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TBSドラマ『逃げ恥』名セリフ&名場面集(二巡目・その36)

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TBSドラマ『逃げ恥』名セリフ&名場面集(二巡目・その36)

TBSドラマ『逃げ恥』名セリフ&名場面集(二巡目・その36)

2026/09/18

8/14からこの寺子屋塾ブログでは、

TVドラマ『逃げ恥』名セリフ&名場面集の
二巡目を投稿しています。
 

どんな流れ、経緯から二巡目を投稿し始めたか、

その理由やきっかけ等については、

(その1)(その2)の記事

関連している8/13以前の記事等に記したので、

未読の方はご覧ください。

第1話から第11話まで順番に1シーンずつ紹介し、
最終話まで行ったらまた第1話に戻るスタイルで
(その45)まで投稿するつもりです。


基本一巡目100記事で取り上げたシーンへの

コメントをリライトして投稿しているんですが、
さすがにそればかりだと能がないので、
(その10)(その15)(その23)

(その29)の記事では、
一巡目で取り上げたシーンそのものを差し替え
新たに書き起こした場面のシナリオに

コメントする記事を書きました。

 

9/16から四周目に入っているんですが、
一巡目(その36)で取り上げたシーンへの
リライト記事なんですが、

第3話の前半から、(その25)の記事で紹介した

電気店で炊飯器を買うシーンの後、

その帰り道でみくりが性意識についての

街頭インタビューを受けるシーンを。

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〔ドキュメンタリー番組、インタビュー。フレームから顔半分切れたみくり。変えられた音声で〕

みくり:可能性はありますよね。未経験ていう。

Q:高齢童貞をどう思いますか?

みくり:いいんじゃないでしょうか。人それぞれだし。あっ、いいですよ。顔出しで。

〔みくり、フレームに入って。生音声に〕

Q:原因はなんだと思いますか?

みくり:最近だと、高学歴、高収入で、見た目も悪くないのにって人も多いみたいですね。そういう人はプライドが高いのかも。

Q:選り好みをしていると?

みくり:…て言うか、行かないんですよ、自分からは。断られると傷つくから。

Q:女性の場合は?

みくり:わたしの身内の場合ですけど、彼女は、古風なところがあって、守りに守りすぎて49年って言ってましたね。もはや、脱却するタイミングを見失ったそうです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

TVドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』第3話より

 

COMMENT:この街頭インタビューの挿入シーン、性意識そのものを語るというより、脚本が「外部の言葉」と「当事者の内側」をどう接続しているか、という観点から見ると、かなり上手い装置になっているんじゃないかと。しかもそれが、お説教っぽくならずに笑えて、なおかつ後々の流れに効いてくるんですね。

 

まず面白いのは、最初にみくりが「フレームから顔半分切れ」「変えられた音声」という匿名の安全圏に置かれていること。この状態だと、みくりの発言は「街の声」の一つとして処理される。誰が言ったかは重要じゃなくて、「こういう意見もありますよね」という一般論の部品になる。だからみくりも「可能性はありますよね。未経験ていう」と、どこか他人事っぽく言える。ところが次の瞬間、「高齢童貞をどう思いますか?」というラベルの強い問いが刺さり、「いいんじゃないでしょうか。人それぞれだし」と答えたあとで、みくりは軽く言ってしまうんですね。「あっ、いいですよ。顔出しで。」ここがホントに巧い。

 

匿名のときは言葉が軽い。顔が出た瞬間に、同じ言葉であっても急に重みを帯びてくる。世間の話をしていたはずが、リアルな自分の人生の話に変わってしまう。しかもその切り替えを、自分で許可してしまう。たった一言で、立場が変わる。視聴者はその変化を理屈で理解するよりも前に、まず身体で「あ、やばい!」と感じる。この一瞬の温度差が、笑いのツボになりつつ、同時にヒヤッともする。ドラマならではの変速です。

 

そして、顔出し・生音声になった途端、質問もさらに踏み込んでくる。「原因はなんだと思いますか?」「選り好みをしていると?」ここでみくりは、世間的に受け入れられそうな物語———高学歴高収入で見た目も悪くないのに、プライドが高いから、選り好みしているから———にいったん寄り添いかけて、すぐに方向を変えます。「…て言うか、行かないんですよ、自分からは。断られると傷つくから。」この言い換えが、補助線としてすごく効いている感じがしました。

 

「高齢童貞」というラベルは、ある意味で乱暴です。言われた側の事情を一気に潰してしまうほどパワーがあるので。ところがみくりは、そのラベルで裁こうとしないで、そこにいるかもしれない一人の人間の行動原理———傷つき回避———までほどいてしまう。だからこの場面は、性意識の話というより、ラベルの暴力性を言葉で薄めていく場面でもあるんですね。しかもそれを、正義のお説教でなく、観察の口調でやっている。みくりのキャラの出し方としても、脚本の手触りとしても、ここは独自に面白いところです。

 

さらに言うと、このシーンが第3話の前半部に「挿入」されているタイミングが絶妙で、ここで扱われているのは、みくりの内面だけじゃないんですね。街頭インタビューという外部メディアの形式を借りながら、社会が人間をどう分類し、どう質問し、どう編集するかが持ち込まれてくる。さっきまで炊飯器売り場にいたみくりの頭の中では、「彼女いない歴35年」が鳴り響いていた。その直後に、今度は社会の側から「高齢童貞」「原因は?」「女性の場合は?」と、言葉が外から割り込んでくる。内→外、外→内、と編集の矢印が往復していて、みくりの意識が一気に〝社会の言葉〟に巻き込まれていく。これがたぶん後の展開にも効いてくるんだろうなと。

 

最後に女性側の話として「守りに守りすぎて49年」「脱却するタイミングを見失った」という身内の例が出てくるのも、単なる情報でなく、編集された番組の一コマとして、ドラマの視聴者に別のラベルを提示する。男は高齢童貞、女は守りすぎ。どちらも一瞬で分かった気にさせる便利な枠だけれど、その便利さが怖いところ。みくりはそれに巻き込まれながらも、どこかで翻訳して、人間の弱さに戻してみせる。その揺れが、この短いシーンの面白さであり、同時に第3話前半の展開をぐっと厚くしている脚本の工夫だとおもいました。



この名セリフ&名場面集で紹介しているシナリオは、野木亜紀子さんの『逃げ恥シナリオブック』を参考にしながら、2020年に放映された『逃げ恥・ムズキュン特別編』を書き起こしました。こんな風にTVドラマ『逃げ恥』のシーンを毎日投稿することになった最初の動機については、一巡目の初回として書いた(その1)の記事のコメントをお読みください。5/20に投稿した1巡目の最終回(その100)には、すべての記事内容を総括するコメント、全100回のINDEXつきリストと関連リンク集を載せています。
TBSドラマ『逃げ恥』名セリフ&名場面集(その100・最終回)

また、当塾ではすべて関連し合っているという考え方を大切にしていますので、さらに詳しく知りたいという物好きなお方(笑)は、タグ「逃げ恥」を付している過去記事のみならず、他の記事を適宜アクセスください。当塾で開塾時から基本教材と位置づけてきたらくだメソッドの学習内容については、らくだメソッド関連を、大切にしているエッセンスを短いコトバで端的に知りたい方は、つぶやき考現学をどうぞ。アクセス数が最も多いカテゴリーは、今日の名言シリーズ(現在その130まで投稿)です。最近は、易経、論語、仏典などをひもといている古典研究関連カテゴリの記事もアクセスが増えています。
 

明日は一巡目(その37)の記事でとりあげた第4話のシーンへのコメントをリライトして投稿する予定です。

 

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●2021.9.1~2024.12.31記事タイトル一覧は

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