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内的観点と外的観点の両方を同時にもつこと(その12)

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内的観点と外的観点の両方を同時にもつこと(その12)

内的観点と外的観点の両方を同時にもつこと(その12)

2024/08/27

昨日8/26に投稿した記事の続きです。

 

響月ケシーさんが8/14にインスタで配信された

動画『自分の神様の育て方』の内容を

取っ掛かりにして書いた記事が発端となって、

「内的観点と外的観点の両方を同時にもつ」

というテーマで記事を書き始め、

今日が12回目となりました。

 

これまでに書いてきた内容を前提として

話を進めることがあるので、

未読分のある方は、

まずそちらから先にお読み下さい。

ケシーさんの8/14インスタライブ『自分の神様の育て方』

内的観点と外的観点の両方を同時にもつこと(その1)

内的観点と外的観点の両方を同時にもつこと(その2)

内的観点と外的観点の両方を同時にもつこと(その3)

内的観点と外的観点の両方を同時にもつこと(その4)

内的観点と外的観点の両方を同時にもつこと(その5)

内的観点と外的観点の両方を同時にもつこと(その6)

内的観点と外的観点の両方を同時にもつこと(その7)

内的観点と外的観点の両方を同時にもつこと(その8)

内的観点と外的観点の両方を同時にもつこと(その9)

内的観点と外的観点の両方を同時にもつこと(その10)

内的観点と外的観点の両方を同時にもつこと(その11)

 

さて、(その10)(その11)と2回にわたって、

脳科学者・池谷裕二さんが母校の高校生たちに行った

レクチャーをまとめてつくられた著書

『単純な脳、複雑な「私」』第3章から

〝自由〟についてのやりとりのうち、

ベンジャミン・リベットが唱える準備電位説を

紹介している箇所を中心に引用しました。

 

この、池谷さんの著書では、

講義全体のテーマが

「心の構造化」に置かれています。

 

「脳はゆらいで自由をつくりあげる」と題された

第3章の構成は、

大きく前半と後半に分かれ、

前半が、身体が外界と脳をつなぐ

インターフェースの役割を果たしていることなど、

自由というテーマを考える前提となる

背景的な話や素材、問い等が

さまざまな形で提示され、

後半で自由についてさまざまに考察されていました。

 

(その10)(その11)で

2回にわたって引用して紹介した箇所は、

後半部の約1/4でしかなく、

その後の部分では、さらに興味深い実験結果や

考察が積み重ねられていて、

その後の第4章では、第3章の内容を踏まえて、

そもそも「生命とは何なのか?」という

さらに深い考察が展開されています。

 

記事を読まれて興味を持たれた方は、

ぜひ本書を手に入れて

読んでみて下さい。

 

 

さて、今日は2回にわたって引用した箇所について、

わたしのコメントを。

 

3-34の冒頭、自由論 vs 決定論についての問い

つまり、人間には自由があるのか、

それとも、すべての行動は

あらかじめ決まってしまっていて、

ただ決められた通りに振る舞っているだけなのかが

提示されている箇所での

高校生たちの意見が面白かったですね〜

 

自分の意志で決めたものが

もともと決定されていたとしても、

それは意識の上では自分の意志で決めたことだから、

結局は、どっちも一緒なんじゃないか。

 

コンピュータの中の反応は、

コンピュータの中に入れることはできず

コンピュータ計算の結果として出力されたものを、

データとして入れなきゃいけないから、

それを繰り返していくと、結局計算できない。


とくにこの2つめの、リカージョン、

自己言及性に触れる意見は唸りましたね〜

 

 

あと、自分が腕を動かそうと

本人が「動かそう」と意図したときよりも前に、

脳は動かす「準備」を始めているという

リベットの準備電位説については、

ある意味、衝撃的な実験結果なんですが、

「人間は、自分の意志ですべての行動を

制御、コントロールできている」という考え方が

そもそも勘違いであることを

裏付け実証しているものでもあります。

 

言い方を変えると、

本人の意志によって腕を動かしたという〝知覚〟と

脳が動かそうと準備して〝運動〟することとは、

各々に相関関係はあっても

原因と結果という因果関係では結べません。

 

つまり、知覚と運動とは、

互いに独立した関係にある機能だと

見做す必要があるということでしょう。

 

内的観点と外的観点からすれば、

本人の意志によって腕を動かしたという知覚は

内的観点のものであるのに対し、

脳が動かそうと準備して運動することは

外的観点のものとなるので。

 

 

3-40の冒頭で池谷さんは次のように書いています。

 

「自由は、行動よりも前に存在するのではなくて、

行動の結果もたらされるもの」ってことだ。

これは大切なポイントだ。

 

これは、この寺子屋ブログで頻繁に登場している

〝原因と結果の取り違え〟ですね〜

 

たとえば、らくだメソッドの学習では、

ストップウォッチで時間を計測するので、

ときどき、「早くやろう!早くやろう」と

一所懸命に頑張る塾生がいるんですが、

時間が短くなるのは、

行動した後になってから、

結果としてもたらされることです。

 

「早くやろう!早くやろう」と

時間のことを意識すればするほど、

意識したぶんだけ時間は余分に

かかってしまっていることに気づいていません。

 

つまり、目的、目標を意識することで、

意識が未来時限に飛んでしまっているので、

いま、ここにいる自分の状況を把握することが

難しくなっているんですが。

 

結局、時間を短縮したいのなら、

いま、ここに意識を置いて

時間や結果のことを意識するのをやめ、

自分がどこで時間をロスしているのか、

観察することに集中するのが得策なんですね〜

 

 

そして池谷さんは次のように続けます。

 

ここで僕が論じたかったのは、

「自由意志が存在するかどうか」という問いは、

その質問自体が微妙なところがあって、

今の議論のように、むしろ、

自由を「感じる能力」が私たちの脳に

備わっているかどうかという疑問にも変換しうる。

 

自由意志は、存在するかどうかではなくて、

知覚されるものではないか、とね。

 

この池谷さんの

「自由意志が存在するかどうか」という問いは、

その質問自体が微妙なところがある

という言葉を

内的観点と外的観点を区別しながら

わたしなりに解釈すると次のようになります。

 

つまり、自由を「感じる能力」は内的観点で、

能力が脳に備わっているかどうかは外的観点なので、

そもそも

心のはたらきである自由を「感じる能力」

脳のはたらきとして備わっているかどうか考察し、

それを証明しようとしても難しく、

問いの立て方自体が適切かどうか疑わしい。

 

だから、自由意志は、存在するかどうか

ではなくて、

自由意志は、知覚されるものではないか、

と問うべきではないかと。

 

脳科学をはじめとして、脳の神経系などから

心を研究しようとする手法は、

論理を積み重ねながら

対象物を外から観察するという意味で、

外的観点に基づくアプローチです。

 

でも、心理学の世界では、

様々な状況において、自分が心の中で

どの様に感じたかという実感・体験をもとに

研究が進められてきたわけですから、

内的観点からのアプローチということになるので、

このあたりに、科学でできることと

できないことをちゃんと明確にしたいという

池谷さんの脳科学者としてのスタンスが

色濃く出ているように感じました。

 


この続きはまた明日!

 

 

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