2023年のふりかえり「年間読書ベスト24」(その3)
2024/01/03
三が日も終わりですね〜
今日は天気がいまひとつで、雨が降り出す前に
井上家の5人で住吉神社 に初詣。
井上家の氏神さまへの初詣は
元旦の恒例行事でしたが、
去年秋から義母と同居生活が始まって、
これまで元旦に妻の実家でしていた親族の集まりを
我が家で行う様になった事情で
今年は今日になりました。
おみくじは毎年引いているんですが、
今年は中吉です。
毎日の修練を怠らぬことが大切!って
まさしく日々坦々と
やり続けようとすることを大事にしている
寺子屋塾のために書いてもらった文言ですね〜。
さて、昨日1/2に投稿した
2023年読書ふりかえり記事の続きです。
年末に投稿したその1ではとりあえず
24冊を選んだだけだったので、
昨日はその24冊にわたしなりの順位づけを行い、
①〜⑧までの8冊について、
詳細コメントを書きました。
今日は⑨〜⑯までの8冊で、
全24冊リストは記事の末尾に再掲しておきました。
11月に坂本図書を閲覧するため上京した際に
神田神保町にある古書店で入手したものです。
昨年8月のふりかえり記事に書いたんですが、
8/24に碧南市にある
藤井達吉現代美術館まで出かけて
「生誕160年 清澤満之の世界展』を観ました。
清沢満之(1863〜1903)という人は、
浄土真宗関係者以外に殆ど知られていないので、
初めて名前を聞かれる方が多いでしょうが、
東大教授・安冨歩さんによると、清沢は
ウィトゲンシュタイン「語りえぬもの」「神秘」や
マイケル・ポランニー「暗黙知」と密接に関連し、
しかも両者に先行し凌駕しているという点において
日本最初の独創的宗教哲学者であり、
以後、清沢に匹敵する独創的な思想家は日本に
残念ながら出現していないという程のもので、
そもそもこのような場所に簡単に
コメントして済ませられる内容ではなく、
今年はどこかで清沢のことをちゃんと紹介する
記事を書いてみたいと画策しているところです。
とはいえ、ざっくり概略だけでも知りたい方は、
松岡正剛さんの千夜千冊に
清沢満之を取りあげた記事があるので、
関心のある方はご覧になってみてください。
本書は2001年に発刊され、
岩波書店のオリジナル編集なんですが、
今村仁司さんが明治時代に生きた清沢の
硬い文章をこんにちのわたしたちにも
親しみやすいように現代語に翻訳した労作です。
⑩光丘真理『キミが主役の勉強 勉強の「当たり前」をこわそう』
現在の寺子屋塾は在籍している塾生の8割以上が
社会人の大人なんですが、
去年4月に1年ぶりに
小学生の入塾者がありました。
正解を出そうとすることよりも間違えること、
自分で問いを立ていろいろやってみることが
大事だってことを、
小学5年生の女の子にどう伝えたらよいものか
考えていたときに見つけたのが本書です。
以下は本書の解説より抜粋
「答えにたどり着けるかどうか、
あるいは答えがあるのかどうかすら、
実はどうでもいいことなんです。
答えがあるのかどうかすらわからない問いを
たくさんもっているということは、
たくさんのわくわくをもっているということです。
わくわくしている限り、人間は化石にはなりません。
問いは宝物です。」
2011年9月に出版された、宇田亮一さんにとって
最初の著作であり、吉本本の読み方シリーズ
第1弾に待望の新版が出版されるニュースは
こちらの記事に詳しく書きましたので、
未読の方はご覧ください。
昨年はわたしのプライベートな事情で
身動きができない状況だったため
仕事上でやろうと計画していたことは
ほとんど計画倒れに終わってしまったんですが、
この本の読書会もその一つです。
今年こそは実現したいとおもっていますので、
協力したいという方は井上まで是非ご連絡を!
⑫ブルース・リプトン他『思考のパワー 意識の力が細胞を変え宇宙を変える』
著者はアメリカのスタンフォード大学等で
教鞭をとる細胞生物学者。
細胞膜に関する研究によって、
新分野エピジェネティクスの端緒を開き、
科学と精神世界の架け橋となった人物。
人間の意識という、見えない世界にあるものが
人間自身やこの世界にどんな影響を与えているか、
従来の科学で常識とされてきたことを悉く覆し、
従来の科学ではオカルトと言って
一刀両断に切り捨てられてきたものが
科学者と言われる立場の人間によって
極めて科学的な態度によって書かれた希有な書。
かねてから脳科学者・池谷裕二さんの研究には
注目していたわたしですが、去年は、
寺子屋塾に在籍している高校生の塾生から
質問されたことがきっかけで著書を再読したり
共著を含めると30冊を超える池谷さんの本を
新たに購入して読んだりしました。
その時に書いた記事のまとめは次をご覧下さい。
昨年新たに買った池谷さんの本は10冊以上あって、
その中のどれを選ぶか迷いましたが、
慶応義塾ニューヨーク学院高等部の学生に
レクチャーした『進化しすぎた脳』に続く、
38歳のときの池谷さんが、卒業した母校である
静岡県立藤枝東高校の生徒たちに
脳科学の最前線を踏まえてレクチャーした、
高校生への講義シリーズ第二弾が本書です。
副題に自分を使い回しながら
進化した脳をめぐる4つの講義とあり
また、本書全体に一貫しているテーマは
「心の構造化」であると書かれていて、
一つ前⑫リプトンの『意識のパワー』とは
かなり近い部分を扱ったものと言えるでしょう。
第Ⅰの講義は錯覚の話から始まるんですが、
そこから「人はなぜ好きになるのか」
「〝好きになる〟ってそもそもどういうこと?」と
男女の恋愛の話につなげているところなど、
相手が思春期まっただ中にいる高校生たちですから
最初の掴みはバッチリですね〜 笑
その本書の第1講義前半で語られている
恋愛における心のはたらきのみをテーマに
本書を解説しているYouTube動画があったので、
関心のある方は観てみてください。
【超重要】恋愛したい本当の理由『単純な脳、複雑な私』by 池谷裕二
ちなみに、高校生レクチャーシリーズの
第三弾完結編が今春出版予定であると、
池谷さんが昨年末12/30にXで投稿されていたことを
最後に付け加えておきますね。
著者は東京西国分寺にある
カフェ・クルミドコーヒーの店主。
2022年ベスト24で④に挙げた
最終にある第9章に登場しています。
「ゆっくり、いそげ」だなんて、
変なタイトルだなっておもわれましたか?
「ファーストフード」でも、
「スローフード」でもないスタンスというか、
あれかこれかではなく、
「あれ」でもあり「これ」でもあるモノ。
前の⑧で紹介した清沢満之の重要な思想に、
西洋の二項対立に対して
「二項同体」という考え方があるんですが、
つまり、異なっているように見えるモノにも
実は同じモノを内包していると気づくことで、
どちらか一方だけに振り切ってしまわずに、
両軸のバランスをとって動くことが大事
という意味でいうと、
〝教えない〟ことで〝教える〟ことや、
伝わるコミュニケーションのために
押しつけない、強制しない、命令しない姿勢を
大切にする寺子屋塾のスタンスにも
通じているといえるかもしれません。
資本主義経済をどう捉えるかとか、
日本の農業の未来といった大きな話から、
目の前にある胡桃の渋皮をいかに剥くかという
小さな話まで話題は非常に多岐にわたっていて、
どんな方が読まれても面白く読めますが、
とくにお店や居場所づくりに関心のある方には
オススメの1冊。
⑮ハナムラチカヒロ『まなざしの革命 世界の見方は変えられる』
昨年(2023年)4月に上京したとき
西荻窪にあるナワプラサードで見つけた1冊。
建物、景観や環境をデザインする行為は、
人間の外部にあるものを対象物として
考えているわけですが、
著者のハナムラさんは人間の内部にある
まなざしも含めてデザインしようという
発想をもつ研究者です。
この寺子屋塾ブログではテーマになることの多い
〝観察力〟絡みでいうと、
観察の解像度を上げていくことも大事ですが、
物事をどう認識しているのかという
自分自身のまなざしそのものが変わるために、
何ができるだろうかと
発想しているのが本書と言ってよいでしょう。
情報リテラシー、マスメディアの問題にも
大きな問いを投げかけている1冊。
2022年の年間読書ベスト24でトップに挙げた
『上達論 基本を基本から検討する』に続く
二作目の本書なので、
わたしに与えるインパクトという点から
本書は今回16番目としたものの、
書かれている内容のクオリティが
前書よりも下がったわけではありません。
現代人の多くは大脳優位の思考に嵌まっていて、
何事に対しても論理的に理解しようとするために
分からないを理由に
先に進むことをやめてしまいがちです。
本書ではそれを「100点思考の呪い」
「論理の呪縛」と言って、
とにかくやってみることを推奨し、
理屈抜きで「できる」をどんどん増やしていくと、
周回遅れで「わかる」瞬間がやってくると
書かれているのですが、方条さんのこの姿勢は
寺子屋塾のセルフラーニングに
そのまま通じるものです。
昨年7月に本書が出版された直後に、
次の投稿記事から8回にわたって内容を引用して
紹介したので、未読の方はご覧下さい。
・甲野善紀 x 方条遼雨『身体は考える 創造性を育む松聲館スタイル』
明日は残りの⑰〜㉔について投稿する予定です。
【2023年読書ふりかえりベスト24】
①坂本龍一『ぼくはあと何回、満月を見るだろう』
②為末大『熟達論 人はいつまでも学び成長できる』
③太刀川英輔『進化思考 生き残るコンセプトをつくる「変異と適応」』
④松永暢史『カタカムナ音読法』
⑤吉家重夫『意識の姿 統一場心理学総論』
⑥中原淳『話し合いの作法』
⑦熊平美香『リフレクション 自分とチームの成長を加速させる内省の技術』
⑧竹田信弥+田中佳祐『読書会の教室』
⑨今村仁司編『現代語訳 清沢満之語録』
⑩光丘真理『キミが主役の勉強 勉強の「当たり前」をこわそう』
⑪宇田亮一『新版 吉本隆明「心的現象論」の読み方』
⑫ブルース・リプトン他『思考のパワー 意識の力が細胞を変え宇宙を変える』
⑬池谷裕二『単純な脳、複雑な「私」』
⑭影山知明『ゆっくり、いそげ』
⑮ハナムラチカヒロ『まなざしの革命』
⑯方条遼雨『身体は考える 創造性を育む松聲館スタイル』
⑰崎谷博征『エーテル医学への招待』
⑱古田徹也『はじめてのウィトゲンシュタイン』
⑲佚斎樗山『新釈 猫の妙術 武道哲学が教える「人生の達人」への道』
⑳孫泰蔵『冒険の書 AI時代のアンラーニング』
㉑若松英輔『本を読めなくなった人のための読書論』
㉒矢野和男『データの見えざる手』
㉓阿部謹也『大学論』
㉔河出書房新社編集部『吉本隆明 没後10年、激動の時代に生き続けるために』
【これまでに投稿した読書ふりかえり記事】
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●2021.9.1〜2023.12.31に投稿した
記事タイトル一覧はこちらの記事からどうぞ
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