2023年のふりかえり「年間読書ベスト24」(その2)
2024/01/02
年末年始に投稿するブログ記事では
毎年恒例の年間読書ふりかえりなんですが、
お正月二日目の今日は、
年末12/30に投稿した
2023年の年間読書ベスト24(その1)の続きを。
昨年の年間読書ふりかえりでは
24冊セレクトしただけで順不同でしたね。
それでまずは順序をつけてみました。
①坂本龍一『ぼくはあと何回、満月を見るだろう』
②為末大『熟達論 人はいつまでも学び成長できる』
③太刀川英輔『進化思考 生き残るコンセプトをつくる「変異と適応」』
④松永暢史『カタカムナ音読法』
⑤吉家重夫『意識の姿 統一場心理学総論』
⑥中原淳『話し合いの作法』
⑦熊平美香『リフレクション 自分とチームの成長を加速させる内省の技術』
⑧竹田信弥+田中佳祐『読書会の教室』
⑨今村仁司編『現代語訳 清沢満之語録』
⑩光丘真理『キミが主役の勉強 問いをもつ学び方とは?』
⑪宇田亮一『新版 吉本隆明「心的現象論」の読み方』
⑫ブルース・リプトン他『思考のパワー 意識の力が細胞を変え宇宙を変える』
⑬池谷裕二『単純な脳、複雑な「私」』
⑭影山知明『ゆっくり、いそげ』
⑮ハナムラチカヒロ『まなざしの革命』
⑯方条遼雨『身体は考える 創造性を育む松聲館スタイル』
⑰崎谷博征『エーテル医学への招待』
⑱古田徹也『はじめてのウィトゲンシュタイン』
⑲佚斎樗山『新釈 猫の妙術 武道哲学が教える「人生の達人」への道』
⑳孫泰蔵『冒険の書 AI時代のアンラーニング』
㉑若松英輔『本を読めなくなった人のための読書論』
㉒矢野和男『データの見えざる手』
㉓阿部謹也『大学論』
㉔河出書房新社編集部『吉本隆明 没後10年、激動の時代に生き続けるために』
各々ジャンルやテーマの違いがありますし、
ひとつの尺度だけで評価するのは難しく、
①~㉔の順序はおおむね、
わたしに与えたインパクトが大きかった順と
捉えていただければよいでしょう。
2022年のふりかえりは選んだ24冊を4回に分け
6冊ずつ詳細コメントを記したんですが、
2023年は3回に分けて
8冊ずつ詳細コメントを書くことにします。
よって今日はまず①〜⑧まで。
坂本さんの訃報が全世界を駆け巡った4月には
このブログでも10回にわたって
追悼の気持ちを込めた記事を投稿しました。
今年のベスト1に本書を挙げたことから、
3/28に坂本龍一さんが亡くなったことが
自分にとって非常に大きな喪失だったことを
感じとっていただければと。
本書のタイトルは、
今日の名言シリーズでも紹介しましたが、
映画『シェルタリングスカイ』のラストシーンで、
原作者でもあるポール・ボウルズが語った
台詞から取られたもの。
2018年から2022年にわたり、
婦人画報に掲載していた連載全36回分をまとめた
『坂本図書』とどちらにするか迷いましたが、
亡くなる直前まで描かれて絶筆となった
闘病記録を含んだ原稿がまとられめた本書を
選びました。
ちなみに、次の記事で『坂本図書』について
書かれた箇所を本書から引用して紹介しています。
この寺子屋塾ブログでは
為末大さんの話題を書くことが多く、
昨年12/10には為末さんが『熟達論』について
語っている動画を文字起こしして
紹介したこともありました。
為末さんは陸上競技のアスリートですが、
現役を引退し10年が経過したことを機に
人間が学び成長するときに、
どういうプロセスをたどるのかについて、
さまざまな分野の達人と対話を重ねながら
遊→型→観→心→空 という5段階に整理し、
100年後の人間が読んでも参考になるような、
現代の五輪書を目指して書かれた渾身の1冊。
次の記事も参考にして下さい。
・為末大「自分を認められるのは自分しかいません」(今日の名言・その69)
③太刀川英輔『進化思考 生き残るコンセプトをつくる「変異と適応」』
本書に関心を持つようになったきっかけは、
2022年11月にNHK−Eテレで放映されていた
「Switchインタビュー達人達」
養老孟司x太刀川英輔 を観て、著者が
教育活動に携わっていることを知ったんですが、
これについてはこちらの記事で触れています。
本書が示唆する重要なキーワードは、
〝計画的偶発性〟〝ガチャを回す〟で、
易経の考え方とのつながりを示しながら
次の記事で詳しく紹介しています。
とてもボリュームのある本書ですが、
さまざまな分野、領域の
さまざまなエピソードがちりばめられているので、
最初から最後まで通して読む本というよりは、
机上に常備しヒントが欲しくなったときに開き、
辞書のように使うのがよさそうです。
わたしが持っている本は
2021年4月に出版された初版なんですが、
生物の進化論についての記述を中心に、
学術的にも齟齬がないものにしたい想いから、
昨年末12/23に増補改訂版が出版されているので、
新たに入手される方はそちらをオススメします。
④松永暢史『カタカムナ音読法 子どもの国語力を飛躍的に伸ばす究極のメソッド』
寺子屋塾では体験学習を重視していることもあり、
これまで行ってきた読書会では、
お題本を参加者全員が順番に声に出して音読し、
読んだ箇所について意見交換するやり方で
進行しています。
つんどくらぶでは様々な本をお題本にするので、
古典作品ばかり読んでいるわけではありませんが、
古典作品を音読したり書写したりすることの
大事さについては次の記事で触れました。
また、国語力は生まれてから今日まで培ってきた
言語能力、言語体験に比例するところがあり
短期間で伸ばすのは易しくないのですが、
この音読法には希望の光が見えます。
吉本隆明さんの『心的現象論』には、
フロイトやユング、アドラーなどによる
心理学がたどりつけなかった
心についての独創的な見方がありますが、
アカデミックな世界とは隔絶したところで
執筆されたため、
『心的現象論』をもとに心のしくみを
解き明かそうとする心理学者や精神科医は
ほとんど存在していません。
本書も『心的現象論』とは直接関わりなく
執筆されたものですが、
人間の意識を物理現象として捉え
その構造と原理を明らかにしょうという
スタンスは吉本さんに近いものを感じました。
まだ拾い読みをしただけの段階で
細かい所までしっかり読めていないので、
ざっくりとした印象しか書けませんが
しっかりとした手応えはあるので、
今年は本書を時間をかけて
じっくりと読み解いていくつもりです。
本書については12月に哲学対話関連の記事を
書いたときに紹介しました。
・二村ヒトシさんの「性や恋愛を考える」哲学対話に行ってきました(その4)
こんにちの日本で、議論と対話の違いや、
会話と対話の違いについて
正確に理解している人は
まだまだあまり多くはありません。
本書は『ダイアローグ 対話する組織』の
実践編のような内容になっていて、
すぐに現場で使える実用的なものでオススメです。
次の記事も中原さんの動画などを紹介しているので
参考にしてください。
・インタビューゲームでなぜ人生が変わるのか(番外編4・中原淳&長岡健『ダイアローグ 対話する組織』)
⑦熊平美香『リフレクション 自分とチームの成長を加速させる内省の技術』
わたしがファシリテーションを学ぶガイド役として
周りからお声がかかるようになったのは
寺子屋塾を起業して10年経った2004年頃で、
その当時は、まだファシリテーションという
単語自体を知っている人も
すくないような状況でした。
リフレクションとはふりかえりのことで、
体験学習において欠かせない要素なんですが、
前記したような状況だったので、
ふりかえりやリフレクションについて、
書かれた本を調べてみても、
タイトルでヒットする本はほとんど
見当たらないような状況だったのです。
こんにちではリフレクションで検索すると
さまざまな書物がヒットするんですが
そういう中にあって本書は、
分野やセクターを問わず、
個人と組織のさまざまな状況のなかで
活かせる内容になっているように感じました。
⑧竹田信弥+田中佳祐『読書会の教室 本がつなげる新たな出会い 参加・開催・運営の方法』
自分自身もこれまでに読書会を主催したり
他の人が企画した読書会に参加したりしていて、
読書会の可能性ということを
しばしば考えるんですが、2023年は
「そもそも本を読むとはどういうことか」
について、考えることが
すくなくありませんでした。
それで、読書会そのものをテーマにした本を
何冊か入手して読んだんですが、
本書は「そもそも読書会って?」という話から
具体的運営方法まで丁寧にまとめられた労作です。
本屋さんとライターさんのお二人で
対話を重ねながら作られているプロセスも
とても良いように感じました。
⑨以後の続きは明日投稿する予定です。
【過年度の読書ふりかえり記事】