陰と陽とは何か⑰「練習問題集〝クラックス〟(その2)」
2024/06/19
6/3からこの寺子屋塾ブログでは、
「陰と陽とは何か」というテーマで投稿していて、
本日6/19の記事で17回目となりました。
①〜⑤は陰と陽のベーシックな基本事項、
⑥〜⑩は八卦の基本事項、
⑪〜⑮は日常生活での応用というように
5回分ずつ中テーマ的なまとまりはあるものの、
全体でひとつらなりの内容を書いているので、
以下に未読記事がある方は
まずそちらから確認下さると有難いです。
・陰と陽とは何か⑥「八卦(その1)」(易経の十翼『説卦伝』)
・陰と陽とは何か⑩「八卦(その5)」(なぜ陰が六で陽が九?)
・陰と陽とは何か⑬「日常生活での応用(その3)仁王像の不思議」
・陰と陽とは何か⑭「日常生活での応用(その4)食べ物にみる陰陽」
・陰と陽とは何か⑮「日常生活での応用(その5)運勢、運命、使命」
昨日投稿した記事には
陰陽のモノサシが
どれだけ身に付いたかを確認するために、
マクロビオティック開祖・桜沢が考案した
〝クラックス〟と呼ばれる練習問題集のうち、
日本CI協会から出ていた
桜沢如一『無双原理・易』(旧版)の巻末に
収められているものをまとめてご紹介しました。
ちなみに、クラックス(CRUX)とは、
ラテン語で〝十字架〟を意味する言葉から派生し、
「問題の核心」「難問」「重要ポイント」を
意味する言葉です。
さて、論語の記事を続けて投稿していた先月も
ちょうど読んでいたところに、
論語の話が出て来たことを紹介する記事を
投稿したことがありました。
・知之者、不如好之者、好之者、不如樂之者(『論語』雍也第六の18 No.137)
昨日紹介した桜沢のクラックス (A)グループに
⑵ 蜂の巣は何故六角か
という問いがあったんですが、
池谷さんのこの本の三日目にちょうど
その問いにアプローチしている箇所があり、
今日はそれをご紹介することにしました。
いやぁ〜 この本、ホントに面白いですよ〜
(引用ここから)
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3-17 実体のない「心」が物理的な「六角形」をしている
ちょっと待てよ、と思うよね? 「心」は実体のないものだ。つかみどころがない。「これだ」と指すことはできない対象だ。でも、その実体のない心が、物理的な「六角形」をしているとは一体なにごとだ、という話になってくる。精神と物質が混在していて、議論がフワフワとしている。
僕は、こんなふうに焦点が定まらず、哲学的な気分になると、いつも、あの南米ボリビアのウユニ塩原が脳裏に浮かんでくる。風景が水面に全反射して、足元が空になる。上を向いても空。下を向いても空。宙に浮かんで青空を漂っている気分。
自分が見ているものは一体なんだろう。自分の感じているものは一体なんだろう。脳は一体なにをしているのだろう―。 そんな浮遊感を旅するとき、あの大好きなウユニ塩原の風景が思い出される。
ウユニ塩原は雨期になると、あんなふうに薄く水が張って、風景が水面に全反射する。ウユニ塩原の標高は3700メートルだ。富士山の標高は。
——3776メートル。
富士山と同じくらいの高地に、あの幻想的な風景がある。おもしろいことに、乾期になると、すっかり水が干上がってしまう。そう。その乾いた大地の風景を見てほしい。
これが乾期のウユニ塩原の写真だ。ほら、なにか気になるものが見えるね。
——うわ、六角形!
干からびて、地面にバキバキとヒビが入ると、六角形に割れる。なんじゃこりゃ、だね。でも、ウユニ塩原に限らない。六角形は、実は、自然界にたくさんある。たとえば、イギリスの北アイルランドのジャイアンツ・コーズウェイ。
とても有名な岩場で、ユネスコの世界遺産に登録されている。この岩場も、よく見ると、六角形に割れている。六角柱だね。こうした柱状節理は、日本でも、福井県の東尋坊をはじめ、各地で見られる。そんなふうに六角形は、自然界ではまったく例外ではない。普通に存在する。君らが思いつく六角形は何かな?
——ハチの巣。
——雪の結晶。
そうだね、ハチの巣も雪の結晶も六角形だ。ほかに?
——ベンゼン環とか。
ベンゼン環。おお、たしかに六角形だ。これは思いつかなかった。ところで、ベンゼン環のことを世間の一般の人々は、何と呼ぶ?とくに、化学が苦手な人がベンゼン環を揶揄するように示す言葉。
——亀の甲羅。
——あ、亀も六角形だ。
そうだね。ほかにはツクシの頭も、六角形だよね。虫めがねでツクシの先端を見たことはある? あとは、トンボの目も拡大すると六角形だ。 キリンの模様もそうだね。六角形はそこここにある。 四角形はあまりないけれど、六角形はあたりまえの存在だ。
3−18 とにかく六角形になってしまう
ここで、君らに、また実験してほしい。六角形は簡単に現れることを体験してもらいたいんだ。紙粘土を用意した。色とりどりの紙粘土だ。紙粘土を丸めてボール状にする。同じ大きさのボールを、テーブルの上にぎっしりと並べて、上から圧力をかけてつぶす。すると、丸いボールが六角形になる。角のない球形から六角形が生まれるなんて信じられないかな。やってみよう。粘土を丸めて、並べてね。
——……(黙々と作業)。
できた。綺麗に並べてもらったね。そうしたら、次に、この平らな板を使って、並べた粘土ボールを一気に押しつぶす。
——僕らからやります。
よし。押してみて。軽く力を入れるだけでいいよ。はい、おお、いいね。そうしたら、板を取り除いてみてごらん。
——(一同)おお!
結果を知っていても、実際にやってみると、感動するよね。もう、わかったね。自然界で規則正しい六角形の配列ができることは、摩訶不思議な現象ではない。たいして複雑な原理もないまま、小細工なしに、とにかく六角形になってしまう。四角形より六角形のほうが自然なんだ。グリッド細胞の話に戻れば、グリッド細胞が120度の座標系になっているのも、僕らの心が六角形になっていることも、さして驚くことはない。むしろ、六角形が自然。自然からしてみれば、そりゃそうだよ、といった具合なんだ。
実際、六角形が自然に現れることは、数学的にも妥当な現象だ。妥当だし、合理的。たとえば、ハチの巣はなんで六角形なんだろう?
——壊れにくい。
そのとおり。この構造は強い。外圧に対して頑強で、つぶれにくい。利点はほかにもある。 たとえば、同じ容積のなかに、もっともたくさんハチの子を入れられる。つまり、限られた空間をもっとも効率よく活用できる。それが六角形の部屋の配置だ。しかも少ない材料でたくさん収納できる。巣の壁をつくる材料は、できれば節約したい。できる限り少ない材料で、できるだけたくさん部屋を確保しようとすると、あの六角形がもっとも効率的。つまり、六角形は空間資源という意味でも、物質資源という意味でも、省エネなんだ。ハチの巣はあんなに軽いのに頑丈だ。だから、ロケットのフェアリングにも、この六角形のアイデアが応用されている。機体を軽くするためにね。
グリッド細胞の話に戻そう。嗅内野に電極を刺して、動物を走らせてどこで神経細胞が発火するかを見ると、六角形の格子状になっている、という発見だったね。グリッド細胞の発見は、場所細胞の発見と同時に、ノーベル生理学・医学賞が与えられた大発見だ。グリッド細胞は嗅内野に存在する。そこで、嗅内野のどこにグリッド細胞が存在するかを、顕微鏡で調べたマップがこれ。
——わお……。
おもしろいよね。グリッド細胞は、グリッド状に発火するだけでなく、その細胞が存在する配置の具合も、なんと、グリッド状。六角形にばらまかれていたんだ。嗅内野にまんべんなく存在しているのではなくて、グリッド細胞の配置そのものがグリッド状になっていた。神経反応も、神経配列も、ともに六角格子状なんだ。もう「ほんと六角形が好きだねえ……」と呆れるくらい、自然界は六角形に満ちている。先ほど紙粘土で実験してもらったように、六角形はおそろしく簡単に発生する。だから、生物が六角形を積極的に好んで採用しているのか、あるいは、自然に逆らったとしても、どうしても六角形になってしまうのか、そこまではわからないけど、ともかく六角形なんだ。つまりね、自然は壮大で変幻自在だからといって、何だってできるわけではない。自然は自由ではない。ある制約のもとに自然界は存在している。その制約の一つが、ずばり、六角形だ。
※池谷裕二『夢を叶えるために脳はある』三日目より
※グリッド細胞の図は日経サイエンスのこちらの記事より
※写真は書籍に掲載されたものでなく類似する写真をフリー素材などから挿入しました
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(引用ここまで)
陰と陽についてのベーシックな話を書いていた
③〜④あたりの記事に、
エネルギー構造であるとか、
求心力と遠心力といった話があったんでが、
・最小限の材料を用いて
・それなりに強度があり
・無駄な空間がなく
・より多くの部屋を作れる
という条件をすべて満たす形というのは、
三角形でも四角形でもなく六角形で、
いわゆるハニカム構造といわれる
スタイルになるわけで、蜂の巣のみならず、
自然界には六角形がここかしこに
見られる現象であるんだと。
たとえば自然界でなくても、
セラミック関連のこちらの記事(外部リンク)で
紹介されている
「プロセスとボイド」についての話も
蜂の巣の構造にそのまま直結する内容ですね〜
ちなみに、今日ご紹介した池谷さんのこの本の
引用した箇所の前には、
人工知能のニューロン反応を記録していったら
六角形になるという話がでています。
この続きはまた明日!
【易経関連の主な過去投稿記事】
・わたしが易経から学んだこと
・易経というモノサシをどう活用できるか
・天の時、地の利、人の和———運気を高める三才(響月ケシーさんのYouTube動画より)①
・天の時、地の利、人の和———運気を高める三才(響月ケシーさんのYouTube動画より)②
・ユング「易は自ら問いを発する人に対してのみ己自身を開示する」(今日の名言・その79)