20歳で自死した親友の命日2/21にカミュを再読
2024/02/21
今日2/21は、タイトルに示したように
わたしにとって一生忘れられないメモリアルな日で、
そのメモリアルな日にまつわる読書の話題を。
2023年5月に投稿した次の記事
・贈与読書会で４０年ぶりに出会い直した『シーシュポスの神話』のこと
にも書いたんですが、44年前の今日2/21、
高校時代に一番親しかった友人Ｍが
自死するという事件が起きました。
その少し前に、わたしの母方の祖母が
亡くなるということがあったんですが、
そのときに泣かなかったわたしも、
その知らせを受けたときには、
大声を張り上げて泣いてしまったことを
覚えています。
でも、それは親友の死を悼んで泣いたのではなく、
親友を失ってしまった自分が
悲しかっただけだったと後で気がついたんですが。
絶望に打ちひしがれるなかで、
生きることの意味を追い求めて手にした１冊が
カミュの『シーシュポスの神話』でした。
それにしても、どうして
カミュのこの本だったのでしょう？
誰かに勧められたわけではなく、
カミュのことをよく知っていたわけでもなく、
たまたま自宅近くの書店で
自分で見つけ偶然手にした１冊でした。
ただ、なぜカミュだったのか、
そのときには偶然とおもっていたできごとも、
こうして時を経て丁寧にふり返ってみると、
出会うべくして出会うように
見えない力によって導かれていたのかもしれないと
おもえてきたんです。
2/6に投稿した記事
わたしが関心をもつ人やご縁のある人には、
演劇に関係する人が多いという話を書いたんですが、
カミュも戯曲をいくつか書いていますし、
劇団の創設にも関わったことがある様なのです。
この『シーシュポスの神話』は、
小説でも論説文でも随筆でもなく、
かといって哲学書でもないといった
カミュが書いた不思議な文章を集めた
当時の文庫本で200ページほどの分量がある文集で、
中心テーマは自死、自殺です。
つまり、この世は果たして
生きるに値するものであるかどうかという
問いについて考察したものでした。
それこそカミュは、
マルクス主義や実存主義を批判し、
あらゆるイデオロギーに与しない姿勢を
貫いた人ですから、
岡田謙三さんの言葉のように、
「弱くても強くてもいけない、
新しいのも古いのもいけない」というスタンスにも
どこか通じるところがありますね。
「あらゆるイデオロギーに与しない」という
彼のスタンスを知っていたから
この本を選んだのではなく、
ホントに偶然だったんですね。
つまり、いまにしておもいかえしてみても
フシギなことなんですが、
経験も知識も浅い20歳の自分が
こういう本を見つけられたのか・・・。
そして、必至にかじりついて
この本を自力で読み解き
「どんな不条理なできごとに遭遇しても、
意識的であり続けること、
そして不条理な人間のなし得ることは、
一切を汲みつくし、自己を汲みつくすこと。
自殺とは認識の不足でしかない」
と書かれている内容に納得して、
自ら死を選んだＭとは異なる結論、
この世は十分生きるに値する！と
わたしなりに結論づけたのです。
それは、わたしなりに出した結論ではあっても
彼の死に遭遇することが無ければ
そうはならなかったかもしれないので、
彼の死からわたしが学んだことと
言い換えた方が適切かもしれません。
親友Ｍは名古屋大学の教育学部に在籍していて、
学校の先生を目指していました。
でも、わたしが教育の仕事に
関わるようになったのは
まったく偶然の成り行きで、けっして
亡くなった彼の遺志を継ぐというような、
高邁な気持ちからではないのですが。
【関連記事】
・カミュ「生きることへの絶望なくして、生きることへの愛はない」（今日の名言・その52）
・贈与読書会で４０年ぶりに出会い直した『シーシュポスの神話』のこと
・シーシュポスの神話と追求主義のこと
・『世界は贈与でできている』読書会への参加覚え書き（その５・最終回）
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