2023年のふりかえり「年間読書ベスト24」(その4)
2024/01/04
昨日投稿した記事の続きです。
2023年のふりかえりとして
その年に読んだ本、買った本のなかから
わたしにとってのベスト24をセレクトしました。
一昨日は①〜⑧、昨日は⑨〜⑯でしたので、
今日は⑰〜㉔の8冊について
詳細コメントを記します。
⑰崎谷博征『エーテル医学への招待 リアルサイエンスで分かった「波動」の真実』
出版社・秀和システムから著者5冊目の本書は、
現代の科学そのもの、医学そのものを
論じようとしている点において、
メチャクチャテーマが大きいわけですが、
そうしたことからもこれまでの4冊よりも
焦点が定まっていない感じがありました。
もちろん、いまの医学も科学も基盤はきわめて脆く、
一番元になっている前提が崩れたら
雪崩のごとく倒れてしまうものですが、
昨日コメントを書いた⑫ブルース・リプトン
『意識のパワー』の方が丁寧に感じました。
もちろん、一度や二度読んだくらいで
しっかり理解できる内容ではありませんが、
本書を入口にしてさらなる続編を
期待したいところです。
本書については、昨年9/10に
ウィトゲンシュタインについて書いた記事を発端に
「そもそも〝わかる〟とはどういうことか」を
テーマにして8回の連投記事を書いたことがあり、
その記事の中でも紹介しました。
ウィトゲンシュタインの哲学には
20代のころから触れてきたんですが、
教育者としての側面など、
この古田さんの本を読むことで、
新たに発見したことも少なくありません。
⑲佚斎樗山『新釈 猫の妙術 武道哲学が教える「人生の達人」への道』
17世紀江戸中期に書かれた剣術の指南書で、
ネズミ取りの妙技奥義を身につけた古猫が、
他の猫に教えを説く設定自体が
とてもコミカルでオモシロく楽しく読めます。
原文の主旨を損なわないように配慮された上で、
現代のわたしたちにも分かりやすい言葉に翻訳され、
後半部分は50ページにわたる
詳しい解説が載っているのも有難いです。
著者の孫泰蔵さんは、
ソフトバンクグループのCEO・孫正義さんの
弟にあたる人物です。
たぶん日本の教育は大きく変わらないといけないと
多くの人が感じているとおもいますが、
具体的に何をどのように変えればいいのかとなると
色々と議論が百出しまとまらないかもしれません。
そういう意味では、本書に書いてあることも
ひとつの考えでしかないわけですが、
表紙カバーカバーの袖にある言葉
「答えようとするな、むしろ問え。」は
本書のアウトラインを象徴していると
言ってよいでしょう。
若松英輔さんの本については、以前このブログでは
『考える教室 大人のための哲学入門』のことを
こちらの記事で紹介したことがありました。
ほかにも若松さんの本は何冊か読みましたが、
まなざしに優しさを感じます。
本書はテーマが読書論ではあるんですが、
本の読み方を指南するというよりは、
さまざまなとらわれから
いかに自由になるかを解き明かしているような
感じがしました。
以下は本書からの引用です。
・待つということは本質的かつ創造的な営みだ
・文字には「正しい」読み方はあっても
本の「正しい」読み方は存在しません
・たいせつなのは多く読むことではなく
「たしかに」読むことです
・食べ物に「賞味期限」があるのに対し、
言葉にはまったくといってよいほどない。
㉒矢野和男『データの見えざる手 ウェアラブルセンサが明かす人間・組織・社会の法則』
③にあげた太刀川英輔さんの『進化思考』や
計画的偶発性絡みで新たに見つけた1冊。
矢野和男さんは日立製作所のフェローで、
AIや社会におけるデータ活用を研究されている方。
本書は2014年刊行当時に随分話題となったようで、
BookVinegar社のビジネス書ベスト10に
選ばれています。
テクノロジーの発達がめざましいこんにちですが、
人間の自由や幸福が目的でなければ本末転倒です。
矢野さんには、人間の幸せを制御するような
テクノロジーは可能なのかという問いがあるようで、
「人間行動の方程式」「ポジティブ心理学」など
本書からは興味深いキーワードが
たくさん見つかりました。
2021年に出された『予測不能の時代』も
そのうち手に入れて読んでみたい1冊。
歴史学者・阿部謹也さんの本はこれまでにも
『自分のなかに歴史をよむ』『「世間」とは何か』
などを読んで来ましたが、
四半世紀前1999年に書かれた本書の内容を読むと
ちょうど阿部さんがこの本を書かれた頃が
日本の大学にとっての大きな分岐点だったと
言えるかもしれません。
本書の内容については、昨年9月下旬に
3回にわたって紹介したので
次の記事を未読の方はご覧ください。
㉔河出書房新社編集部『吉本隆明 没後10年、激動の時代に生き続けるために』
このベスト24を選ぶにあたって原則2つ
⑴同一著者の本は二冊以上挙げない
⑵同じ傾向、ジャンル本の重複をなるべく避ける
を掲げているので、⑪の宇田亮一さんの読み方本と
どちらか1冊だけにするという考えも
頭の中をよぎってましたが、
吉本さんの没後10年にあたって2022年春に
まとめられたアンソロジーを1年遅れで入手し、
やっぱりこの1冊は挙げておきたく入れました。
既刊雑誌などからの再録記事も多いのですが、
ブックガイドや生前行われた
ロングインタビューなど吉本ワールドの全体像が
垣間見える構成になっています。
【2023年読書ふりかえりベスト24】
①坂本龍一『ぼくはあと何回、満月を見るだろう』
②為末大『熟達論 人はいつまでも学び成長できる』
③太刀川英輔『進化思考 生き残るコンセプトをつくる「変異と適応」』
④松永暢史『カタカムナ音読法』
⑤吉家重夫『意識の姿 統一場心理学総論』
⑥中原淳『話し合いの作法』
⑦熊平美香『リフレクション 自分とチームの成長を加速させる内省の技術』
⑧竹田信弥+田中佳祐『読書会の教室』
⑨今村仁司編『現代語訳 清沢満之語録』
⑩光丘真理『キミが主役の勉強 勉強の「当たり前」をこわそう』
⑪宇田亮一『新版 吉本隆明「心的現象論」の読み方』
⑫ブルース・リプトン他『思考のパワー 意識の力が細胞を変え宇宙を変える』
⑬池谷裕二『単純な脳、複雑な「私」』
⑭影山知明『ゆっくり、いそげ』
⑮ハナムラチカヒロ『まなざしの革命』
⑯方条遼雨『身体は考える 創造性を育む松聲館スタイル』
⑰崎谷博征『エーテル医学への招待』
⑱古田徹也『はじめてのウィトゲンシュタイン』
⑲佚斎樗山『新釈 猫の妙術 武道哲学が教える「人生の達人」への道』
⑳孫泰蔵『冒険の書 AI時代のアンラーニング』
㉑若松英輔『本を読めなくなった人のための読書論』
㉒矢野和男『データの見えざる手』
㉓阿部謹也『大学論』
㉔河出書房新社編集部『吉本隆明 没後10年、激動の時代に生き続けるために』
【これまでに投稿した読書ふりかえり記事】