寺子屋塾

大人ってどんな人のこと?(その7)

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大人ってどんな人のこと?(その7)

大人ってどんな人のこと?(その7)

2024/02/16

昨日投稿した記事の続きで、そもそも

「大人とはどんな人のことをいうのか」という

問いについて考察してきたこの記事も

これで7回目となりました。

 

ただ、前提としてこの問いには、

考えを深めていけば

唯一の正解が見つかるようなものではないので、

わたしがそれを明確に定義し

皆さんに示すことが目的ではありません。

 

これまで6回にわたって投稿してきた記事は、

この記事を読まれる皆さんが、

この問いについて自分で考えようとするときに

〝素材〟になりそうなことを

記してきたつもりなんですが、

これまでの投稿に未読記事がある方は

記事の終わりにあるリンク集を適宜参照された上で

本日分の記事を読んで下さると有難いです。

 

 

さて、昨日投稿した(その6)の記事では、

(その5)の記事で紹介した

精神科医・泉谷閑示さんの著書

『「普通がいい」という病』第10講に示された

人間の変化成熟のダイナミクス6段階を掘り下げ、

「塑造的自己形成」と「彫刻的自己形成」という

2つの自己形成についての見方や、

スパイラル型というか螺旋的捉え方を紹介したり、

わたしが易経から学んだこと等も

絡めたりしながら

寺子屋塾の学習との関わりについても触れました。

こんなふうに螺旋状になっているので、

F段階が最終ゴールではないのですが、

それでも、F段階に小児(子ども)とあるのは、

意外におもわれた方があるかもしれません。

 

昨日の記事内でシェアした山口周さんのnote

「子どもの時代」がやってくる は読まれましたか?

 

 

1.村の馬頭観音の像を子供たちがもちだしてころばしたりまたがったりして遊んでいた。それを別当がとがめると、すぐにその晩から別当は病気になった。巫女に聞いてみると、せっかく観音さまが子供たちと面白く遊んでいるのをお節介したから気に障ったのだというので詫び言をしてやっと病気がよくなった。

 

2.遠野のあるお堂の古ぼけた仏像を子供たちが馬にして遊んでいるのを、近所の者が神仏を粗末にすると叱りとばした。するとこの男はその晩から熱を出して病んだ。枕神がたってせっかく子供たちと面白くあそんでいたのに、なまじ咎めだてするのは気に食わぬというので、巫女をたのんでこれから気をつけると約束すると病気はよくなった。

 

※柳田國男「遠野物語拾遺」(1935年)より

 

 

とりわけこの、吉本隆明さんの

『共同幻想論』にでてくる

柳田國男『遠野物語拾遺』からの言い伝え2編は

とっても深い含蓄を感じましたね〜

 

「子ども」と「大人」は

対比して語られることが多い言葉であっても、

この両者を比較する軸となるととても多様で、

単純にその良し悪しを

言えるものではありませんから、

大人とはどんな人のことを言うのか

ますますわからなくなってしまいますね。笑


 

さて、吉本隆明さんの名前が出て来たんですが、

吉本さんの最晩年に

15歳の子どもたち4人に語った話をもとに編集し

2010年秋に出版された

『ひとり 15歳の寺子屋』という本があります。

 

この本については、以前にもこのブログには、

繰り返し繰り返し何度も読んでいることや、

未来デザイン考程のワークシートを使って

内容を整理したことがあることなどを

書いたことがありました。

吉本隆明『15歳の寺子屋 ひとり』の内容を整理してみて

 

この本の最後の方には、

「大人って何?」という子どもからの問いに

吉本さんが応えているところがあるので、

今日はそのやりとりをご紹介することにしました。

 

吉本さんのお話はこの本で11ページ分あり、

その冒頭部分のみです。

 

子どもたちの感想がすばらしいのですが、

4人のうちの1人分だけ載せました。

 

(引用ここから)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

〔吉本〕
さあ、どうぞ。もっとお楽に。
お行儀悪くなさってください。
どうぞ。何でもきいてください。


悪いことでも何でも。正直にお答えします。

それが僕の唯一の取り柄です。
どんなことをきかれてもいいし、
どんなかたちの質問でもけっこうですよ。


◆6時間目◆ 大人になるってどういうこと?

 

Q〔子ども〕:吉本さんは、

大人になるってどういうことだと思いますか?
僕はあんまり考えたことがなかったので、
単純なことしか思い浮かびませんでした。
大人になるっていうのは感情的にならないで、

より多くの意見をきいて、

いいものを吸収していくことや

物事に責任を持つことだと思います。
だけど、子どもも大人もおんなじ人間なので、
大きな変化があるとはあんまり思いませんでした。
なので自分の中の子どもっぽさを隠したり、
もしくは犠牲にしたりして、

他人や家族を優先させることが、 もしかしたら

大人になることじゃないかと思いました。


A〔吉本〕

子どもにあることは、大人になってもみんなある。


今日は、大人になるってどういうことか、

考えてみたいということでしたね。
大人と子どもでどこがちがうかっていったら、

あんまりちがわない。

 

それこそあなたがいわれたように、人相だけ、

顔のしわだけ、髪の毛の色だけちがってて、

子どもにあることはそのまんま、大人にもあります。


いいこともありますし、悪いこともあります。

まあ、子どもの頃とおんなじような

いいことっていうのはないかもしれないけど、

そのほかのことだったら子どもの頃と同じように

全部ありますよ。

 

僕は子どもの頃に、いじめっ子もいじめられっ子も

両方体験したけど、

それも学校を出て会社に勤めたとしても同じです。

子どもにあることは、大人になっても、

みんな、ある。

 

それに対して個人個人がどう防御できるかというと、

そこで「いじめをなくそう」とか

問題を全部とっ払おうとすると、

それはまた別の意味の嘘になる。

 

その問題そのものがなくなると思わない方がいい。

問題は歴然としてあるんだけど、

それに対して、誰にもいわないでも、

わからないでもいいから、

自分はこういうやり方で緩和してるんだという

自分なりのやり方を編み出すようにするのが、

いちばんいいんじゃないか。

 

自分はこういうやり方でいじめたり、

いじめられたりっていうのを避けているんだとか、

やり方はそれぞれにちがってていいと思うので、

考えて、考え抜いて、自分で確立できたら、

それはもう、立派に「大人になった」と

いえるんじゃないでしょうか。


「寺子屋」を終えて
◆子どもたちから吉本さんへ

吉本さんのお話をきいて、いちばんに思ったことは、

「大人に対するイメージが変わった」

ということです。

たくさんのお話をしていただいて、

正直、難しい話がたくさんあり、

理解できない時もあったのですが、

全体を通して、子どもの私たちにも

真剣に話してくださってうれしかったです。

恋愛のことなんかに対しても、

赤裸々に話してくださって、そんな大人には

初めてお会いしたので、最初は驚きました。

同時に、親近感のようなものもわきました。
吉本さんは、直球でした。

全部を全力で話してくれるので、とても新鮮でした。

私は今まで、大人に対してなんとなく

壁のようなものを、自然と

つくってしまっていたんですが、

これからは、先入観を持って接することは

できるだけやめようと思いました。

これは、大人に対してだけではなく、

人に対していえることだと思います。

(15歳 小高美久)

 

※この続きはまた明日に

 

【過去投稿記事・関連記事】

吉本隆明『15歳の寺子屋 ひとり』の内容を整理してみて

内田樹『寝ながら学べる構造主義』

大人ってどんな人のこと?(その1)

大人ってどんな人のこと?(その2)

大人ってどんな人のこと?(その3)

大人ってどんな人のこと?(その4)

大人ってどんな人のこと?(その5)

大人ってどんな人のこと?(その6)

 

 

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