TBSドラマ『逃げ恥』名セリフ&名場面集(二巡目・その31)
2026/09/13
8/14からこの寺子屋塾ブログでは、
TVドラマ『逃げ恥』名セリフ&名場面集の
二巡目を投稿しています。
どんな流れ、経緯から二巡目を投稿し始めたか、
その理由やきっかけ等については、
関連している8/13以前の記事等に記したので、
未読の方はご覧ください。
第1話から第11話まで順番に1シーンずつ紹介し、
最終話まで行ったらまた第1話に戻るスタイルで
(その45)まで投稿するつもりです。
基本一巡目100記事で取り上げたシーンへの
コメントをリライトして投稿しているんですが、
さすがにそればかりだと能がないので、
(その10)、(その15)、(その23)の記事や、
一昨日投稿した(その29)の記事では、
一巡目で取り上げたシーンそのものを差し替え
新たに書き起こした場面のシナリオに
コメントする記事を書きました。
今日は一巡目(その31)で取り上げたシーンへの
リライト記事なんですが、
第9話の中盤にさしかかる、
20分ちょっと過ぎたあたり、
平匡のマンションでふたりが食事しているシーンを。
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〔平匡のマンション・リビングにて〕
平匡:館山に行ったとき、みくりさんのお父さんに「津崎くんの実家に蔵はあるのか」と聞かれました。
みくり:!
平匡:「祖父の家にあります」と答えたら、「お宝は眠っていないのか。何なら自分が探しにいくから、めぼしい物があった暁には、お宝鑑定の番組に応募させてくれないか」と。
みくり:うちの父、むかしから好きなんです。埋蔵金とかお宝とか…
平匡:お宝の価値がゼロだった場合と、高額だった場合のリアクションまで見せてくださいました。
みくり:いろいろすみません。
平匡:感心しました。森山家は、なんてイマジネーションが豊かなんだろうって。
みくり:モノは言いようですね。
平匡:でも、みくりさんが契約結婚を言い出さなければ、今はなかった訳ですし。
みくり:!
平匡:どんなに突拍子がなかろうと、イマジネーションは現実を変える力があると思います。
みくり:……
平匡:いただきます!
みくり:いただきます!〔2人とも食べはじめる〕
みくりM:平匡さんにかかれば、わたしの突拍子のなさも、しょうもない妄想も、現実を変える力に変化する。
平匡:〔ごはんを食べている〕
みくり:……。
みくりM:好きだと言われなくても、このままで十分、幸せかもしれない。〔平匡を見つめて微笑む〕










COMMENT:みくりと平匡が食事をしているこの場面、いつものように、そこでやり取りされている内容自体はとても地味です。平匡が館山でみくりのお父さんから「実家に蔵はあるのか」と聞かれた、という話をしているだけなので。お宝だの鑑定番組だの、森山家らしい突拍子もない話題で、普通なら家族ネタの笑いとして流れていきそうなところです。でも『逃げ恥』の場合は、こういう何気ない食卓の会話の中に、その物語全体を支える大事なテーマを、さらっと置いてあったりするんですね。
まず面白いのは、平匡がみくりのお父さんの妄想を、まったくバカにしていないところ。みくりは「いろいろすみません」と、少し恥ずかしそうに受け止めている。たしかに、埋蔵金とかお宝とか、現実的に考えればかなりしょうもない話です。ところが平匡は「感心しました。森山家は、なんてイマジネーションが豊かなんだろうって」と言う。これ、単なる優しいフォローではないんですよね。みくり個人だけでなく、みくりを育ててきた森山家の空気ごと肯定している。突拍子もないことを思いつき、それを口に出し、現実につなげようとする発想のルーツとなった土壌を、平匡はちゃんと受け取れた。
みくりの「モノは言いようですね」という返しもイイですね。照れ隠しでもあり、自己防衛でもある。自分の父親のヘンな話を、そこまで良いものとして受け取っていいのか、みくり自身も少し戸惑っている。でも平匡はそこで引かない。「でも、みくりさんが契約結婚を言い出さなければ、今はなかった訳ですし」という返しがホントにいい!単なる慰めじゃなくて、二人の具体的な歴史に引き寄せているんです。第1話でみくりが言い出した契約結婚も、冷静に考えれば、いや冷静に考えなくても相当に突拍子もない提案だったので。でもその突拍子もなさが、今のこの食卓を作っている。つまり平匡は、「あなたの思いつきは、ちゃんと現実を動かしたんですよ」と言っているわけです。
だから続く「どんなに突拍子がなかろうと、イマジネーションは現実を変える力があると思います」という言葉は、みくりへの賛辞であると同時に、『逃げ恥』という作品全体の自己紹介にも聞こえます。そもそもこのドラマ自体が、「雇用主と従業員としての契約結婚」というかなり突拍子もない設定から始まっているから。でも、その突拍子もない設定だからこそ、家事労働、賃金、結婚制度、恋愛、自己肯定感、対等性といった現実の問題がとてもクリアに浮き彫りに。一巡目(その31)の記事で書いた、この言葉をガッキーと源さんの結婚にまで重ね合わせたくなったことも、フィクションの中のイマジネーションが、まさに現実の世界まで波及し変えてしまったのかもしれないわけで。
そして、この場面では平匡は「好きです」とは言いません。でも、みくりは「好きだと言われなくても、このままで十分、幸せかもしれない」と受け止めていて、ここがとっても『逃げ恥』らしいところ。普通の恋愛ドラマなら、愛情の確認は「好き」とか「愛してる」という直接的な言葉に向かいがちです。でもこの二人の場合、愛情は告白でなく、相手の発想を肯定する言葉として届く。「あなたの突拍子もなさが、今を作った」「あなたのしょうもない妄想にも、現実を変える力がある」。これは、みくりの可愛さや家事能力ではなく、みくりの世界の見方そのものを肯定する言葉です。だからこそ、みくりに深く刺さったんでしょうね。
しかも、この抽象度の高い言葉が、食卓で語られているところがまた巧い。「イマジネーションは現実を変える」なんて、下手をすれば説教っぽくなるセリフです。でも二人はその直後に「いただきます!」と言って、普通にごはんを食べ始める。大きな思想が、湯気や箸や茶碗のある日常の中に着地している。突拍子もない妄想も、契約結婚も、現実を変える力も、全部がこの小さな食卓の上に置かれている。だから大げさにならないし、むしろしみじみ残る。みくりの妄想が、平匡の言葉によって「現実を変える力」として承認される。何てことはない夕食の場面のようでいて、二人のこれまでのプロセスと、『逃げ恥』という作品そのものが、静かに肯定されている名シーンとして深く印象に残りました。

この名セリフ&名場面集で紹介しているシナリオは、野木亜紀子さんの『逃げ恥シナリオブック』を参考にしながら、2020年に放映された『逃げ恥・ムズキュン特別編』を書き起こしました。こんな風にTVドラマ『逃げ恥』のシーンを毎日投稿することになった最初の動機については、一巡目の初回として書いた(その1)の記事のコメントをお読みください。5/20に投稿した1巡目の最終回(その100)には、すべての記事内容を総括するコメント、全100回のINDEXつきリストと関連リンク集を載せています。
・TBSドラマ『逃げ恥』名セリフ&名場面集(その100・最終回)
また、当塾ではすべて関連し合っているという考え方を大切にしていますので、さらに詳しく知りたいという物好きなお方(笑)は、タグ「逃げ恥」を付している過去記事のみならず、他の記事を適宜アクセスください。当塾で開塾時から基本教材と位置づけてきたらくだメソッドの学習内容については、らくだメソッド関連を、大切にしているエッセンスを短いコトバで端的に知りたい方は、つぶやき考現学をどうぞ。アクセス数が最も多いカテゴリーは、今日の名言シリーズ(現在その130まで投稿)です。最近は、易経、論語、仏典などをひもといている古典研究関連カテゴリの記事もアクセスが増えています。
明日は一巡目(その32)の記事でとりあげた第10話のシーンへのコメントをリライトして投稿する予定です。
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●2021.9.1~2024.12.31記事タイトル一覧は
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