というより、仕様変更の提案書みたいな感じなんですが。だからここでも、感情が先に出るより先に言葉が出てしまっている。ここにみくりの癖が如実に出ているのが可笑しいと同時に、切なく感じるところでもあります。  


で、そのみくりの一言に対する平匡の反応がまた、何ともまぁお見事!というか大爆笑!手ぬぐいからまむしドリンクを取り落とし、転げ落ちたドリンクにジャンプして抱きかかえ、「あーっ見ないで!!」って叫ぶという———いやいや、何を見せたくないのよ、っておもわず突っ込みたくもなりますねぇ。笑 でもここって単に「エロい恥ずかしさ」というより、平匡の中の「社員旅行」という〝カテゴリー〟分けが崩壊寸前になっていることへの恐怖なんでしょう。  


たぶん平匡は、これまでずっと世界を分けて生きてきたのでしょう。雇用関係(契約)と恋愛(感情)と生活(家事)を、なるべく混ぜない。混ぜないから安全。ところがどっこい、そもそも温泉旅館の客室って、そういう境界線が強制的に溶けてしまう場所なので。まして経験のない平匡には、舞台装置があまりにも強すぎる。だから平匡は、言葉より先に身体が反応してまむしドリンクが転げ落ちてしまう。境界線が揺れたことに、本人がいちばん驚いているんだとおもいます。  


そこで平匡がやるのが、落ちたドリンクを抱きかかえ、風呂敷に包み、カバンに入れる、という一連の動作です。この「包む」「しまう」動作が、揺れた境界線そのものを梱包して片付けているような感じに見えるんですね。気持ちの方をどうこうする前に、物理的に隠そうとする振る舞いの滑稽さが、『逃げ恥』のコメディになっているわけで。  


しかも平匡は、そこでみくりに「お風呂に一緒に入るとか、そういう冗談を軽々しく言わないでください」と言う。ここ、お説教というより〝自己防衛の宣言〟に聞こえますね。冗談を軽々しく言われると、自分の中の〝カテゴリー〟分けが壊れてしまう。壊れそうだから、いったん言葉で囲い直すしかない。続くセリフがこれまた平匡らしい。
「ぼくたちはただの雇用関係で、あと、火曜日にハグをするだけの関係でしょ。今もただの社員旅行ですし、それ以上でもそれ以下でもないっ!」
これは恋愛の否定というよりは、ラベルの貼り直しです。しかも「火曜日にハグ」って、本来なら甘いはずなのに、平匡の口から出ると完全に会議か予定表の一項目になってしまう。笑 恋愛を暦と契約に落として、扱えるサイズにする———つまり平匡にとっては、恋愛が曖昧すぎ、巨大すぎて怖いのでしょう。だから自分でも扱えるように、いったん小さくして、区切って、ラベルを貼ろうとする。  


でも、ここで決定的なのは、その後のみくりが「……」と黙ってしまうところ。みくりはこれまで、言葉で整えることで関係を運用してきた側にいました。相手の怖れをいち早く読み取り、怖れを感じさせない言い方に翻訳するのが上手かったので。でもここでは、言葉で押し広げようとするみくりに対し、言葉で囲い直す平匡が真正面から出てきてしまった———平匡のこの反応は、みくりの言語戦略を超えていたのでしょう。  


だから、この場面を「平匡かわいい!」「みくり天然!」という言葉で終わらせてしまうのは、ちょっともったいないんですね。言ってみれば、ここで起きているのは恋愛の進展ではなく、〝境界線メンテナンス〟のコメディです。温泉旅館というイベント装置が強すぎるからこそ、平匡は境界線を引き直さざるを得ない。そして、その引き直しが、まむしドリンクを包むという滑稽な動作になって現れるから、ドラマを観ているわたしたちには何とも笑えてしまう。でも、笑いながらも妙に切なくもあって。  


恋愛って、気持ちが強くなるほど境界線が要らなくなる……とは限らないんですね。むしろ『逃げ恥』では、気持ちが強くなりそうになる瞬間ほど境界線の引き直しが起こる。そこでいったん関係は静止する。静止するけれど、その静止自体が「次に進むための調整」でもある。そんな不器用な仕組みを、こんなに笑える形で見せてくれるところが、このドラマ『逃げ恥』のすごさだとおもいました。  



この名セリフ&名場面集で紹介しているセリフは、2020年に放映された『逃げ恥・ムズキュン特別編』を土台に、野木亜紀子さんの『逃げ恥シナリオブック』での記述を参考にしています。なぜTVドラマ『逃げ恥』のシーンを毎日投稿しているか、その理由については、この連投記事の初回として書いた(その1)の記事のコメントをお読みください。

ちなみに、4/10に投稿した(その60)の記事には、それまでに投稿した全記事のINDEXと、逃げ恥関連の投稿記事リンク集を載せました。未読記事がある方は是非そちらから参照を。

 

 

明日の記事では第7話のシーンをお届けします。
ではまた!(^^)/

 

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