TBSドラマ『逃げ恥』名セリフ&名場面集(二巡目・その28)
2026/09/10
8/14からこの寺子屋塾ブログでは、
TVドラマ『逃げ恥』名セリフ&名場面集の
二巡目を投稿しています。
どんな流れ、経緯から二巡目を投稿し始めたか、
その理由やきっかけ等については、
関連している8/13以前の記事等に記したので、
未読の方はご覧ください。
第1話から第11話まで順番に1シーンずつ紹介し、
最終話まで行ったらまた第1話に戻るスタイルで
(その45)まで投稿するつもりです。
基本一巡目100記事で取り上げたシーンへの
コメントをリライトして投稿しているんですが、
さすがにそればかりだと能がないので、
(その10)の記事や(その15)の記事
昨日投稿した(その23)では
シーンそのものを差し替え
新たに書き起こした場面のシナリオに
コメントする記事を書きました。
今日は一巡目(その28)で取り上げたシーンへの
リライト記事なんですが、
第6話終盤部にさしかかった
39分30秒過ぎた辺りからに挿入される、
百合と風見の朝の出勤時のシーンを。
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〔オフィスビルの入口~ロビー〕
百合:おはよう!
風間:おはようございます!
百合:……
風間:……
百合:ゆうべは悪かった!
風間:?
百合:意地悪しすぎた…ごめんなさい!
風間:どういう風の吹き回しですか?
百合:……あなたがあんな顔をすると思わなかったのよ。
〔山さんのBAR回想シーン:浴衣姿で仲良く笑顔で写っているみくりと平匡。百合から「焼けちゃうぐらいラブラブなんだから」と二人の写メを見せられ、固まる風見〕
百合:もっとイイ加減な気持ちで、みくりに近づいてるって思ってた。
風間:……
百合:だめね~。この歳になっても、人の気持ちがわからない。
風見:……自分でもよくわからないんです。
百合:?
風間:ショックを受けたように見えたなら、そうなのかもしれません。
百合:……
風間:この歳になっても、自分の気持ちがわからない。
百合:困ったもんね。
風見:まったくです。
風見:〔エレベーターの前で〕ぼくは…何を求めているのでしょう?
百合:わたしに聞かないでよ~
風見:〔笑う〕














COMMENT:百合と風見のこの出勤シーン、ぱっと見は「昨夜のフォロー」と「軽い掛け合い」で終わりそうなのに、よくできた関係修復の場面として、第6話終盤にきっちり差し込まれています。百合が発する「ゆうべは悪かった!」「意地悪しすぎた…ごめんなさい!」は、恋の告白ではありません。むしろ、関係のメンテナンスです。
人は、相手の気持ちを正確に理解してから謝るのでなく、まず「傷つけたかもしれない」という兆しを見て、先に修理に入ることがあるんですね。百合はその順番を選ぶ。しかも、そのきっかけが「あなたがあんな顔をすると思わなかったのよ」という一点に集約されているのが、いかにも現代的です。正論や倫理でなく、表情の〝事故〟が人を動かす。言葉より先に顔から気持ちが漏れ出てしまう。だからこそ、百合の謝罪は、いい人アピールではなく、ちゃんと相手に届く方向へ踏み出しているように見えるのでしょう。
ここで面白いのは、二人の会話が「わかる/わからない」をめぐって、静かに反復していくところです。「だめね~。この歳になっても、人の気持ちがわからない」と百合が言うと、「自分でもよくわからないんです」と風見が返す。そして「この歳になっても、自分の気持ちがわからない。」――この反復が、二人を恋愛というより同じ病理で結んでしまうんですね。百合は他者の気持ちが読めない側、風見は自己の気持ちが読めない側。でもどちらも、自分の不出来を自覚している。ここから、ふたりの妙な対等さが生まれてくる。百合は上から教えないし、風見も被害者ぶるところがありません。「困ったもんね」「まったくです」と、たったそれだけで、互いの不完全さを同じ棚に置いている。だからこの場面は、恋の進展というより、関係の温度を適温に戻す作業に見えるのです。
第1話から第6話まで、このドラマの登場人物たちは「ちゃんとしたい」とおもえばおもうほど、気持ちの輪郭を失っていきます。みくりも平匡も、好きとか嫌いとか以前に、「自分は何を求めているのか」がわからなくなっていく。そんな流れの中で、脇役である百合と風見が、先にその核心を口にしてしまう。「この歳になっても、わからない」という一言が、観ているわたしたちにとっては救いにもなる。わからないのは、みくりや平匡だけじゃない。どれだけ歳を重ねてもわからない。しかも、わからないまま会社へ行き、エレベーターを待ち、笑ったりもしている。
風見が最後にぽつりと「ぼくは…何を求めているのでしょう?」とこぼすと、百合が「わたしに聞かないでよ~」と受け流す。この軽さがいいですね。答えを出さないままで、場面を終わらせる勇気がある。関係は、答えが出てから始まるのでなく、修復しながら続いていく———そんなことを、短い沈黙と謝罪と反復だけで見せてしまう。ドラマ化された『逃げ恥』が、原作漫画の内面の濃さを、会話の往復と配置で代替している巧みさが、このシーンにも凝縮されている気がしました。

この名セリフ&名場面集で紹介しているシナリオは、野木亜紀子さんの『逃げ恥シナリオブック』を参考にしながら、2020年に放映された『逃げ恥・ムズキュン特別編』を書き起こしました。こんな風にTVドラマ『逃げ恥』のシーンを毎日投稿することになった最初の動機については、一巡目の初回として書いた(その1)の記事のコメントをお読みください。5/20に投稿した1巡目の最終回(その100)には、すべての記事内容を総括するコメント、全100回のINDEXつきリストと関連リンク集を載せています。
・TBSドラマ『逃げ恥』名セリフ&名場面集(その100・最終回)
また、当塾ではすべて関連し合っているという考え方を大切にしていますので、さらに詳しく知りたいという物好きなお方(笑)は、タグ「逃げ恥」を付している過去記事のみならず、他の記事を適宜アクセスください。当塾で開塾時から基本教材と位置づけてきたらくだメソッドの学習内容については、らくだメソッド関連を、大切にしているエッセンスを短いコトバで端的に知りたい方は、つぶやき考現学をどうぞ。アクセス数が最も多いカテゴリーは、今日の名言シリーズ(現在その130まで投稿)です。最近は、易経、論語、仏典などをひもといている古典研究関連カテゴリの記事もアクセスが増えています。
明日は一巡目(その29)の記事でとりあげた第7話のシーンへのコメントをリライトして投稿する予定です。
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